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銃のメンテナンスを終わらせてロビーに戻るとヒナが点滴を受けていた。ただし送り込む液体にはでかでかとエンジンクーラントと書いてある、注入口はハンカチで隠され見る事ができないが
「おぉルカさん、探そうと思ってた所です」
「もう冷却液持ってきたの?早いね」
「セリカちゃんの予備です、レーシングカーに入れても問題無いくらいの高級品っすよ」
当のヒナはかなり胡散臭そうな顔をしているが中国製ではないという時点で現状手に入る最高の品である。数分で補充完了してホースを切り離し、外部命令で再起動をかけると指先からゆっくり動き始めた
「液温正常、エラーは吐いてない」
何回か腕を回して動作を確認、次いで左腕の冷却液交換に移る。器具を繋いで古いものを排出し、右腕と同じようにクーラント(レーシング規格)を入れていく
「これでしばらくは大丈夫、でも全体的に劣化が始まってます、早いうちにオーバーホールしないと」
「でもこんなジャンクみたいなのをどうやって」
「…もしやと思うけどこの数年で完全に動かなくなる欠陥品を予備パーツのアテもなしに使ってたのですかヒナ先生」
「………………」
「……いいですか?この軍用マニュピレーター"アイギス"は一発ネタじゃありません、ちゃんと開発が続いてるんです。メモリーから実戦データを抜き出して製造元に送れば喜んでメンテを請け負うでしょう」
「データ不足なのかな?」
「五体不満足じゃないと装備できねーですからね、両手両足プラス義眼の"メデューサ"もとなりゃこれ以上の被験者なんていません」
しばらくこのまま、とヒナに言ってからシオンは立ち上がる。宿屋の外に出て行ったのでそれを追いかけ隠れるようにルカもセリカの反対側でしゃがみ込む
「いやーまずい、あの子死ぬ気っすよ」
「具体的には?」
「16なんて成長期真っ只中、あんなもん付けちゃってんのに定期調整もしないなんて、少なくとも接合部に違和感くらいあるはずなのに」
それはそうとメアドくださいと言ってきたので携帯電話を取り出しアドレスを見せる。リンゴ製スマートフォンが処理落ちする速度でそれを打ち込んだ後メールを1通送信、すぐにこっちの電話が着信した
"射手座の存在は確認しました"
「……あの子の故郷はデトロイトの近くにありました、広範囲が大炎上して今でも焼け野原ですがね。当時あそこはシャリーアという武装組織に襲撃されていて、緊急展開した米海兵隊及びレンジャー部隊との戦闘が発生、要人護衛任務を終えたばかりのJP666小隊もサポートユニットとして招集されてます。ここであったんでしょうねぇ、運命の出会い。間違いなく不運の方だけど」
喋りながらシオンはタイピングを続け、ほどなく2通目3通目が到着する
"衛星兵器"
「シャリーアはこの後米軍によって組織の維持が出来なくなるほど徹底的に叩かれアルカイダが吸収します。が、まだ捕まってないんですよ主犯」
"宇宙に兵器を設置する事は条約違反"
"襲撃時にコントロールを喪失"
"アメリカは隠匿"
「彼女とメル子の2人で独自に情報を集めてます、隊長さんにも内緒でしょう。まぁ、私やウォッカ野郎からすれば子供のお遊び程度っす」
「……つまり目的は」
「復讐」
タイピングが止んだのを見て返信を打つ、1行だけカタカタと入力し送信
"手掛かりになりそうなもの"
「ルカさんは家族を失った後どんな気分になりました?あの子はそれを町ひとつ、お母さんから友達、近所のおじいさん、レストランの店主に至るまですべてでやったんです。まぁーぶっ壊れたでしょうね、精神」
「そうだね」
"バイコヌール宇宙基地"
「まぁ最大の違いは、それをどう捉えたか、なんですけど」
2人同時に携帯電話をしまって立ち上がる。内緒話終了、宿屋へ戻っていく
「ちょっとー、もう終わってるんだけどー」
「はいはい今抜きますよ」
ホースを抜いて冷却液交換を終わらせ、足はまだ大丈夫そうなのでパス。腕をぶんぶん回しながら奥に消えていくヒナ
「さて、じゃあ私は武器の受け取りに行きます。夜には一時的に指揮下に入りますんでよろしく」
「手伝ってくれるんだ?」
「そりゃまぁこの人数で正規軍とガチンコとかどこのフィンランドかと。こんな場所じゃなきゃ部下も連れてきたんですが」
「部下いたんだ」
「完全な下っ端はこんな自由行動しないよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」




