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「第一防衛線の150メートルと250メートル前に爆薬を仕掛ける、装甲兵器の大半はやれるはずだ」
「撤退用にもう一段追加してくれ、驚かすだけでいい。メル、武器リストは来たか?」
「M2重機関銃2丁、M72ロケットランチャー10本、81ミリ迫撃砲1門、TOWミサイルランチャー1基。使えるのはこのくらいかなぁ」
「オーケー。ロイ、先に行って設置位置の確認、ヒナは高い所を探して中国軍を監視してくれ」
「うぇーい」
爆薬が整然と並べられテロリストの集会場と化したロビーの中からガタガタと2人立ち上がって出ていく。ライフルは持たず隠し持ちできるものだけ、特にロイは厳戒態勢の国境間際に行くのだ、本当なら拳銃はおろか双眼鏡すら持ちたくはない、ではあるが、そもそも我々はビザを取得していない
ヒナとロイが出ていったそのスペースは即座にG36系マガジン(空)に占拠され、アレクセイとデータのやりとりをしていたメルも5.56ミリをパチパチする作業に移った。装填済み12個、残り約50個
「ただいまー」
ラファールが帰ってきた、足の踏み場も無いロビーの床を縫うように奥まで進んで一度奥に消え、バッグを置いてから再び現れる
「それで状況は?」
「見ての通りだ、限界まで重武装化を進めてる。ゲートを制圧してから爆薬設置して、可能ならブービートラップも仕掛ける」
「地雷の類は使いたくないわね、終わった後回収できない」
「…………まぁお前がそう言うのなら」
と、そのあたりでばたばたと外が騒がしくなり、やがて勢いよく扉が開く。現れたオレンジは間違いなくネアであるが、怒った表情は始めて見た。ラファールとウィルも面食らっており、どうやら入隊以来初めての出来事らしい。ただし、正宗とメルだけはいつも通りの表情
「ああくそひでー目に遭った!」
「いったいどうした?化けの皮はがれてるぞ」
「はがれてねーですしっかり装備してます!」
先程のラファールと同じルートを極めて迅速に踏破し同じく奥へ消え、井戸の水で顔を洗ってからタオル片手に戻ってきた。何をしたかは知らないがよほどの事が起きたようだ、あの腹黒の鏡のようなのが感情を露わにするとは
「でもまぁそう珍しい事じゃないし、確かに2、3年ぶりではあるけど」
「昔は1日20回ペースだったな」
とかなんとかメルと正宗がまるで想像できない事を話している。パチンと30発詰め終えた13個目を横に並べ、その間にネアはストレスの解消先をラファールに定めたらしい、いつものニヤけ面を取り戻しながら耳元でぽつりと呟くと、スタンガンでも喰らったかのように激しく痙攣した
「ちょちょちょちょちょままま待!!!!」
「おやおやおやおや」
パニック状態に陥りながらもネアを奥に押し込めようと、厳密には危険物を皆から遠ざけようと井戸の方向へ向かっていき、その途中で首だけをこちらへ向ける
「ルカ!」
「はい」
「今のうちに明梨をどうにかしといて!夜には出ないといけないんだからこのまま空気状態じゃ困るわ!」
「はい」
それは自分でも思っていた所なので弾込め作業を中断して立ち上がった。先日の村の件はキツかったし、それ以前にも事あるごとに精神的ダメージを強要してしまっている。ともあれ引きこもってからもう3日、そろそろ日の光に当てなければ湿気って、もとい元に戻れなくなってしまう
「え、何、何!?見てたの!?」
「そりゃもう!疾さんの趣味がルカさん系クールショタだって所までばっちりと!」
「!!☆!(ノ∀`)!!!??」
階段へ向かう際にこっちが引きこもりたくなる何かが聞こえたが右から左に流す事で発狂を防ぐ。明梨のいる2階まで上がってまた廊下を進み、この3日マトモな出入りの無い部屋の前まで到着
「……」
室内からの物音は無い、眠っているか惚けているかはわからないがいい加減出て来て貰わねばならない。気持ちは痛いほど理解できる、自分だって5年前のあの日以降は1ヶ月近く引きこもった、だからこそ出てこれなくなる前に引っ張り出すのが自分にでき
「よっしゃああああああああああああ!!!!」
出てきた
「え?何今の衝撃?」
弱い人間だという認識は改める必要があるだろう、たった3日で誰の助けもなく立ち直る事ができるならその精神は十分に強靭だ、どうもいらぬ心配だったらしい。なお今の衝撃はいきなり開いたドアにルカが吹っ飛ばされたものである
「やあ…久しぶり…」
「わ、どうしたのそんな所で」
右手で鼻を隠しつつ左手で壁に寄りかかる男は嫌いですか
「気持ちの整理はついた?」
「一応ついた、もう大丈夫」
久しぶり、いや初めてといってもいい、明梨が笑顔を見せた。それが心からのものかどうか一瞬でわかってしまったのでどういう整理をしたのかは聞かない事にする
「……とにかく今日ここを出るよ、日付けが変わる頃にはカザフスタンにいないといけない」
「一悶着ありそう?」
「一悶着どころか地獄を作る事になりそうだ」
「わかった、覚悟はしとく」
急に物分かりのよくなった明梨は顔を洗うためか下に降りていき、その惨状に(ラファールが)悲鳴を上げた。軽く息を吐いて鼻血の有無を確認し、追ってルカも階下へ
「やけに早かったな、どうだ?」
プラスチックケースにFMJ弾を詰めるだけの簡単なお仕事に戻るべくさっきの位置に座り直し、ウィルからの一言に応答
「まずいね、転がるように右側に来てる」
「まぁこんな状況じゃな、うまく真ん中で止まってくれりゃいいんだが」
ちらりと向こうを見る、メルに先の暴走の話を振っていた。やめてあげてマジで
「とにかく中国を出よう、カザフスタンまで行けばロシア勢力圏だ、ちゃんと考える時間もできる」
「……だといいがな」
「何か懸念が?」
「もうしばらく養分を与えられてない腐女子がいる、暴走するかもしれん」
深刻すぎる




