クロッカスは、色を紫から黄色へ。
前話では紹介しませんでしたが、クロッカスには全般的に『青春の喜び』や『切望』という花言葉があります。
あと黄色のクロッカスには『私を信じて』という花言葉があります。
「せん・・・ぱい・・・?どうして・・・」
「いや、その・・・今日桔梗さん部室にいなかったから・・・それで、心配になっちゃって・・・」
確かに私はたまたま今日いなかったけど。
先輩は一週間前から・・・
「私だって心配しましたよ。風邪ひいちゃったんじゃないかとか・・・黒木先輩に聞いたらそういうわけでもないみたいでしたけど。まったく、心配損でしたね。」
違う。そんなこと思ってない。
ほんとに心配した。今までにないくらい。他の人から見たら確かに損してるんじゃないかってくらい。
でも、風邪とかの心配より、先輩のこと心配するより心配してたことがある。
来ない理由なんか、もう知ってるから。
だから、先輩に嫌われたって・・・そんな心配ばっかしてた。
結局私は先輩のことより、自分のことが大好きで・・・自分のことしか考えてない。
だから先輩を傷つけた。自己中心な私のせいで。
そんな私に先輩が会いに来た理由なんて、もうほとんどわかってる。
私のことが嫌いだって、そう言って――――――
「ごめんね、心配かけて・・・」
「・・・え?」
「あの日・・・あのあと追いかけようとしたんだけど、母さんが突然倒れたって連絡が入って・・・それで一週間くらい、学校が終わってから母さんの看病をしてたんだよ。」
「いや、でも・・・!黒木先輩はそんなこと一言も・・・」
「うん。ゆーちゃんには桔梗さんには言わないでって言ったから。桔梗さんには心配かけないように・・・って、言わなくても心配かけちゃったね。ほんとにごめんね。」
なんで?なんで先輩が謝るの・・・?
謝らなくちゃいけないのは私なのに・・・
「私、あんなことしちゃって、先輩傷つけちゃって・・・嫌われちゃったんじゃないかって・・・だから部室にも来ないんじゃないかって・・・」
「えぇ?!嫌ってなんか・・・って桔梗さん!なんでそんなに泣いて・・・ご、ごめんね?!何か一言声かけてあげればよかったのに・・・ほんとにごめん!」
「でも私、先輩にあんなこと・・・」
「た、確かにビックリはしたけど・・・でも、やっと桔梗さんが僕に心を開いてくれたのかなって、少し嬉しかったんだよ?」
え?
私が・・・心を?
「ほら、なんかゆーちゃんとは仲良さそうに喋ってたりしてるのに、僕とは少し距離を置いてるような気がして・・・あ、いや!勘違いしてたらごめんね?」
「・・・先輩、勘違いしてます。」
「えぇ?!ご、ごめんね!っていうことは僕が距離を・・・?」
それも勘違いですよ、先輩。
そして、私も・・・
何もかも勘違いしてた。
あの時のことも。
その後のことも。
そして・・・
水蓮先輩のことも。
「と、とにかく!僕はいつでも、どんな桔梗さんでも受け入れるよっ!何せ僕は桔梗さんの先輩だからねっ!」
「・・・はいっ!」
あぁ・・・やっぱり私、この人のこと好きだ。今までにないくらい、これ以上ないってくらい。
諦めきれるわけがない・・・
こんなにもまっすぐな人だから。
こんなにも優しい人だから。
こんなにも愛おしい人だから。
「ところで、さ・・・桔梗さんって・・・」
「はい?」
「エロゲーのこと、その・・・詳しかったりするの?」
「・・・・・・はい?!」
「あ、いや!この前一緒にやったとき結構詳しそうだったから、その・・・」
「いいいいいいやいやいや!ああああああれはその・・・そう!兄が詳しくて!いつもエロゲーの話聞かされてるんで!だから詳しくなったんですよ!」
「・・・ほんとに?」
「ももももももちろんですよ!私のこと信じてくださぃ・・・」
「ふぅ~ん、そっかぁ・・・さっき言ったばかりなのになぁ~。どんな桔梗さんでも受け入れるって。それなのに嘘つくんだ。ふぅ~ん・・・」
う、嘘だってバレてる・・・先輩あんまり気づきそうにないのに・・・
「・・・詳しいです・・・・・・」
「ん?」
「詳しいですっ!エロゲー歴は浅いですけど、最近出たやつはほとんどやってます!あと好きなものは古くてもマイナーでもきっちり―――」
「桔梗さん!」
「ふぁいっ!?」
え?!す、すすすすす水蓮先輩が私の手を握って・・・!?
ななななんで!??
もももももしかしてここここここ・・・・・・!?
「僕・・・」
「は、はい・・・」
「僕にエロゲーのこともっと教えてっ!」
「はい!喜んで!・・・はい!?」
え!?それこそなんで!!??
「・・・さっきの桔梗さんの言葉、信じていいんだよね?」
「は、はい!信じてください!」
私としては信じたくない現実だけど・・・
「前にも言ったように僕、あんまりそういうことの知識がなくて・・・だからもっと知りたい、んだけど・・・ゆーちゃんの持ってるものは全部女の子同士のものばかりだし、自分で買うのも・・・」
「だから私に、ということですか・・・?」
「ということです。」
はぁぁぁぁ・・・
あんなことになったから一時はどうなるかと思ったけど・・・これはこれで・・・
恋人になる前に友達から、なんて・・・
エロゲー一緒にやる人となんか友達にもなれないんじゃ・・・?
でも・・・
後悔で冷たくなった涙はいつの間にか止まっていて。
そして、私の青春は続いていて。
私は今、この青い季節の喜びで溢れている。
「わかりました!でも先輩?ご褒美はきっちり貰いますからね?」
今回はいろんな花言葉の要素を使いました。
要素詰め詰めで疲れました・・・
でも、こういった『色で花言葉が変わる花』でネタを考えるのもなかなか楽しいです。