最後の魔女102 新しい仲間
シルフィを連れ帰り、転移で宿へと戻って来た。
一体あの美女は何者だったのだろうか。こちらの事情に妙に詳しく、私が魔女だと言うのもバレていた。私自身もう少し注意して行動した方がいいのかもしれない。実際注意していたつもりだったけれど、思い当たる節はいくつかある。
剣王を倒した時のあの少年もそうだ。全てを見られて逃げられてしまった。
「お姉様、どうかしましたか?」
リグが私を心配して顔を覗き込む。
基本的に私は顔には出さないから顔からその感情を読み取ることは出来ないはず。
だけど、リグは勘がいい。
「何でもないよ。あいつらのことが少し気になるだけ」
「お姉様を悩ませるとは万死に値します。じゃあ今度会った時に倒しちゃいましょう!」
えっと、何故そうなるのだろう。リグは何でも力で解決しようとする気がある。
そう言えば一週間後にまた会いに来ると言ってたけど、場所は伝えられていない。まさか同じ場所じゃあるまいし、私たちの居場所は常に把握されているのだろうか?
暫くすると、シルフィが目を覚ました。
何が起こったのか理解出来ていなかったので、辻褄が合うように適当にごまかしておいた。
あれはシルフィと言うより私たちに用があったからシルフィを拐っただけのようだし、シルフィは無関係だろう。
さて、今朝出発する予定だったけど、外を見ると日が暮れそうだし、もう一泊して明日の朝に出発することにする。その旨をシルフィに伝えると、今日の所は引き上げ、明日の朝に見送りだけさせて欲しいと懇願されてしまった。
と言うわけで今夜もたっぷりとお風呂を堪能したのは言うまでもない。
清々しい目覚め。隣に視線を傾けると、リグがあられもない姿で可愛らしいイビキをかいていた。悪魔とは言え女の子なんだからもう少し恥じらいを持って欲しい。
リグを叩き起こし、寝巻きを着替える。
一階に降りて朝食を頂く。ここの宿屋は朝食も美味しい。バイキング形式なので自分の好きな物が実質食べ放題。リグに至っては、お肉をてんこ盛りしている。よく朝からそんなにたくさん食べれるよね。
部屋へ戻り、支度を整えてから入り口へと向かう。
カウンターにいるのはこの宿屋の女将さんだ。
御礼を言い、宿屋を後にする。
何やら外が騒がしい。何だろうと思い、外へ出るとそこには十人程度の人集りが出来ていた。
「あ、リアさんにリグさん!」
駆け寄ってくるシルフィを抱きしめて、頭を撫でる。
国王並びに王妃とか宰相さん、騎士団の皆さんがズラリ勢揃いしていた。
一通りの感謝の言葉とたくさんお土産を貰った。
「この王国を救ってくれた英雄たちに敬礼!」
騎士隊一同が敬礼姿で私たちを見送る。
「また絶対絶対会えますよね?」
「うん、シルフィに会いにまた立ち寄るよ」
最後にまたシルフィとハグをして、私たちはバラム王国を後にした。
王国の門の外に一人の怪しい姿を見つける。
あのフードには見覚えがある。
「こんな所で何してんのよリリベル」
狐獣人のリリベル。今回の国家転覆容疑で国外追放処分を受けていた。
「僕も最後にお二人に御礼を言いたくて」
どうやら中に入れないから外で待っていたらしい。
それにしても、表情が暗い。まだ妹さんを亡くしてしまったことを悲しんでいるのだろうか。
「これからどうするの?」
「そうですね⋯。僕に行く宛はありません。放浪でもしてゆっくり考えようかなって思っています」
「あれ、里には戻らないの?」
途端にリリベルは涙を溢す。
「あはは、門前払いを喰らっちゃいました。そりゃそうですよね、もしかしたら里にも迷惑かけていたかもしれないのだから」
リリベルは顔は笑っているけど、涙を流していた。
唯一の家族を失い、仲間も住む場所すらも無くしてしまったのか。私も経験があるからその悲しさは分かる。
この世界は獣人にとって非常に住みにくい世界。
何処かにあると言われている人と獣人とが共存している国⋯あそこなら、リリベルを迎え入れてくれるんじゃないだろうか。
「新しい居場所が見つかるまで私たちと一緒に来る?」
チラリとリグに視線を向けるが、別に嫌そうにしていないから大丈夫。
「大変ありがたいお誘いですが、僕は獣人です。リアさんたちに絶対迷惑を掛けてしまいます」
「それは獣人だから?」
「はい⋯」
リリベルはションボリと項垂れる。
それにしても、本人の感情が耳にも現れるんだね。悲しい時は耳がペタンとなって、何だか可愛い。モフりたい弄りたい。
「私はリリベルのこと好きだよ」
耳とか特にね。
リリベルは頬だけじゃなく、その大きな耳も急に真っ赤に染めてしまった。
そんなリリベルにリグがデコピンをお見舞いした。
今度は一転して、目に涙を浮かべてしまった。
「お姉様が良いって言ってるんだから素直についてくれば良いのよ」
「いや、でも⋯」
強引にリリベルの肩に手を回し、連れて行こうとする。
「でもね、私がリア様の一番の妹分なんだからね、そこは勘違いしてもらったら困るから」
そのまま半ば強引にリリベルを馬車に乗せるとバラム王国を出発した。




