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第1話 日露戦争

となりの山田先生の進め!別府造船所(仮)のスピンオフ作品です。


1905(明治38)年5月27日


「天気晴朗なれど波高しか」

「フェルディナンド中尉、良い台詞ですな」

「秋山中佐、何の気なしに出たんですがね」

て言うか、本来なら秋山真之あんたが考えるはずだろうが、まあ後出しジャンケンだしなー。

「しかし、国王陛下と御父上の多大なる支援により艦隊も何とか成りましたから、聯合艦隊一同イタリアには感謝しております」

「そうですな、イタリアがアルゼンチン海軍用の日進、春日に続いてジュゼッペ・ガリバルディ、ヴァレーゼを急遽売却して頂けたのですから、これで八島、初瀬の喪失も何とか成りましたから」


「和泉より入電、敵艦隊は引き続き北上中なり」

この電文で艦橋は緊張に包まれた。

「殿下は司令塔へお入り成った方が」

侍従武官が心配そうに言うんだが、ここはイタリア王族として逃げるわけにも行かないんだよ。

「いや、この場に留まろう、司令長官宜しいでしょうか?」

ここは東郷さんに聞くのが一番だからな。

「構わんでごわす。肝が据わっておりますな」

「ありがとうございます」

「それに日本語が上手でごわすな」

「勉学に励みました故」

「よかことたい」



まあ日本海海戦は史実と変わらぬワンサイドゲームで終わったわけだ。無論ジュゼッペ・ガリバルディ、ヴァレーゼの後身である瑞穂に三輪も活躍して戦果を上げたんだが……上げすぎて戦艦オリョールが沈むという結果になった。あの艦本来なら降伏して日本戦艦石見になるはずなんだけど、20.3糎砲弾の集中砲火でお釈迦になった……まあ誤差の範囲と言う事でいいよな。





1905年10月12日 華族会館


それにしても、思えば遠くへ来たものだ。俺ことイタリア王国の王族で有りジェノヴァ公爵嫡男フェルディナンド・ウンベルト・フィリッポ・アーダルベルト・ディ・サヴォイア=ジェノヴァは転生者であるんだよなー、それでもって元日本人のしかも21世紀の人間が何故イタリア王族にって言うのは、何故か酔った弾みで駅の階段で転倒して死亡したっぽい。最後に目に入れたのがコギャルのミニスカだったからそうなんだろうが……まああそれはおいといて、死んだら驚いた訳で、神様から転生せよって言われて、何故にと問うと“何となく”だと、まあ良いが、そこで1884年に生まれて何とかしろと非常に曖昧な命令をされたわけだ、その際に“日本かイタリアどっちがいい?”と言われていたりする。


ドイツは?イギリスは?などと聞いたら、その辺は技術チートもリアルであるから面白く無いとのことで、仕方ないから“ウンウン”と考えている最中に、別の転生者が日本に決めたと言われちゃった訳で、しょうが無いから残ったイタリアを強制選択させられた訳だ。


そして、日露戦争もポーツマス条約成立で終了したが、まあ日本人の悪癖と言うべき、支援して貰ったことをすっかり忘れて自分達だけで勝った勝ったと騒ぎまくり、クズマスゴミと知ったか振り文化人が民衆をアジって史実通りに日比谷焼き討ち事件が発生!


まあ日本側は賠償金50億円、遼東半島の権利と旅順-ハルピン間の鉄道権利の譲渡、樺太全土の譲渡などという現実を知らない夢を見ているんだけど、その元が情報統制で詳しく戦争の実態を知らせずに勝った勝っただけを教えたからだね、所謂大本営発表の怖さをつくづく感じたね。イタリアも気を付けないと駄目だな。


政府主催の晩餐会で色々とあるんだよな。しかし俺がイタリア王族に転生ならもう一人は皇族か華族に転生しているんだろうけど、それらしき人物が居ないんだよな。今は未だ韜晦しているのかもしれないけど、要観察だよな。

(殿下は、まさか日本転生者が大分の小規模造船所の子息として生まれたなどと言うことを知るわけが無かった)


「イタリア王家のお陰を持ちまして、我が国の経済復興も早まります」

「三菱と致しましても、新式機関のライセンスを格安で売却して頂き感謝しております」

「しかも、中々売れぬ国債もイタリア王家とジェノヴァ公爵家が1億£(10億円)も購入して頂けたのですから」

「いえいえ、我が国と致しましては少しでも友好国たる日本の為になれるかと考えた次第です」


「流石は若き俊才ですな」

「あの若さで、キレナイカ油田の発見者で有り、リビア石油会社の大株主でもありますからな」

「ゼルテン、サリール、アマルの各油田の油は欧州の経済の源となっていますし」


「ここは殿下との繋がりを更に強くしないと行けませんな」

「殿下の凄い所は、その発想力ですな。何でも6歳の頃から特許を取り、9歳で清との戦いにおける日本の勝利を予言し、米西戦争ではアメリカ系の株を買い大きな資金を得たとか」


