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「うわっち!!」
轢かれそうになる部下を投げ飛ばして建物の影に入れる、その半秒後にスポーツカーはドリフト状態で突入してきて、フロントバンパーとコンクリ壁の擦れる音を残して反対側へ抜けていく。部下のバックパックからM72ロケットランチャーを強奪、発射筒を引き伸ばし、照準器を展開しないまま横っ腹を向けた瞬間のスポーツカーへ向け発射ボタンを押し込んだ
ドン!とアスファルトが弾け飛んで、地面と引き離されたタイヤとシャーシを見せながら横に空中2回転、着地してからも3回転し、海へ続くジクザグ道のちょっとした崖に消えていく
「はーっ!ざまあみろモーターギャング野郎!」
「ライナー黙ってろ!ホップス!死亡を確認してこい!それ以外は制圧射撃を再開しろ!早くしないと移動され…る……」
と、指示を飛ばしながら振り返った先ではオレンジ色がふわりと着地していた
自然界に存在しようがないにも関わらず染めたとは思えない橙色の長髪、襟の広く開いたセーターとスカートに、両手に持つのはまるで似合わない大小の刃物。建物の屋根から飛び降り、今まさにスタートしようとする陸上選手みたいなそいつは、口元を大きく引き上げ狂気じみた笑みを零していた
「後退ーッ!!」
叫び終えたか否かの頃合いで”ネア”がスタート、隣接していた部下3人のM4がフルオートで発砲を開始する。1発も当たらない、そうこうしているうちに1人が接触されナイフを肩にプレゼント、そいつを蹴っ飛ばしたのち、花壇、塀、ベランダと踏みつけて屋根まで戻っていった
「一体どうなってんだ!俺達は攻める側じゃなかったのかよ!」
「だから黙ってろ!フィエンド!手を貸してやれ!」
ジェット機から離れる複数の人影が見えたが追撃するには体勢を崩し過ぎている。飛行場の外縁まで戻ってきて、ナイフの引き抜きと応急手当を行う
スナイパーからの報告によれば敵部隊は格納庫のひとつに逃げ込んだのちは行動を起こさず、こちらと同じく一息ついているものと思われる。一連の交戦の結果、味方は1人負傷、敵は少なくとも1人が重傷、1人を孤立させている
「正確に筋肉を突いてやがる、これじゃ動かない」
「よし、グリンチは狙撃班と合流しろ。改めて部隊を分けるぞ、フィエンドは2人連れて敵のいる格納庫の反対側へ回れ、狙撃班、見つかりにくい場所に移動しフィエンドの支援を頼む。俺達は正面からプレッシャーをかけるぞ、あのオレンジ色の悪魔に注意しろ」
方針は決定、負傷者は丘を登り、3人が別働隊として離れる。その後挟撃により殲滅、もしくはあぶり出す。だが籠城策を取る敵を叩くには格納庫の頑丈な壁を突き破る火力支援が必要である
「司令部、こちらチーム9。70ミリロケット弾が必要だ」
『チーム9、了解した。USSサン・アントニオよりファイアスカウトを発艦させる。到着は10分後だ』
航空支援を要請、休み時間を与える事になるが、籠城されてしまった以上仕方のない事だと諦める。ひとまず行動開始、スポーツカー運転手の安否確認は無し、負傷者を含む4人が離れていく。狙撃班は土嚢を離れ僅かなりとも背の高い草のある方向へ
「10分の浪費だ、CIAの動きも気になる。奴らが投入できる戦力は3人しかいないが、スリーシックスの力量は今見た通りだ、下手を打てば逆包囲を食らうぞ」
「アメリカ人と戦うのかよ…」
「それはそうだが、先に手を出したのは俺達だ、文句は言えんさ」
「そりゃわかってますが、もし来たら本気でヤるんで?」
「やるしかあるまい、彼女の気が済むまで」
「まぁたまにはガキと遊ぶのも一興か」
「ライナー、今の発言はお前の奥さんに報告しておく」




