12-5
「平和だ……」
ウィルがデジカメを踏み潰しながら呟いている
「まぁ玄関先で話し込むのも何だな、中に入ろう」
「入りそうにないのがいるけど?」
「じき立ち直る」
塀に両手をついてうなだれてしまったルカと、同じく(自己嫌悪で)うずくまるラファールを置いて仁美が玄関のドアを開けた。内部は純洋風で全室土足、3階建てである。ドアをくぐるとまず右に豪勢なガラス装飾の鏡があり、その下に靴箱、さらにその横には女子中学生が使いそうなファンシーなスリッパが置いてあり、少なくとも1人は土足を敬遠する人間が住んでいるらしい。通路の先には応接室らしき部屋が見えているが、仁美はまず左のドアを開け中を覗き込んだ
「美空、茶を用意してくれ」
「なんださっきからあれをやれこれをやれと」
別の女性の声がする、姉妹というには若すぎる声色なので娘がいるのだろう。想定される年齢からすれば不思議ではない、というか当たり前である。しかし2人、皆がふーんという顔をする中でヒナが違和感を感じて小首を傾げ、もともと苦笑していたネアは引きつったような笑みへと進化、パタパタというスリッパの音から逃げるように集団の影へ隠れた。その直後、声の主が通路に現れ
「客が来るってさっきの話は患者じゃないのk」
高校に入ったかどうかくらいの少女だった、黒い長髪を高い位置でポニーテールにし、黄色のエプロンを着用、その後ろは黒地に白いラインの入ったジャージである。こちらの姿を視認した瞬間にピタリと動きを止めてしまい、こっちの反応といえば、違和感を感じていたヒナは少女の顔を見ても変化無し、代わりにロイが思い当たって拳銃に手を伸ばすも、背後にいたネアが必要無いと制止
「…………」
「えっ何?…知り合い?」
「………………」
「え?」
沈黙はまだ続く、ヒナはまだ思い出さない。しばらく待って進展が認められないため、ネアがひょいと顔を出す
「やっほー」
「うわうおうおうおうおうおうおうお!!?」
オレンジが挨拶すると奇声を上げ、大きくのけぞりながら室内に戻っていった。数秒後、壁の影から隠れ見るようにまた現れて、ショックから立ち直り玄関を越えてきたルカを確認した瞬間、どたどたと音を立てながら奥へ消えていった
「美空」
「少し待て!着替える必要がある!」
飛んだり跳ねたりする音がする、仁美はふむと呟いたのち歩を再開した。すぐに応接室へ到着
「何人かには迷惑をかけていたようだな。君達と似たような仕事をしていてな、ミソラという」
「似たようなって、PMC?」
「分類的には傭兵だろうか。もう1人いる、じき帰ってくると思うが」
とにかく座れと促され明梨がソファに腰を下ろす、しかし全員が座れるはずもなく、明梨の隣に座るべき人間はいまだに外でうずくまっている。仕方なし、フラフラしながらやってきたルカを座らせた
「まぁ私が言うべき事はさっきのがすべてだ、すぐ施術という訳にいかない。とりあえず、財団に連絡を入れるといい、1ヶ月前から行方不明扱いだからな」
「いやー、私がいなくなった所で……」
「トップ不在の状態が続くとね…重役が乗っ取りを画策し始めるんだ……」
「国際電話ーーーーっ!!」
それはオルネイズで実際起きかけた実体験なのだろうが、葛城の場合乗っ取りを考えそうな重役達は日本を発った際の最初の墜落で一掃されている、すごい勢いで出て行ったが問題はなかろう。入れ替わりでちゃんとした洋服に着替えた美空さんが現れ、イギリスらしく紅茶をテーブルに配膳し出した。真っ先にルカへカップを差し出し、俯きっぱなしの顔を覗き込む
「わ……」
「やあ。すごい偶然だな、互いの家に関係性があったなんて。私の母とは昔から知り合いだったのか?どうして今まで顔を合わせていなかったのか」
「ミソラさんストップ、そのポイントはゴリ押ししない方がいい」




