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最後の魔女  作者: 砂鳥 ケイ
102/145

最後の魔女101 反教革命

 巨大な石像は、それぞれが槍と戦斧を手にしていた。

 精巧な造りで造られており、頭に二本のツノを生やし、その口元は鋭い牙を覗かせていた。まさにそれは鬼の出立であった。


「まさかぁ、ただの置物だよね。動いたりはしないよねー」


 リグ、それはねフラグって言うんだよ。


『ゴゴゴォォ』と音を立てながら二体の石像の両眼が赤く輝いたかと思えば、こちらに向かって襲い掛かる。

 巨大な石にしては素早い動きだった。


「お姉様は見ていて下さい」


 しかし、リグの前では相手が悪い。

 いつも通り、悪魔の腕を顕現させ簡単に石像を破壊してしまった。


 その後は、何事もなく最奥へと辿り着いた。

 その少し変わった光景に目を奪われる。


 ただの洞穴だと言うのに、椅子に腰掛けテーブルに肘を付きコーヒーらしき物を飲んでいる美女がいたのだ。さながらそれは雑誌を読み優雅な食後のコーヒーブレイクを楽しんでいるようだった。


 床には、シルフィが鎖で繋がれて気を失っていた。


「アンタね、私の妹分を誘拐したのは」


 美女は雑誌を畳んでテーブルに置くと、ゆっくりと席を立った。


「初めまして。私はアリシア。訳あって貴女を試させてもらったの」


 貴女ってリグの方だよね。私のことじゃないよね。などとリグに視線を送っていると美女が私の方を真っ直ぐに指差した。


 はぁ、やっぱり私か⋯

 試すって何をだろう。


「痕跡は残していなかったはずが、こんなにも早くこの場所を突き止め、更には数々のトラップも無傷で辿り着くとは。取り敢えずは合格ね」


 美人のお姉さんは、シルフィにつけられていた拘束具を外すと、そのシルフィをこちらに向かって投げる。

 リグが悪魔の腕で受け取る。

 私はすぐにシルフィの状態を確認する。

 良かった、睡眠以外の状態に変化はないみたい。


 素直に人質を返したり、何が合格なのだろうか。サッパリ意味が分からない。


「私たちの仲間にならないかしら、小さな悪魔と魔女(・・)さん」


 まさかの正体がバレている。

 面識はないはず。でもあれだけ最近派手に動いてるから何処かからバレても不思議ではないけど。


「そんなに警戒しなくていいわよ。別に戦おうなんて思ってないから」

「不快ですね。お姉様、あいつ倒しちゃっていいですか?」


 リグは臨戦態勢に入っていた。


「ちょっと待って」


 シルフィを拉致したのは許せないけど、こいつらの目的が分からない。少なくともそれを聞くまでは。


「仲間って何」

「物分かりがよくて助かるわ。そうね、何から話しましょうかね」


 美人のお姉さんは、徐に語り出した。


「この世界を理不尽だと感じたことはありませんか? 国の内外での貧困格差や王族や貴族たちの特権乱用。いつの世も苦しまされるのは最底辺の下々たちです。貴女も見たでしょう。王都ミュゼルバの教皇による圧政を」


 何故、ミュゼルバのことを知っているのだろうか。

 もしかして何処かで見ていたのだろうか。


「私たち反教革命の最終目的は、大教皇の殺害」


 大教皇とは、王都カームベルグにいるこの世界を実質支配している存在と言われている人物だ。


「貴女が魔女ならば、同族の仇である大教皇は憎いはず」


 八十余年前、魔女は当時の教皇の魔女狩りの命により滅ぼされた。恨んでいないと言えば嘘になる。だけど、あれは昔の出来事。今の教皇とは別人のはず。


「当時の教皇はもういない」

「あら、知らないのね。大教皇はね、禁忌の秘術である不老不死を使っていて、その年齢は百を超えているそうよ」


 へぇ、不老不死なんてあるのね。と言うことはあの時魔女狩りを命令した教皇はまだ生きている?


「どう、私たちと一緒に大教皇を倒さない? 悪い話じゃないはず。単独で倒すのは不可能。側近に化け物をたくさん従えていてね。ああそうそう、貴女が先日倒した剣王ドレイクもその中の一人ね」


 剣王ドレイクは確かに強敵だった。あんなのがたくさん周りにいるのならば確かに実力行使は難しいのかもしれない。

 悪い話ではないと思う。大教皇を倒すならばね。復讐かぁ、以前はそう考えて行動していた頃はあった。だけど今更復讐なんて⋯とうの昔に忘れてしまった感情よ。


「遠慮しておくわ。別に復讐したいとは思わない」

「そうよ、それにアンタは勘違いしてるわ。お姉様の手に掛かれば大教皇だか何だか知らないけど、簡単に討伐して見せるわ。私もいるしね」

「ふうん。残念ね。それだけの力があるのに勿体ないわ。まぁ、すぐに答えを出す必要はない。一週間の後もう一度聞きに来るわ。その時にはいい返事を頂きたいものね」


 美女はそう告げると同時に目の前から姿を消してしまった。


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