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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
5年と3ヶ月前の話
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Air 1-1

まずは依頼に応えてくれてありがとう、シャリーアのスティグマだ


回りくどいのは嫌いだから簡潔に言おう、とある政治家を殺してきて貰いたい。詳細な情報はそちらのPDAにまとめて送るが、まぁ要するに邪魔なんだ。手段は問わない、いなくなってくれればそれで構わん


今のうちに言っておくが実は既に一度暗殺に失敗している、向こう1年は出てこないと思っていたのだが、今日の午後から行われるインディーズバンドのイベントに観客として現れるという情報が入った、それが急遽君を雇った理由となる


これを逃せば我が組織の行動が支障をきたすようになってしまうだろう、もう一度言うが手段は問わない、手早く、確実に始末してくれ
















コンビニの冷蔵陳列棚に並んでいた紙パックのフルーツジュースをひとつ持ち上げレジまで持っていく。店員がバーコードを読み込んだのを確認してからテーブルに小銭を投下、紙パックを再び掴んで店の外へ


「…………」


突き刺したストローに口をつけながら少女は携帯電話を取り出した。身長155センチ程度で大きめな白のパーカーと黒のパンツを着ていて、パーカーの下にウエスタンベルトを巻いてそこにポーチを固定している。だがそんなものをどうでもいいものにしてしまうのがド派手なオレンジの頭髪だ、まっすぐ伸ばせば背中の中ほどまで到達しそうなそれは首にかけたヘッドホンによって肩までに留まっている。少女は十数秒地図アプリを眺めた後反転して歩き出した



「んー…?」


数歩進んだ所で小学生くらいの女の子に行く手を塞がれた、ボブカットにしたライトブラウンの髪はてっぺんが140センチちょっと、モコモコしたセーターとスカートは髪とほぼ同じ色で、ギターケースと思われる黒いカバンを所持。しきりに周囲を見回しているのは人を捜しているのだろうか、あいにく彼女の友達として釣り合いそうな年齢の人間は見当たらないが


「あれぇー?」


「っ…!」


脇を通って先に進もうとした少女は同じ方向に移動した幼女によって再びブロックされ、中身を失った紙パックがずずずと音を鳴らした。わざとではないはずだ、きっと


「もうしょうがないなぁ…みんな迷子になっちゃうなんて…」


どう見ても迷子はお前だろと100人が聞いたら全員がそう言いそうなつぶやきだったが少女は思い留まった、赤の他人にツッコミを入れる趣味はない、もう一度回避しようと進路を幼女の後方に向け


「あ、すいませぇーん」


今度は声でブロックを入れられた


「このへんでー、黒い髪の女の子見ませんでしたー?」


周囲に彼女と釣り合いそうな年齢の人間はいない、黒髪という条件をつけ足してもそれは変わらなかった。軽く周りを見回して見せて、それから首を竦め


「少なくともここにはいないな」


「そっかぁー…会場で待ってた方がいいのかな…」


この近くで会場といったら今やってるのはミュージックバンドの集会しかない、どうやらこの幼女は信じがたい事にミュージシャンらしい、そしてそれは少女と目的地が同じという事を意味している。などと絶句している間に何をトチ狂ったのか幼女はカバンから取り出した世界地図を広げ始め


「ぅ……」


しかし真性のアホではなかったようだ、グレートブリテンが中央に配された町内の探索にはまるで用を成さないそれを広げた瞬間に固まった。数秒と待たずに泣きそうな顔になって、助けてくださいと言わんばかりに少女を見上げ始める。溜息一回


「……入口まででいいか?」


「ん……えへへ」


幼女を従えてようやく前進を再開、よくよく考えたら既にアドバルーンが見えている、溜息二回


「エレナだよ、エレナ・ユースマリット」


「名前を聞いた覚えはない」


「青色ツェナーダイオード」


「悪い事は言わないからそのバンド名は今すぐ変えろ」


「青色…タンタルコンデンサ」


「電子部品から離れるんだ」


無駄に電気系の知識があるお花畑幼女を引き連れて通りを直進、一度右に曲がって、それだけでライブ会場の入口が目に入った。3回目の溜息をついてさらに歩みを進める


「おねーさんは、このへんの人じゃないよね」


「そうだな」


「アメリカは始めて?」


「そうだな」


「何をしにきたの?」


「そうだな」


「ぶぅ……」


露骨に流したら不機嫌になったがこっちは最初から不機嫌だ、途中にあったゴミ箱へ紙パックを投入、入口付近で写真撮影会をおっぱじめるクラウザーさんどもの間を縫っていく


「でも音楽には興味あるんだよね」


「聴くに足るものであればな」


「好きな曲は?」


「魔王」


「???」


思いついた曲を挙げただけである、実際問題あんな不協和音の塊など好みから程遠い。結局は気に入ればいいのだ、オーケストラだろうがアニソンだろうが


突き詰めれば、聴いていて心地のいい音を羅列しているだけなのだから

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