スイートピーを、見つけた。
『ほのかな喜び』。
スイートピーの花言葉は結構好きですね。個人的に。
今回は少し的外れなサブタイトルかもしれませんが、最後の最後に喜びが・・・みたいな感じで読んでいただけると幸いです。
心地よいそよ風。
揺れる夕日。
伸びる二つの影。
好きなあの人と、二人きり。邪魔者はいない。
あぁ、神様。こんな時間が――――――
「ずっと続いたら死んじゃいますよ!何なんですかこの仕事量!」
「まあまあ、落ち着いて?もうすぐで終わるから。」
「水蓮先輩・・・現実逃避してませんか?」
「・・・エ?ヤ、ヤダナァ。ナニイッテルノキキョウサン。」
「水蓮時先輩こそ何言ってるんですか!?見てくださいこの量!」
誰が『山のような』なんて言い方をしたのか。もはやそんな形状はしていない。超高層ビル群のように積み重なった、減ることを知らない紙の束。
その一枚一枚に事細かな仕事内容が書いてあり、それを処理していく。
同じ仕事内容ならまだいい。そっちの方がまだやりやすい、が・・・
「ハンコを押すだけの簡単な仕事から肉体仕事系の雑用まで・・・うちの生徒会って奴隷か何かなんですか?」
「ん~、もしかしたらほんとに奴隷なのかも・・・」
「え!?先輩、進んで奴隷に―――」
「いや冗談だよ!というか桔梗さんも人のこと言えないよ?こんな生徒会ともわからないようなところに入ってくるなんて・・・変態?」
「へ、変態じゃないですっ!」
あ、いや?ロリ顔の年上好きになってる時点で変態、なのか・・・?
「そういえば、先輩はどうして生徒会に?」
「ん?ん~・・・最初はゆーちゃんが誘ってきたからなんだけど・・・」
あ、ほんとにそうなんだ。
・・・なんか妬ける。
「でも入ってからは、少し変わった、かな・・・?」
「・・・?どういうふうにですか?」
「誰かの役に立ちたいって、そう・・・思うようになったんだ。ほら、僕ってさ。見た目からして小さくて、女の子みたいで、ひ弱そうじゃん?」
・・・否定できない。
「そんな僕でも誰かの役に立てれるのが、ここでの仕事。もちろん今みたいに辛い仕事が多いけど・・・この仕事一つ一つが、必ず誰かの、ゆーちゃんの役に立ってるから。」
「黒木先輩、ですか・・・?」
「うん。ゆーちゃんとは幼馴染で、昔から一緒にいたんだ。ゆーちゃんはいつも無茶ばっかりするから、だから僕はゆーちゃんの支えになってあげたいんだ。」
あ、なんだろ。この感覚。
ふわふわしてて、気持ちよくて、今にも溶けちゃいそうな・・・そんな感覚。
私はこの感覚を、知ってる。
「先輩は、その・・・黒木先輩のことが好き、なんですか?」
何言っちゃってるんだろ。私。
もう答えはわかってるのに。
それなのに。
その口からあの言葉を聞かないと気が済まない。
そんなの、聞きたくないはずなのに。
「・・・う、ん。好きかな。」
「そう、なんですか・・・」
聞いちゃった・・・
一番聞きたくなかった言葉。
なんで?なんで聞いちゃったんだろう。
胸が、苦しい。張り裂けてしまいそう。
私の最後の言葉は、二人しかいない生徒会室で小さく反響して、すぐに音を消した。
静寂。
それが私の心をより強く縛り上げる。
「でもね、もういいんだ。」
「・・・え?」
「僕はもうゆーちゃんに何回もフラれたし。ゆーちゃん、もう好きな人がいるみたいだし。」
フラれてる?水蓮先輩が、黒木先輩に・・・?
それに好きな人って・・・それって、私のこと・・・
「なんで好きな人がいるって・・・黒木先輩から聞いたんですか?」
「ううん。でもね、わかるんだ。ずっと一緒にいると。顔を見れば、ね。最近すごく楽しそうなんだ。あんな顔、見たことないよ。」
「そ、そうなんですか・・・」
苦しい。この関係が。私が好きな人の好きな人が、私のことを好きだと言っている、こんな関係が。
でも、うれしいと思っている自分がいる。
水蓮先輩は黒木先輩のことを諦めたと言った。
そして黒木先輩の恋は、きっと実ることはなくて・・・
こんなことを思ってる自分は、酷い人間だってわかってる。わかってるけど・・・
「だから、僕は諦める。僕よりゆーちゃんのことを幸せにしてくれる人がいるから。それに思い出したんだ。僕がここにいる理由。」
「理由・・・?」
「うん。さっきもいたけど、僕は誰かの役に立ちたいと思ってここにいる。それはこの学校みんなで・・・あ、もちろん桔梗さんの役にも立つよ?」
あぁ、やっぱりダメだ。
こういう人だから。笑いながらそんなこと言える人だから。
好きって気持ちが止められなくなる。
だから、酷いことしてるんだってわかっていても、この人に好きって思ってもらえるのなら、何でもしちゃえる。そんな自分がいる。
「さ、て、と。ごめんね?変な話聞かせちゃって。早く仕事終わらせちゃお?」
「あ、いえ。私は別に・・・」
「あ、そうだ。さっそく桔梗さんに何かしてあげよう。この後時間あるかな?」
「え?は、はい大丈夫ですけど。」
「よし!この仕事終わったら、何でも1つ言うことを聞いてあげようっ!」
「・・・え?」
三角関係ってこんなにエグイのかっ!?って書きながら思ってます。
あ、もちろん三角関係自体結構エグイものですが、こう、書き起こそうとするのはよりエグイというか・・・(書きにくいって意味で)
はぁ~あ・・・三角関係でもいいから恋愛してみたいです・・・