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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
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最後の魔女108 精霊の森1

 私たちの目の前に現れたのは、立派な髭を生やし目が見えない程の眉毛で覆われていた頭サイズ程度の小さな精霊さんだった。


「精霊王さま」


 私が頭を下げると、それを見たリグやリリベルも同様に頭を下げる。


「良い良い。久しいの。元気そうで何よりじゃよ」

「精霊王さまもお変わりなく」

「うむ。長命種故な。お主も大概じゃが、互いにあの時と何ら見た目は変わっとらんの」


 それは禁句ですよ精霊王さま。


「紹介します。妹のリグとリリベルです」


 二人がやや緊張しながらも頭を下げる。


「見た目はどちらも姉にしか見えんがの⋯」


 それも禁句ですよ⋯。精霊王さまは、各地に住まう精霊さんの王さまで、私が探していることを察知してわざわざ本人自ら訪ねて来てくれたのだ。


「精霊の森はな、その場所が特定されぬように森に通じる入り口を転々と場所を変えているんじゃ」


 部外者の侵入を防ぐ為なのだから仕方がない。だから、鳥居が廃れてたんだね。


「立話もなんじゃし、場所を移動するぞい」


 次の瞬間、景色が暗転したかと思えば先程までいた森の中とは違った景色が広がっていた。

 何もないところから滝が流れていて、その水しぶきから虹が覗かせている。


「うわぁ⋯」


 目の前の艶やかな光景に目を輝かせながら少女の表情をしていたリリベル。

 片やリグはと言うと、あんまり興味がないのか特段変わった表情はしていない。


 幻想的と言う表現が一番しっくりくるであろうその場所は、たくさんの小さな精霊が縦横無尽に飛び交っていた。時折、こちらに気が付くとニッコリと表情を緩ませ、可愛らしくお辞儀をしている。


「お主は二度目じゃったから説明は不要じゃろうが、初めての者もおるからな簡単に説明しておくぞ」


 ここは、精霊たちの住まう外界とは完全に隔離された精霊の森。森とは名ばかりの言わば精霊界。精霊王が認めた者でなければ中へと入ることは出来ない。また、精霊たちに危害を加えた場合は、地界のどこかへたちまち強制送還されてしまう。


 精霊王さまに案内されるがまま、通されたのは小さなドーム状の建物だった。


「言いたい事は分かるが、これでもこの森一のサイズなんじゃぞ?」


 あ、薄ぼんやりとだけどそれ以前来た際にも言われたような気がする。


「さて、窮屈じゃろが、寛いでくれ」


 精霊王が手をかざすと、目の前が輝き出しやがてその光が収束するとコップに入った飲み物がおかれていた。


「話を伺おうか、と言っても大方の予想はついておる。はぁ、また面倒な輩に付け狙われておるようじゃな」


 流石は精霊の王さま。何でもお見通しのようだ。

 精霊は自身が守護する場所で起こった情報は概ね把握している。精霊王は全ての精霊の情報を把握することが出来る。つまりは、この世界の大概の情報を現在進行形で知る術を持っているのだ。


「助けてほしい」

「うむ。他ならぬお主の頼みじゃ。しかし、本来我等は公平中立な立場にある。故に手を貸すことは出来ないんじゃ。それは理解して欲しい」


 そうだよね。精霊王とは言わば神様みたいな存在。神は敬え奉りこそすれば、願いごとをお願いするような存在ではない。

 だけど、私は知っている。精霊の王さまは義理堅いと。


「ケチケチしなくてもいいじゃない!」


 おっと、リグだめだよ。失礼な物言いは強制送還の刑に処されちゃうよ。


「まぁ最後まで聞いておれ。お主には大きな仮がある。それに約束をしたしの。じゃから今回だけは特例でお主のその願いを聞き入れようぞ。あくまでも儂ら精霊が出来る範疇でじゃ」

「ありがとうございます」


 再び頭を下げる。


「それで儂ら精霊に何を望む?」


 何を望む⋯か。

 当初の目的は、この安全な地で二人を匿ってもらう為だった。この場所ならば外界と隔離されているので最も安全な場所かもしれない。だけど事前に二人に確認したが、案の定それは却下されてしまった。

 ならば、熱りが覚めるまでこの場所で三人で暮らす?

 それも考えたけれど、何だかそれだと私が逃げてるみたいだし、寿命の長い魔族たちの因縁を断ち切るには一体どれ程の時間が必要になるのか考えただけで気が遠くなりそう。私やリグはまだいいけど、リリベルがあっという間にお婆ちゃんになってしまう。


 だから、私は今再び覚悟を決める。それは、魔族たちとの全面衝突だ。


「精霊ネットワークを使わせて欲しい」


 私の聴き慣れない発言に二人が首を傾げる。


 情報は武器だ。

 人数的に圧倒的に不利な私たちが圧倒的な戦力差を覆すには、情報を制するしかない。

 常に先手を取り、こちらから仕掛ける必要がある。

 その為に精霊たちの魔族に関する情報網を借りたい。


 精霊の王さまは、私の申し出を快く承諾してくれた。

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