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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
Crowding Silence
80/106

10-2

『首都からの電車にスペツナズが乗り込んでる可能性が非常に高い、到着時刻は1315よ。ただし、時間通り来る可能性の方は無に等しい』


駅の建物が一望できるビルの屋上に陣取る。ロイがM95を組み立てている間に駅前広場を左眼で望遠表示し、警察に解散させられる集団とそれを見届けるランエボを確認、SLー9を横に置いた


『向こうにもオペレーターくらい付いてるでしょ、残りの全部隊を囮に回す。ヒナ、ロイ、ライフル持ってんのはあんたたちだけっていうのを忘れないで』


「それで攻撃プランは?」


『まず気付いてない振りをする。向こうは夜になってから始めるつもりでしょうから、明るいうちは尾行と諜報に費やすと思う。それを利用してアルファが狙撃できる位置へ連れ込む、3人もやれば諦めてくれると信じたいわね』


M95が組み立て完了、どでかいマズルブレーキを取り外し、これまたどでかいサプレッサーを装着した。時刻確認、午後1時1分


『針の糸通しみたいな射撃をしてもらう事になる、ロイ、サボット弾を』


「信用できねーんですが?」


『米軍からのプレゼントよ、実地試験も終わってる』


胡散臭そうな目で弾倉の中を見るロイ、装填されているのは.50BMGの薬莢だが、プラスチックのスペーサーを挟んであって、組み合わされるのは7.62ミリ弾、火薬量もそれに準じている。何が嫌かというと、撃った後のスペーサーの行方が気になるらしい


『どんな格好してるかわかんないから駅前で判別するのは諦めてる。写真付きの名簿は今アレクセイが頑張ってるけど、SVRは国外向きだからどうかしらね。とりあえず典型的なロシア人とカザフスタン人の写真を送る』


携帯電話が震える、メールを開封して写真を見ると、ほぼ同じ顔立ちの白人男性が2枚。それをじっくり見比べた後、さらにロイの顔と見比べる


「まったくわからん」


「ふざけるな、僕はフィンランドだ」


準備完了したM95をロイが置き、横に市内の地図を敷く。それから僅か30秒、電車が駅に到着した


「1302、電車が来た」


『そっちにズレるの?まあいいけど。じゃあヒナ、大雑把に怪しいのを捜して』


ドアが開き人間が溢れ出す、少し間を置きほとんどすべてが駅前へ殺到、最大望遠で入口を注視する


「イヤホンしてる青い服のおっさん」


「あのビールっ腹が特殊部隊に見えるか?」


「じゃああのマッチョマンは?」


「薄着すぎる、ただの脳筋だ」


「……黒いギターケース持った女の子」


「どんどん遠ざかってるぞ」


「うるさい」


あの洪水の中から数人を抜き出すなど不可能であった、あっという間に人はまばらになり、駅前に留まったのは数十人。指示を受けたのかランエボがゆっくり動き出す


「バス停留所近くの2人組だ、エボをずっと見てる。茶色のジャケットと白のフリース、片耳だけイヤホンを装着」


ロイに言われてそちらを見る、30代前後の男性が2人、ロータリーを回るランエボを確かに気にしていた。そいつらはバスに乗らず歩き出しランエボと同じ方向へ


「ああいうのだ、わかったかパー女」


「だまれだーまーれー」


アンノウン1、2と認定、監視を続けつつ他を捜す。駅から南にある公園、紫髪の少女が片っ端から野良猫を捕獲していた


「メルは何やってんの?」


『赤い首輪付けた茶トラ猫を捜索してる』


聞いた時点でかなり不憫に感じたが、さすがに愛玩動物の首輪の有無がわかるほどこの義眼は高性能ではない。公園をざっと見渡し、さっきと似たようなのが1人敷地内に現れるのを見つけた


「あれは?」


「ふむ、当たりだな。メルの近くに1人、赤黒の縞々した服。PTTスイッチを押す動作をしている」


『オッケ、それはブラボーに監視させる。アンモニアテロ現場を見て、エボXからシグを降ろしてルカに合流させる』


視線を移動、リンゴストア前は未だにキープアウトのテープが張られている。ルカはすぐに発見、立ってるだけでもクールである


「あれから何人やったっけ?」


「自爆テロ1件、アンモニアテロ3件だ。あの爆弾魔もたまには役に立つんだな」


『こちらシグ、俺はいつでも役に立ってるぞー』


「じゃあ爆破任務の度に弾薬庫の爆薬を空にするのはやめてくれ、爆薬業者に毎度の発注内容覚えられてるんだぞ」


とにかく今はスペツナズだと監視を始める。特に今は異常無し、イヤホン装着者も眼力の強い野郎もいない



『ルカからラファールへ、別の問題を報告しても?』


『オーケールカ、続けて』


『今僕の前通り過ぎてくの、爆弾巻いてるような気がしないでもない』


スペツナズを後回しにせざるを得ない事態が発生した、咄嗟にSLー9を持ち上げセレクターレバーを弾く


「こっちでも確認した、ベージュのコートで動きがぎこちない。またアンモニア?」


『俺がいじったのは3発ぶんだ、品切れだよ』


ランエボが到着、シグを降車させる。すぐにルカと合流して追跡にかかった。ストアからおよそ100メートル、ベージュのコートは立ち止まる


同じ場所でまたやるか


「まずいマジでまずい、懐まさぐり始めたんだけど!?」


『ああもう…!アルファ狙撃準備!デルタ!何でもいいから騒ぎ起こして!』


柵の間からSLー9を突き出し、義眼が出した弾道データに風速を加味して照準、明らかに導火線の端っこを探している


セット完了、トリガーに指を


「いや待て」


ロイに阻止された


「テロ容疑者、押さえこまれた、恐らくスペツナズだ」


黒のセーター、下はジーンズ。コート男の腕を掴みキープアウト方向へ引きずっていく。そこにいた警察に引き渡すまでをスコープ越しに眺め、それから銃口を下ろした


『よかった、愛しのルカくんが奇声上げる所なんて見たくなかったからな』


『やめてくださいほんとやめてください』

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