Air 3-3
ドアを開けたら宴会だった
「おーぅエアちゃーんおっかえりー!」
「……おい未成年」
「はっはっはっありとあらゆる法律犯しといて今さら飲酒禁止法など」
既にバーボンウイスキーのボトルが空で転がっており、テーブルの上ではフランス産コニャックブランデーが開封された所。共にアルコール度数は40で、ビール慣れした若者がストレートで飲んだら激しく咳き込むこと間違いなし。そして恐るべきは割られた形跡が全くないという点である
「やあやあやあやあどうもどうもどうもご挨拶が遅れました民間軍事企業VLICフランス支部に先日入社しましたアルブルと申します現在隊員募集中でして名刺名刺名刺名刺名刺名刺名刺名刺」
「名刺はいいから近付くな酒臭せぇんだよ!!」
正宗の友人を蹴り飛ばしながらリュックサックと身体中に付けていたポーチをすべて取り払った。出発した時は爆薬を満載していたそれらは現在では一つ残らず空になっている。床に転がった泥酔男をゲラゲラ笑う梢もひっぱたき、冷蔵庫から炭酸飲料の缶を取り出して、強烈なアルコール臭から逃れるようにバルコニーへ
暗闇の先には既に避難民が1人いた
「何をしてきた?」
「……別に」
土臭い風ではあるものの日中とは違い涼しく、というか寒い。夜景は綺麗とは言い難いものの、酒の入ったグラスを片手に佇む正宗は、飲んでいるより嗜んでいるという表現が似合う
「そいつボトルの半分飲み干してるからな!騙されんなよ!」
いらん情報を
とにかくドアをぴしゃりと閉めて騒音をカット、缶ジュースを開栓する。寒い、ホットにすればよかった
「あれとは普段どういう付き合いをしてるんだ?」
手すりに寄りかかりながら正宗の指差す先を見る。ガラスにへばりついてこっちを見ながらやばい笑みを浮かべる梢と、隣でまったく同じポーズをとる正宗の友人アルブルさんがいた
「…………」
「……女の方だ」
改めて明確な指の差され方をした梢は嬉しそうに両手を振り上げながら仰向けに倒れこむ。友人さん超悔しそう
呆れ気味に眺めていると、アルブルは急に顔を上げ、ウサインボルトばりのスタートダッシュでトイレへと突撃。梢はそのままピクリとも動かなくなった
「別段複雑な事はしてないよ、首謀者と、実行犯だ」
「信用できるか?」
「残念な事に」
飲料缶を口へ運びながら室内を見る。大の字で寝転がる梢の胸は大きく上下していた、急性アルコール中毒で死んだ訳ではないようだ
と、冷めた目で見つめていたら、背後で爆発音がした。風の音にかき消されそうなほど小さかったものの、正宗は当たり前のように反応、しばらく暗闇を見回して、手元のウイスキーを飲み干しながら首を戻す
「少なくとも嘘をつかれた事はないし、金がすべてと割り切ってる訳でもない」
「知っている」
過去何があったのやら
「そういう家に生まれてしまったのならそのスタンスも理解できる。だが実際には積極的に裏社会に関わっているように見える」
「…………」
「何を企んでる?」
風に乗って焦げ臭い匂いが漂ってきた。やはり正宗は反応し、暗闇に向かって目を細める
「私はただ、戦闘力を提供するだけ」
「それでいいのか?」
「知らんよ」
仕事は終わった、朝のニュースは航空機墜落で持ちきりだろう。缶を揺らしながらドアへと体を向けた
ドアノブに手をかけたまましばし立ち止まり、空港からヘリが緊急発進した音を聞き届ける。それに被せるように、誰にも聞こえない声で
「私にゃ何もないんだよ」




