百合の蕾が、芽生える。
百合には「純粋」などの花言葉があります。
でも女性の同性愛の『百合』って純粋なの?って思っちゃいます。
まぁ見ていてとてもきれいには見えますけど・・・
「はああぁぁ~~~・・・」
結局あの後もまた迷子になって最初のHRに間に合わなかった・・・
春休みに積み上げた経験値って実践になるとこんな程度なの?あれだけのイケメンを落としてきたのに・・・
やっぱりゲームはゲーム。私の努力は無駄だったわけだ。
「・・・あの人、名前なんて言うのかな。」
私の頭の中は今それでいっぱいで、他のことなんて考えれない。
あの人の名前を知りたい。
知ったところでどうにかできるわけでもないけど、知れば何か変わるような、そんな気がする。
「・・・帰ろう。」
私の独り言が誰もいなくなった教室で反響する。
放課後。っていう時間帯でもないけど、入学式も終わって今日学校ですることは何もなく、他の人たちはそれぞれ目的をもってどこかに行った。
私はそんな目的もない。暇人はオールウェイズ暇なのだ。
出席番号順で決まった席を立つ。
椅子が床と擦れる音すら虚しく聞こえる。
「あら。新入生がこんな時間に残ってるなんて、珍しいわね。」
「・・・え。」
ビックリした~・・・
今この学校にいるの私くらいだと思ってた。
「突然話しかけてごめんなさい。外からたまたまあなたの姿が見えたものだから、少し気になって。」
「・・・はあ。」
丁寧なしゃべり方。
風になびく綺麗な黒髪。
顔は凛としていて、すごく、大人っぽい。
大人の女性ってこういう感じの人のことを言うのかな。
「それにしても、ふふっ。こういうのって本当にあるものなのね。」
「こういうの?」
「・・・ええ。私、今までにそういう経験なかったから、最初は戸惑ったわ。でも・・・」
歩み寄ってきたその人は突然、私の唇を奪った。
「あなたを実際に見てわかった。これが一目惚れ・・・これが恋なんだって。」
「え!?い、いや、あの!ちょっと!ん、んん・・・!?」
私の、ファーストキス・・・奪われちゃった・・・
でも、なんだろ・・・
気持ちよくて、何も考えられない。
キスって、こんなに気持ち、いいんだ・・・
し、舌が・・・私の中に、入ってく、る・・・!
だ、ダメ!これ以上は・・・おかしくなっちゃい、そう・・・
「・・・っぷは!な、なんなんですか!?い、いきなり、わ、私の・・・!」
「あら、唇と唇を重ねただけよ?それだけで照れるなんて、かわいいのね。」
だ、ダメだこの人・・・恥じらいの感覚が狂ってる・・・
こんな人、春休みにやってきたギャルゲーにも、オトメゲーにも、エロゲーにすら出てこないよ・・・
「それじゃあ本番に、入ろうかしら。」
「は!?ちょ、ちょっと待って!本番って!?」
「あら?恥ずかしいから直接言わなかったのに。セックスよ?知らない?」
恥ずかしがるのそこ!?ちがうでしょ!?
学校でセッ・・・あんなことやろうなんて言う人いないよ!
「あら、服が邪魔ね。脱がないと・・・」
「し、失礼しますぅううぅぅう~!」
「あ、もう。行っちゃった。これからなのに・・・」
なんなんだなんなんだなんなんだ!
一目惚れして、一目惚れされて、初めて奪われて、それで!
頭がおかしくなりそう。
何も考えられない。
私の頭の中はあのおとこの娘のことで頭がいっぱいで、それなのにあの黒髪美人のキスのことで頭がいっぱいで・・・
「どうなっちゃうんだろ、私の青春・・・」
太陽の光が、朝と変わらず桜の花びらを照らす。
私の純潔はこの舞い散る桜のように、散っていった。
「普通の恋愛を書こう」って思ってた昨日が嘘のようです。
まぁ、こうなることを見越してはいましたが・・・
こじれないようにがんばろ。