最後の魔女107 精霊の王さま
不法侵入かもしれないけど、今晩はここに泊まらせてもらおう。
勝手に使わせて貰うのだから散らかさないように二人に念を押しておく。
何でも入るバッグを取り出し、中から食材と調理器具を掴み上げるとテーブルの上に置いていく。
私が料理? しないしない。私は料理なんて出来ないよ。いつもは眷属に作ってもらってる。
「昨日はお肉中心でしたので今日はお野菜や魚を主のメニューにしますね」
「えー、私お肉がいいよ」
リリベルと一緒に旅をするようになり、彼女が料理が得意だと言うことが分かってからは、いつもお願いしている。何よりリリベル自身が「やりたい」と言っていたのも大きな理由だ。
「食生活が偏ると身体に良くないし、太るよ」
行った手前、リグの抜群のプロポーションを二度見する。羨ましき悪魔かな。体型どころか自由自在に変更出来るもの反則。
私なんてお肉がつかないように常に気を付けてるってのにね。不公平。
「お姉様が言うなら仕方ないですけど、私これまで病気になったことはないんですよ」
そうだよね、悪魔だものね。人族と違って病気なんてしないよね。羨ましい。
その後、リリベルの振舞う料理を美味しくペロリと平らげて、床に就く。
念の為にと索敵の結界を張っておいたけど、杞憂に終わった。
朝になり、清々しい陽日と共に美味しそうな匂いに目覚める。
リリベルの用意してくれた朝ご飯を美味しく頂き、出発の支度をする。
「精霊さんを探そう」
精霊の森の場所は精霊さんに聞くのが一番だよね。
てことで、手分けして探す。
精霊さんは私が使える察知魔法では見つからないから、自らの足で探すしかない。
しかも普段の姿は普通の人には見ることが出来ない。私とリグは見ることが出来るけど、リリベルにはたぶん見えないと思う。
私とリリベルでペアを組みリグとの二班で捜索することとなった。
捜索すること数時間。
私の考えはあまかった。ただでさえ数少ない精霊さんにそんな簡単に会えるはずなどなかったのだ。
「いないですね」
「いませんね」
「いない⋯」
さてさてどうしようかと悩んでいると私の危機察知に反応があった。
それは、リグも感じ取ったようで上へと視線を向けていた。
「お姉様、恐らく⋯魔族です」
正体を全く隠す気がないのか、殺気をむんむんと発しながら、そいつは私たちの目の前へと降り立った。
「おーいたいた。お前だろ、魔女ってやつは」
目の前に現れたのは上半身は裸の赤髪逆毛野郎だった。
鍛え抜かれた肉体がその存在を誇張している。
もう暫く凝視しようかと考えていると、リグの視線を感じた為、そっと視線を逸らす。
「アンタ魔族ね、一体全体私たちに何の用かしら?」
「あぁ? 取り巻きに用はねえ。俺が用があるのはお前だ魔女」
そう言って私の方を指差すので、きっと私の後ろに誰かいるのだろうと思い後ろを振り返る。
あ、やば、リリベルがいたや。
リリベルと目が合ったので、少しだけ気まずいながらも意味もなく頷いて魔族の方へと向き直す。
「否定しないってことは、肯定ってことだよな。お前を狩れば、俺の昇格が約束されてるんだよ。悪く思うなよ」
数秒後、この発言者はただの肉塊へと変わる。
リグの右ストレートが火を吹いた。
「口程にもありませんね」
刺客を倒せたのはいいんだけど、問題なのは私の居場所がバレたってこと。
それは私の動向を把握する術があいつらにはあるってこと。
それは非常にマズい。熱りが覚めるまで雲隠れしてしまえばいいと言う選択肢が消えてしまった。
残された選択肢は二つ。
誤って許して貰う和解案が一つ。
襲って来なくなるまで魔族を殲滅するが一つ。
うーん。どちらを選んでも簡単じゃない気がする。
「お前さんか、儂等を探しておると言うのは」
突然の第三者からの呼び掛け。
気配を全く感じなかったことから、一瞬警戒の警鐘が脳内へと鳴り響いた。
目の前にいたのは、紛れもない精霊の姿だった。




