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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
It Restart
6/106

1-6

携帯電話を紛失したと気付いたのは30分前だった


宿泊先のホテルからここまでは遠くないし、何より携帯電話は個人情報の塊だ、すぐに部屋から飛び出して、到着したのが10分前。探し物自体はすぐに見つかった、準備室のロッカーに置き忘れていた


で、それから10秒足らず



踏み潰された携帯電話が床に部品を撒き散らしている



「カツラギアカリ、間違いない、迎えを呼べ」



緑色のゴテゴテしい服、たぶん迷彩服というものだ、それを着た男が室内に3人、うち1人は自分へ向かって拳銃を向けている


「な…何…?」


ロッカーに背中が当たって音が鳴った。事態が飲み込めない、これは誰だ、この後どうなる


「一緒に来てもらう。英語はわかるな?さあこっちだ」


右腕を掴まれ引っ張られる。最初は抵抗した、だが頭に拳銃を突き付けられ、全身から力が抜けていく


「すべてが順調に進めば1ヶ月後には帰れる、抵抗するな、無駄な死体は作りたくない」


引きずられるように準備室を出て廊下へ。そこまで行ってようやく、これから誘拐されるのだと理解した


悲鳴を出そうとしたが、出なかった、息切れしたような音が出る


「恐らく警察と一戦交える。チーム1、屋上を確保。チーム2、屋外を警戒。それ以外はロビーに陣取れ」


全部で20人はいるだろうか、いずれも体格のいい男、迷彩服に銀行強盗が使うようなフルフェイスマスク、それからライフルを装備している。腕を掴む男の命令で一斉に動き、戦う素振りを見せ始めた


「日本の警察ごときに遅れを取るな、勝手に死ぬのは構わんが我々の信頼に傷を付ける事は許さん」


階段を登る、4人が追い越して先に行った。その先は確か空調設備のある部屋


「隊長」


さらに後ろから1人、話しかけてきた。階段の中ほどで立ち止まってそれに応答


「何だ」


男は親指で劇場の外を示す、そしてライフルを持ち上げながら隊長と呼ばれたそいつへ一言


「装甲車が突っ込んできます」

























ストライカー装甲車のフロントがBTRのどてっ腹を貫いた


「いぃよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



運転手のシグが奇声を発し、ジェットコースターより数倍酷い減速Gがかかる。ぶつけたBTRが横転した


「行け行け行け行けーー!!」


まずメル、追ってウィル、開いた後部ハッチから飛び出して連続発砲。ルカとラファールが降りた頃にはクリア!と声が上がる


「まだまだいるぜ!屋内に少なくとも10!ロビーの2階に葛城明梨アストラエア確認!」


「シグ!M2を操作!メルは車両を確保!」


持てる限りの全力で劇場入口を目指し疾走。途中でウィルが立ち止まり、敵の死体を掴んで物影へ



そのあたりで建物裏側から車のライトが照射された



「BTR!動いてますよ!」


エンジン音、進路に立っていた街灯を吹っ飛ばして装甲車登場。上部に搭載された重機関銃が重低音の鳴き声を上げる


『やべぇって!ぎゃー!』


通信機からシグの悲鳴が聞こえてきた、瞬く間にストライカーがボコボコになっていく


「ロイ!準備は!?」


「既に、というかもう撃ちます」



ガゴォン!!と、BTRの装甲が破裂した。次いでバチバチと花火のような閃光



『砲口に命中、弾薬が誘爆しましたね』


50BMGを使用した超が付く精密狙撃により屋外の脅威は消滅、内部の掃除に移るべく正面玄関から突入した。ルカと共に行動しているのはラファール、それからネア、やや遅れてウィル


「まずいまずいまずい!こいつらスペツナズの部隊章付けてやがる!」


「はぁぁぁ!?」


死体を調べ終えたウィルが駆け寄ってきて言い、それにラファールが反応。その間に一斉射撃を喰らって各々飛び込むように物影へ


「え、何?正規軍ですか?コスプレでなく?」


「コスプレだと思いたいがな!」


銃撃の隙間を縫ってネアが反撃、使っているのはM320グレネードランチャー付きのG36Cだ、弾倉のクリップを使って左右に予備弾倉を連結している。敵全員の頭を下げさせた上でウィルに制圧射撃を譲り、自らは前進


