7-9
道路に突き刺さったミサイルがアスファルトの破片をマスタングにこれでもかと叩きつけた
『押し込めーーーッ!!!!』
ラファールの号令と同時にウィルのミニミが絶叫する。ボコボコになったマスタングを見て先日のシオンみたいな顔になっていた左端の1人が慌てて攻撃を中断、壁に隠れ、その先でM4に頭を撃ち抜かれた
「チ……」
真正面からルカと撃ちあっていたテオドール(30秒前に思い出した)が舌打ちしたのを見、そいつが部下に下した命令を予測。テオドールからは完全に体を隠し、直後にやってきた7.62ミリを花壇で受ける
「シグ!動けるか!?」
「歪んだボディがタイヤと干渉してるけど動けはするぞ!」
左がやられたなら行くのは右、隠れたままあさっての方向にG36Cを向ける
『正面!ネアが出る!撃つんじゃないわよ!』
撤退命令を受けた敵が飛び出してきた
「はいワンゲット!」
特別な技術など使わずに1人を倒し、銃撃が止んだのを確認して花壇から顔を出す。10メートルの近距離にいたテオドールは別段怒っている訳でもなく、ただ面倒な事になった、という顔
「……どうも俺にとっての天敵がお前らしい」
その上空でオレンジが踊った
「ハッ…」
短く笑って、傷だらけのG3を後ろに振り回す。首に突き刺さる予定だったコンバットソードはそれで弾き飛ばされた
「えっ…ちょっと待っ…!」
よほど予想外だったのだろう、生まれて始めて炭酸飲料を飲んだ子供の如くネアは狼狽した。剣を失ってからコンマ数秒でナイフに切り替え、相手の下に潜り込みつつ足を狙う。だがどれだけ焦っていたのか軽く避けられ、G3の叩き下ろしは左手で防御。今度こそ腹にひと刺し、と思われたが、そのナイフが到達する前に蹴り飛ばされた
「おうおうおう一体何だこりゃ現実か!?」
「蹴っ飛ばされるくらいするでしょ人間なんだから!」
ネアもそうだが周囲はそれ以上にパニック状態にある。とにかく援護しようとヒナが駆け出しMP7を発砲、テオドールは着弾前に建物の影に消え、追撃しようとそれを追い
「あっだ!!」
ネアに足払いをくらった
「…………」
一回転後コンバットソードを右手で拾い上げ、左手のナイフは逆手に切り替える。片膝をついたままテオドールの消えた方向を睨みつけ
「ゲートで合流します、30秒以内に到達しといてください」
一瞬で消え去った、いや、走り去った
「……隊長?」
「えっと…うー……とにかく詰所に戻ってエボと合流!」
その場の全員が急いでバンに駆け込み乗車する。右のフロントタイヤに問題があるものの勢いよくエンジンは回りだした、案の定嫌な音がする
「ロイ!中国軍は!?」
『もうすぐそこまで来てます!時間的猶予はほとんど……クソ!!』
ガァン!と、見張り台に戦車砲弾が突き刺さる
「ロイ!?」
『生きてる!生きてます!電線をジップライン代わりにして下まで降りた!乗車して待機します!』
大きくふらつきながらもようやくバンは詰所に到着、シオンが屋上から飛び降りてくる。直後、詰所の屋根が吹き飛んだ
「ゲートは!?」
「開いてるよ!」
メルとシオンがエボXに乗車、準備完了とばかりに空吹かしを1発
「おい俺も乗せてくれ!」
「うわっ…おっさん汗くさい!!」
「汗くさいのはお互いさまだろ!まぁあんたはいい匂いするがな!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ラファールの絶叫と一緒に確かフェドロフとかいう名前のロシア人もバンに詰め込んだ所でちょうど30秒経過、ネアは家屋の屋根から飛び降りてきた
「成果は?」
「逃げられた」
乗ったと同時にドアを閉め急発進、いかなる時でも笑顔を絶やさないネアにしてはやたら元気がない、と思ったら腹に刃物が刺さっていた。短く曲がった刃はおそらくカランビットナイフ
「ウィル、救急箱を」
相変わらずギャリギャリ鳴らしているバンが門をくぐったのを確認してからネアに近付き、ナイフの柄をひっ掴む
「え、いや、待、ルカさん?ルカさん!?そんないきな……あ゛ーーーーっ!!!!」
立ち上がった噴水を左手で押さえつけ、ウィルから受け取ったタオルとすぐに交代、服を胸近くまでめくってから包帯でぐるぐる巻きにしていく
「容赦ねーー!!この人意外と色んな意味で容赦ねーー!!」
「血圧が上がってる、叫ぶのやめるのとモルヒネ打つのどっちがいい?」
「黙ります…すいません……」
応急処置完了、とりあえず大丈夫とラファールに伝える。頷いた
『こちらアレクセイ、状況は?』
「国境はもうすぐ越える、1人負傷したけどあんたんとこのおっさんも無事だしなんとか予定通り…いぃ!?」
草原の弾ける音が車内にまで伝わってくる
砲撃を行った張本人は越えてはいけない線を越え、絶賛ノロノロ運転中のバンに砲口を向けていた
「追ってきた!戦車が追ってくる!!」
『おやおや』
「おやおやじゃねーーよ!!!!」
大きく右にハンドルを切って2発目を回避、なおエボXは遥か遠くまで逃げてしまっている。少なくとも明梨の安全は確保された
『ご心配なく、想定内です。作戦とは最悪を常に考慮しておくものですよ』
「御託はいい!どんな対策してるって!?」
『極めて単純』
超高出力のドライヤーみたいな音がして
『たまには、我がロシア軍も頼って欲しいものです』
ド派手な爆発が起きた
「イヤッホーー!!」
中国98式戦車に急降下爆撃を叩き込んだSuー34フルバックはシグの歓声を浴びながら地面すれすれのV字上昇を決めた。ロシア製現役バリバリの戦闘爆撃機は一度カザフスタン方向に舞い戻って、残る1輌を仕留めるべく再び急降下を開始
轟音
「ははははは!!燃えてろワンタン野郎!!」
ストレス溜まってたらしい、ヒナも叫び出した
『他に問題はありますか?』
「いや、別に……」
『それでは進行は予定通り、ホテルの部屋を取ってお待ちしております』
終わった、と目を伏せて
やたら冷静なアレクセイと、爽快なジェット音と
「……眩暈してきた…」
血生臭いのはどうにかして欲しい




