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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
殺戮の丘
59/106

7-8

撤退命令からおよそ2分、ようやく最後の爆薬が起爆を見た


『よっしゃ、これからアルファに合流するぞ』


「さっきの女2人はどうなった?仕留めたようには見えんが」


『女?あー…ルカくん?』


『化粧室に寄るって』


いったい何を庇っているのか、あの男の優しさはもはや慈愛レベルだ。細道から飛び出した装甲バンにNVスコープを向け続けながらロイは三度爆破を受けた人民解放軍を確認する、あれだけ被害を出してなお前進を止めようとしない


『メル、あとどれくらい?』


『攻勢防御は全部潰したしゲート開けるだけなら中枢まで攻め込む必要はないけどスペックがぜんぜん足りないからえーとえーと……3分!』


『オッケ。シオン、迫撃砲を全部ぶち込んで、ロイはブラボーの撤退完了まで監視と弾着確認』


「委細承知」


ロイのいる見張り台の右下にある詰所でポンッという気の抜けた音がした。発射された砲弾は遥か上空まで達したのち重力に捕まって落ちてくる、今夜は無風なので狙った場所に素直に着弾してくれるはず、だが


『はい、うん。はい』


「……一応言うぞ、ハズレだ。南東に80メートル修正しろ」


『わからない、迫撃砲こいつが何を欲しているのか』


まるで見当違いの場所が爆発しシオンの残念すぎる砲撃能力が露呈した所でM95のスコープに目を戻す。バンは詰所まで200メートル


『でもまぁここにいる人間の中じゃ一番マシだと思うわよ』


『…具体的には…?』


『あー、あー、うーあー』


『距離で一番酷いのだったら…ソマリアでネアが野砲撃った時の1200メートル』


つくづくこの部隊はシグ1人に対装甲戦闘を丸投げしていると実感しつつバンの監視を続け、そこで原因不明の違和感に苛まれる


『ほーい。……どう?』


「あ?……あー…東にあと50メートルだ」


『うーん巻きが足りなかったか』


『どこ製のもん使ってるかわからんけど、50メートルなら角度調整ハンドルを3巻きくらいが妥当じゃないかにゃー』


『りょうかー…………誰?』



違和感発覚



「おい何か珍妙なのが混ざってるぞ!」


『現行の周波数が割れてる!全員通信機を第三に設定!』


『うおおおい待て待て待て待て!あたしゃ情報屋だ中国人じゃない!』


情報屋、物品ではなく知識を扱う売人の事。百貨店のように幅広い商品を扱う事は不可能であるためいずれかの分野に特化している事がほとんど。性質は傭兵と似通っており、金さえあれば誰にでもサービスを提供する


現代戦場での実在例はほとんどない絶滅危惧種ではあるが


『その情報屋さんが何の用?』


『いや、いつも通り情報の押し売りを』


『…………』


『まずは初回サービスだな。そこの白いバンにマスタングが突っ込んでくるぞ』


『……馬?』


『クルマでしょ?、アメリカ合衆国フォード社製』


それを聞いてスコープをバンに合わせ直す。問題なく進んでいたが、その数秒後にいきなり挙動を乱し


『……で、その続きはいくら?』


『1万USドル』


『ふふふふふ…』


正面から飛び出してきたアメリカ産マッスルカーを避けるために進路変更を余儀無くされたシグは中国軍から離れる事を選択、脇道に進入してあさっての方向へ走っていく。50BMGを叩き込みたい所だがさすがに速度が出過ぎている


『グライアイの人数は3、テオドールのクソオヤジが仕切ってる。小火器しか持ってないぞ、正面から撃ち合って結構だ。ちなみにマスタングの出力は300馬力ちょっとのどノーマル、おたくのランエボなら軽くちぎれるだろ』


詰所から迫撃砲弾が撃ち出される、敵のど真ん中で爆発した


『ま、おたくもよく知ってると思うがひじょーーに見苦しい連中でな、できればこのあたりでくたばって頂きたい。どうだ?頑張ってみないか?』


『……わかったわ善処してあげる。1万USドルでどう?』


『ふはははは…』


リアハッチを開けて銃撃を始めるバン、マスタングのボディが見る間にひしゃげていくが貫通には至らない。そうこうしているうちに体当たりを食らってスピンを誘発、停車してしまう


『すまん、振り切れそうにない』


『問題ないわ、危機的状況ではあるけどわかりやすくなった、そのまま停車してグライアイを迎撃。正宗、中国軍にロケット弾をプレゼントした後エボXで待機。ロイ、そのますたんぐとかいうのをマーク』


バンからルカとヒナが出てきて防御位置を確保、リアハッチにはウィルが陣取る、敵車両も停車して中身を散開させた。うまく建物の影に隠したようだが、車を使用不能にする程度で直接破壊する必要などない


『シオン、あんたの嫁さんは?』


『ご心配なく、既にカザフスタンへ輸送済みです』


『オッケ、ネア、行くわよ』


中国軍は迫撃砲とM72ロケットランチャーにより壊滅へと追い込まれていく、戦車が2輌も健在なのが気掛かりだが後回しにするしかないだろう。指示通りレーザー照準器に持ち替えて待機


交戦開始した向こうはいきなり劣勢に立たされていた。あっちこっちと走り回る敵は特殊部隊がゲリラ行為に勤しんでいるようであり、正面から取り合ってくれないためにマトモな対応ができていない、こうも一瞬で丸め込まれるのは初めての事と言っていい


「教科書潰しの動き方だな、スペツナズなんぞより手間だぞ」


『それは聞き捨てなりませんよミスターシムナ』


「なんだいたのか……」


『つい10秒前からですよ。予定時刻を過ぎても待ち合わせ場所に現れないのでこちらに繋いでみたのですが』


現在中国軍を撃退するフェイズ2、時計を見れば確かにフェイズ3終了予定をオーバーしていた。本来ならばアレクセイに1杯奢らせている時間


『あと1分で国境を越える!戦車をどうにかする見通しは立ってないけどね!』


『ちょっと待っ……ハックが間に合わないよ!!』


『間に合わせれ!!』


照準器の視界にネアのオレンジが出現、完全に敵の後ろを取る


『シオン!発射ボタン!』


『はいポチッとな!!』


TOWミサイルが撃ち上がった



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