『すごいよヒナちゃん!私たち今ロシア軍と戦ってる!』


『あんたは相変わらず能天気ねぇーー』


狙撃によりガラス張りの劇場正面が破裂、柱の影に隠れていた敵が倒れる


「1階クリア!」


ネアが突撃して残り1人も倒した、そのまま2階、と思ったが、再び敵からの一斉射撃


「やっぱ民兵とは違うわね…」


軽く見回してロビーの構造を確認、ラファールがフラググレネードを取り出す。2階までは吹き抜けだ、上に投げれば届く


「シグ!撃ちまくれ!」


叫びながらそれを投げた


2階の床に落ちる音が聞こえ、敵がそれに気付くか否かの速度でM2重機関銃の掃射が始まる。椅子、掲示板、観葉植物、色んなものが落ちてきた、いずれも原形を留めていない


そのままフラグが爆発、一際大きい音が響く


『4人やった、残りは奥に逃げたな』


「前進!」


階段には自分が一番近い、先頭でいく事にした


2階まで一気に駆け上がって左の安全を確認、右はラファールが。ウィルとネアを待ってから奥にある扉へ


『屋上に敵複数確認、スナイパー班、そちらを片付けます。それと、北からハインドが1機』



ヘリで連れ去る気か



「急げ!もう時間ねえぞ!」


かなり簡素な階段を登って『危険』と書かれた扉に到達。まず扉の左に張り付いて、右に付いたウィルが扉に後ろ蹴りをかます。開いた瞬間に突入、右を確認、左はウィルが受け持って、その間をネアが走り抜けた


『おい何をミスしている!対人狙撃は貴様の領分だろうが!』


『わかってるっつーのうるさい黙れ!』


狙撃班の痴話喧嘩を聞きながら前進、間もなく攻撃を受けて散開する。空調設備の間から反撃しつつ、ウィルの援護射撃を受けてさらに前進


『屋上の制圧を確に……どわぁぁぁ!!ハインドからロケット攻撃ぃ!!』



いろんなものが爆発する音



「ここは抑えときます!お2人はそこの窓から!」


「了解!」


ウィルとネアを残し窓から屋上に飛び出した。誰もいない、目標アストラエアは建物の反対側か


疾走、建物の影を出て、まず銃撃を喰らう


「どこが制圧確認だどアホがーっ!!」


ラファールはダイブして空調室外機へ、なおも銃撃を受け室外機が火花を散らす


人数1、十分行けるか


「後からついて来て!」


弾切れと同時に飛び出した、要はリロードされる前に敵まで走り込んでしまえばいいのだ。問題は、敵が民兵でもテロリストでもない世界最高峰の特殊部隊だということ


セルフ制圧射撃、撃ちながら走る。だが残り3メートル、目暗撃ち(ブラインドショット)を受けた


「ち…!」


斜めに前転、やりながらG36Cの残り弾を撃ち尽くす、残念ながら命中無し。1回転後床を蹴り付けて、敵の真下に侵入、脛あたりにタックルをかました


「あっっぶないけどよくやった!」


倒れた敵にラファールが弾を送って撃破



今度こそ屋上制圧、残りは



「っぐ…!」


銃声、ラファールが短く悲鳴を上げた



「ぁ…!たす…!」



目標アストラエア確認、ヘリにはまだ乗っていない、発砲したのは腕を掴んでいる男


G36Cを手放し腰からPx4を、飛んできた拳銃弾が右肩を掠め、撃ち返す形で2発。思いのほかいい当たり方をして、男のMP−443を破壊した



しかし、返ってきたのは尋常じゃなく重い蹴り



「ッ…!」


飛ばされはしなかった、だが世界が傾いていく。これは、阻止できないか。とりあえずPx4を撃ってみる、左肩に当たった


「この!」


男が怯んだ隙にポケットに手を突っ込んで、あったものを取り出す。それを明梨に向かって投げ




受け取った




「あ……」


それで最後の抵抗は終了、腹に蹴りを喰らって今度こそ吹っ飛ばされる。意識がゆっくり落ちていき、視界も真っ黒へ



気を失う直前


飛び去るヘリの音が僅かに聞こえていた

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