「今回の日本国債購入もそう言う事でしょうな」

「何処に有れ程の情報源を持っているのでしょうかね」

「羨ましい限りですな」


あー経済人が色々言ってるけど、未来知識で、戦争の結果を知っているのと、元々覚えていたアイデアを特許として登録した利益で戦争関連株を買いまくってあれよあれよの間に自己資金がイタリア国家予算の1割を遙かに超える事になっていたわけで、そこで油田を探そうと油田の場所を想定してオスマントルコ帝国政府に多大な賄賂を渡してリビアにおける採掘権を買い取って調査させたんだよな、そして調査の結果見事にビンゴで、欧州に最も近い大油田として5年前から採掘開始。


更に海岸から900km奥地にある鉄鉱石鉱床を発見して、イタリア本土へ輸出するようになった。その際にキレナイカで自治を行っていたサヌーシー教団と話し合い油田と鉱石の利益を分かち合う形にし、地元の教義や生活習慣なんかを尊重する形にたうえで、現地で悪事を行う横暴な白人の処罰とか確りとしたら、共存共栄できるようになったんだよな。今では地元部族の部隊が鉄道やパイプラインを護っている状態になっている。


そのうえ家は元々爺さんがイタリア初代王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の弟で、伯母さんが2代目王のウンベルト1世の后で現王ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世は15歳年上の従兄弟で関係は良好だし、親父はイタリア陸軍の重鎮と来ているから、色々無理が利くんだよな。それに元々持っていた知識で彼方此方の資源とかを知っていたし、未だに発明されていない物を経済界に指摘して国際特許を取ってイタリア経済界もウハウハになったから支持されたんだよな。


更に米西戦争のドサクサに立ち回って青息吐息で金のないスペインが、ドイツに太平洋諸島を2500万ペセタ{1660万マルク(金5950kg相当)イギリスのソブリン金貨でなら74486枚=2900万£=2.9億円)}で売ろうとしていたのを、西サハラも付けた状態だけど5000万£(5億円){当時の日本の国家予算が2億円程度}で買い取りに成功したんだが、南洋諸島全域を手に入れられると思ったけど、北西ニューギニアとラバウルのあるニューブリテン島、ビキニ環礁のあるマーシャル諸島は既に1884年にビスマルク爺さんが手に入れていたんだよな。結局マリアナ諸島、パラオ諸島、カロリン諸島だけしか買えなかったが、取りあえずはドイツの太平洋領土の構成を邪魔したんだよな。


更に、モロッコでの伊仏の話し合いでも鉱業採掘権と引き替えにフランスに譲ったんだが、実際には面倒な地元との付き合いをフランスに押し付けた感じだ。


その結果、元々持っていたエリトリアとソマリランドに加えて、南洋諸島植民地と西サハラ植民地を得たのに合わせて、リビアは宗主国はオスマン・トルコなんだが、実質的にはイタリアとサヌーシー教団が共同統治している状態に、その結果、親父が副王に命じられ、俺は南洋諸島の副王扱いで、更にリビアと西サハラの実質的権利は俺が持つことが決まった。


(因みにエリトリアとソマリランド副王は、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の次男の系統であるサヴォイア=アオスタ家のエマヌエーレ・フィリベルト公爵がなっている)


そこでリビア駐留軍の指揮官として第一次エチオピア戦争での政府の無策による敗戦の責任を取らされた名将オレステ・バラティエリ大将を引っこ抜いて抜擢した。彼は優秀なんだが、スケープゴートにされたから、そのままと言う訳にも行かないのでジェノヴァ・アフリカ副王軍の総司令官として活躍して貰っている。本来なら故郷で失意の中1901年に病没したんだけど、今は大変元気で活躍してくれているんだよな。病は気からって言うのは本当だな。


「プリンス・ウディネ(ウディネ公、フェルディナンド・ウンベルト・フィリッポ・アーダルベルト・ディ・サヴォイア=ジェノヴァの称号爵位)」

ん?我がイタリア公使がアメリカ公使グリスコム殿と妙齢な女性を連れてきた、だれだ?

「公、アメリカ公使殿がご挨拶にと」


「ウディネ公、お久しぶりでございます」

「グリスコム公使もお元気そうで何よりです」

「いえいえ、この所は忙しく」


目の下に熊が見えるからな、やはり日比谷焼き討ち事件の後始末で大変か。

「真の意味を知らずにいるのは厄介ですからね」

「真に」


んー、隣で微笑んでいる女性は誰なんだろうね?

