Air 2-2
「俺は爆薬を買ってこいって命令されただけなんだよ!あんな事に使うなんて一言も聞いて無いんだアッーー!!」
何の事はないがイラっときたのでフルスイングをかましておく、その間にも梢は薄汚いバッグの物色を続け、携帯電話以外に価値のありそうな物が無い事を確認、他にもコカインとかヘロインとか出てきたがそれは今必要なものではない
「エア、エア、あんまりやるな目覚められても困る。あんちゃん携帯の暗証番号」
「ゼロゼロゼロゼロ!!」
「うわぁアホだコイツ。…履歴が複数あるな、カトレア?彼女か?」
「それはオカマバーの…!んNoooooooooooooooow!!」
「エア、コイツが気色悪いのには同意するがそんなにタマを潰す努力をするんじゃない。そうなると連絡員はこれだな、ヴァリアント」
探し当てた電話番号を自らのスマホに移し、そのままメールとして送信、運が良ければ10分後にも居場所が割れる。用心深い奴なら既にアメリカ国内にはいないだろうが
「よし、コイツから絞れる情報はもうない。我が家の優秀な下っ端どもが働いてる間に警官側の黒幕を探すぞ、ダイナマイト100本も体に巻き付けた不審人物を職質せずにスルーした裏切り者がいるはずだ」
「こいつは?」
「気絶させろ」
許可が降りた
助走を取るべく2、3歩後退、天井に吊り下げられながら顔面蒼白になったそいつを蔑むように一瞥し
「我々の業界ではご褒美です!!!!」
「で?なんで私らは2人虚しく道端のベンチに座ってる?」
「釣り、チャラい言い方をするならナンパ待ちだな。落ち着いてソフトクリームでも食べてろ、財閥の息子ご愛顧の高級品だぞ」
濃い黄色にバニラの黒い粒が残った見るからに安物でない氷菓を渡され、溶けかけたそれが手を汚す前にひとまず口に運ぶ
金持ちという人種が嫌いになりそうだ
「いいかぁ、賄賂を受け取るような警官は普段からロクに仕事をしない、10代のおにゃのこがタバコ吸ってるのをスルーしたらまぁー確定だろ」
と、梢が懐から白い棒を取り出した。紙で包まれた長さ8センチかそこら、中に詰まっているのは茶色い物体。自慢げに見せびらかすもまったく似合っておらず、さっそく周囲の目線を集め始めた
「日本の菓子でな、シガレットチョコという」
「おい」
「侮るなよ、見てろ」
そのチョコレートに紙を巻いただけの代物を梢が咥える。途端に小太りの男が怒りながら近寄ってきて、それがチョコ菓子と知るや否やOh…とか言いながらすぐ離れていった。続くオフィスレディに睨まれるもすれ違い様に笑い声を漏らす
「な?」
「な?と言われても」
「当時あのエリアを巡回してた警官は把握してる、ほらあれだ」
チョコ菓子の指す先を見る、通行人に紛れて青い制服を来たガタイのいい男が歩いてきていた。ごく普通の警官だが、確かに金には弱そうな顔をしている
「ふふん」
チョコを咥える。本当に吸っているかの如く唇で上下させるも、正体を知っている方からすればガキんちょが遊んでいるだけにしか見えない。目の前で挑発されたそいつは梢を一瞥するも、特に表情も変えず通り過ぎてしまった
梢がベンチから腰を上げる
「ヘイ、ヘイヘイ!ポリスマン!」
黒と見たらしい、追って近づいていく。声をかけてようやく立ち止まった、紙を破ってチョコ菓子を口内に投棄し、ニヤニヤしながらふたつめの釣り糸を垂らす
「うまく殺したようだな、事後処理の首尾はどうだ?」
「ぶっ!?」
見事に釣られやがった
「ま、待て、こっちだ、来い」
梢がビルとビルの隙間に引っ張られていく。続いて侵入すると、相方は出口を塞がれて、警官の背中がまず見えた
要するに挟み込んでいる状態である。人気も無いしじっくり話し込める
かと思ったが
「まず確認するぞ、マリーは買い物の後どこへ行った?」
そいつの第一声で梢は口元を思い切り引き上げた。ふふんと声を漏らしつつ首を傾け、警官の背後にいるこちらへ一言
「用済みだ」
男らしい喉仏を突き破って、コンバットソードは首と食道と気管を串焼きに仕立て上げた
「さあ合言葉の前半分が手に入ったぞ、シャリーア関係者を探そう、できるだけバカがいい」
「半分だけでどうしようっていうんだ?」
「そこはまた釣りですよ釣り」
ゴポゴポ音を立てたのみで事切れた警官は捨て置いて、速やかにそこから離脱する
「というかエア」
「む?」
剣をしまっている最中の胸に梢は指を置き
「殺せとは言ってない」




