表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
死んだ他人と死ぬ他人
63/106

8-3

「んで見失ったのはここか」


「鍛えてはいそうだったけどスピードは常識の範囲内だったし、塀を乗り越えて逃げたんだと思うけど」


そりゃ紫髪のド派手な幼女が非常識な速度で追ってきたら壁越えくらいは試みるだろう。この近辺に点在する民家のどれかにいる事は間違いないが、いかんせん外国人というものは同じ顔に見えるというか


とにかく追っていた人影は逃がしてしまった。いくら速度で勝っていてもこればかりは地の利だ、どうしようもない


「そもそもそんなに怪しかったの?」


「事件発生から1分以内に走って逃げる奴は多かれ少なかれ関係者である可能性が高くかつ壁よじ登ってまで逃げるとなりゃ間違いない。これは警察も同じ見解を出すさ、経験上な」


「どういう経験なのかはまぁ聞かない事にするわ……こんな所じゃ探しても見つからないだろうし、とりあえず戻りましょうか」


「今頃大パニックだぜ、野次馬に揉まれるこたねーよ」


そう言ってシグは懐から通信機とインカムを取り出し、明梨に装着させた。周波数を調整、電源を入れる


『そろそろ呼び出される頃だと思っていました』


向こう側でアレクセイが喋りだした


「あ、えっと自爆テロの事なんだけど」


『おや、女神様』


「ごめん女神呼ばわりするんならせめて姫にして」


忘れていたが自身に与えられたコードネームはアストラエア、ギリシャ神話に登場する正義の女神である。改めて考えて見れば、これは皮肉か?


『まずは被害ですね。実行犯含め死者4名、重軽傷者13名、おかげで幹線道路が封鎖され大渋滞が発生中です。自爆テロの対応なんてカザフスタン警察が慣れている訳ありませんから』


「現地の人が?」


『申し訳ありませんが何もわかっていません、何しろ死体が……なもので』


「…………じゃああのアレ、空港のやつとも関係はわかってないの?」


『僕としてはアメリカのポリス野郎(笑)の仕業だった方が嬉しかったんですが、政府に寄せられた声明はカザフ語でした。内容は…またですね、政府が隠匿しています』


要するに何もわからないという事である


そこまで聞き出してメルがピクリと反応し、何か聞こえたとのジェスチャー


「わかった、ありがと」


通信機をシグに突っ返し歩き出したメルに従う、少し移動しただけで男と女の口論が聞こえてきた。壁に張り付いたメルを見てそれを真似し数十秒


民家から男が顔を出した


「あれ?」


「間違いなくあれ」


「よし、確保!!」



メル疾駆



「おとーさーーーーん!!!!」


周囲に怪しまれないようにだかなんだか知らないが飛びつくと同時に叫んだのはそれだった。だが英語では誰にも伝わらないし余計目立っている。どったーんと家の中に突っ込んだため追って内部に押しかけた


「お、お父さんいつの間に隠し子なんか!」


「違います!!」


実の娘は英語で喋っていた。逃げ出そうとする父をシグが押さえ込んでメルごと奥に連行、ドアを閉める


「離しやがれ!クソ!政府の犬どもめ!」


「政府の犬じゃなくて日本のサヨだよ!」


「クを付けなさい違う意味になるでしょ!!」







そこから30秒かけて組み伏せた男を椅子に拘束、1分で娘さんへの状況説明をし、この幼女が自身の妹であるという誤解を解くのでさらに1分。爆弾探しにメルとシグを派遣して一時リビングに落ち着いた


この家族はカザフスタン籍だが十数年前から去年までをアメリカで過ごしていたらしい、アレクセイが聞いたら喜ぶか悲しむか微妙な所である。どうして戻ってきたのかと聞けば、ある事件をきっかけにアメリカから逃げてきた、とのこと


「町ひとつが焼け野原にされる事件が向こうであったんです。私達はそのすぐ近くに住んでいて、父は輸入業の会社に」


「あー、流通ルート潰されちゃった感じ」


娘さんの話にキッチンを捜索するシグが反応、頷いて縛られたままの父を見る。何も話す気は無いらしい、口を真一文字にして窓の外へ視線を固定していた


「多かったらしいぞ、あれで倒産まで追い込まれた企業。輸入輸出輸送もそうだし、工業製品の部品製造関係やら自動車やら、五大湖のお膝元でそんな事やられたらそうなるさ。ヒナならもう少し詳しいかもな」


「なんであの子が?」


「その燃えた町の数少ない生き残りがあいつだ」


それは初耳


「帰ってきたはいいものの仕事が見つからず、私は英語しか話せませんし、追い詰められていたのは感じていました。でもある日から父と母が変な集会に参加し始めて……」


「……聞いたらまずいかもしれないけど、お母さんは?」


「死にました、ついさっき」


なるほど状況が読み込めた、と同時にとうとう泣き出してしまった娘さんを休ませようと寝室に移動させる


どうやら大変な場面に遭遇してしまったらしい。こういう時の為に育て上げた反戦争論者としての2年…はこの数週間で叩きのめされているし、何にせよ人身がかかっている、個人の判断で進めていいものでは


「とにかく爆弾探しといて!5分以内に!」


「へいへい、なんか雰囲気が隊長に似てきたなー」


やめてくれまだ腐りたくはない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