「お隣の方は御令嬢でしょうか?」

ん、やっと話を振ってくれたなって感じか。


「お初にお目にかかります、わたくしはアリス・ルーズベルトと申します」

「ルーズベルトと言いますと大統領閣下の?」

「はい長女にあたります」


「それはそれは、わたくしはウディネ公、フェルディナンド・ディ・サヴォイア=ジェノヴァと申します。よしなに」

そう言ってから手の甲にキッスをするのが儀礼だからね。


「レディー・ルーズベルトは此方まで何故?」

まあ社交辞令で聞かないとね。

「父の名代としてフィリピンでの式典に参加した帰りですの」


「なるほど、お国の陸軍大臣タフツ殿がいらっしゃるのもその為ですか」

「ええ、わたくしは、単なるアクセサリーですわ」

「なるほど、美しく聡明なアクセサリーですな」

「公はお上手ですこと」

テンパーの黒髪、二重まぶたにキリリとした眉毛という意志の強そうな女性だよな。


そんなこんなで家族の事や趣味のことなど、まるで俺がナンパしているように話をしているので、日本人も近づかな最中。

一度離れた両公使が再度話しかけて来た。しかもシークレットサービスの連中を周りに配置して声が聞こえないようにしながらだ、これは何かあるな。

「公、お楽しみの所、申し訳ありません」

「いや、構わないが、何かあったのか?」


「公にご挨拶したいと言う方がいらっしゃいまして」

「誰かな?」

そう言うと公使の側にいた初老の紳士が恭しく挨拶してきた。


「ウディネ公、御意をえまして真に忝く存じます。わたくしはエドワード・ヘンリー・ハリマンと申します」

鉄道王のハリマンか、やはり来ていたか。

「これはご丁寧に、わたくしはウディネ公、フェルディナンド・ディ・サヴォイア=ジェノヴァと申します。お噂はかねがね」


俺の言葉にハリマンもニヤリとしたな。

「いえいえ、公のご活躍に比べたら微々たる物です」

「なんの、今回も個人で100万£(1000万円)の国債をお買いになったとか、わたくしはイタリア全土でにすぎませんから」


「そうですな、それでも1億£の資金ですからな、日本勝利後に慌てたパリやベルリンの投機屋がじたんだ踏んで悔しがっておりましょう」

チッこの爺さん流石だな、内情を大分知っているか、まあ公然の秘密と言えるかも知れないしな。

「ですな、お陰様で我がイタリア産業界は攻勢を得ています」


「羨ましい限りですわ、是非アメリカも攻勢に加わりたいですわね」

今まで聞き役に徹していたアリスが話してきたが、なるほど知古を得てアメリカも仲間入りと言う訳ね。此方としてもイギリスだけとの付き合いでは命綱が細いからアメリカが来るならバッチ来いだからな。


「大陸ですな」

小声でアリスとハリマンに問いかけると二人とも頷いた。

「今回の国債の件で彼方の資源に関する調査権と採掘権を得る予定ですが、鉄道はハリマン殿の領分ですな」

俺の言葉にハリマンは頷く。

「レディー・ルーズベルト」

「アリスで良いですわ」

「ならば、わたくしのこともフェルと」


「ええ、フェル」

で仕切り直して。

「アリス、大佐には宜しくお伝えください、極東に関してはわたくしが全権を得ておりますので、国益を損なわないならば吝かではありませんと」

ルーズベルト大統領が大佐と呼ばれるのを好きなことを知っているからな、案の定アリスも笑ったな。

「フェル、確かに大佐に伝えますわ」


「じゃあ、アリス踊ってくださいませ」

「フェル、喜んで」


こうして晩餐会は終わったんだけどアリス良い香りだったわ。


10月14日横浜発太平洋郵船シベリア号でアリス、陸軍大臣タフツ、ハリマン達は帰国の途についた。俺も一緒にアメリカへ移動する。遠く離れていく日本を見ながら感傷感が出るな。


しかし、腹の探り合いは疲れるな、別段満洲や中国の利権に食い込まなくても石油売却益にOリング、ペニシリンやジェノヴァに有る兵器メーカーのアンサルド社の大株主になり、そのうえ本来なら1905年に原型が出来る武器メーカーのオート・メラーラ社をイギリスのヴィッカースと共同で創業して、ストークス・モーター式迫撃砲を開発してそれ等諸々の特許でウハウハだからな。


そのせいで5億£や10億£程度なら経済界を隠れ蓑にした王室と俺がメインになって払うことが可能だから。これで大陸の利権に食い込めれば御の字だけど、どうせ外務大臣の小村寿太郎が史実通りに大反対するだろうけど、その時はどうしてやろうかなー。


小説二巻の作業中の息抜きに製作しました。

諸般の理由で某所の二次小説を止めているためです。


最後の場面を修正しました。

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