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「なるほどなるほど、確かにこれなら秘匿性は高いだろうな」
「弱小マフィンがどこと戦争するつもりなのよ」
「えー、今から私達はパンと戦うようですが、イギリス人としてこれはどうしましょう」
「まいったね、ジャムは持って来なかった」
運転席にシグ、助手席にルカ、荷台にヒナとメルを乗せてピックアップトラックは丘を登っていく。頂上には小屋がひとつ建っており、少なくとも2人の見張りが確認できる
「よし、一気に行くぞ、丘の向こうに出なけりゃ音は気にしなくていいはずだ」
距離50メートル、見張りがこちらの顔を認識し始めた、異変を感じて小屋の外に出てくる。まずメルがPKP軽機関銃を掴んで、準備完了と天井を2回叩く
「ゴー!」
シグの右足がアクセルを踏み倒すと同時にPKPが発砲を開始、2人いた見張りは瞬く間に血まみれとなって崩れ落ちた。小屋の脇まで車を寄せさらに連射、バキバキと音を立てて木造建築が蜂の巣に成り果てる
「クリア」
「こちらブラボー、見張り台を制圧した」
『了解、そこから母屋には接近できそう?』
「たぶんね。予定通りヒナとメルを潜入させる」
トラックから降りて目的地を一瞥、見張りは今片付けたが途中に遮蔽物がない。小屋に置いてあった望遠鏡をルカが反対側まで移動させ監視体勢へ、シグとメルはこの地形を見てそれぞれ何か思い立ったらしく爆薬を並べたり小屋を物色し始める
「距離200メートル、どうする?」
「どうするって聞かれても走りこむしかないでしょーよ」
「100メートル走は?」
「10秒9」
「やっぱり君陸上競技に出た方がいいと思う」
狙撃する機会は無いと判断してSLー9はルカに預ける。一緒に走る相棒を求めて小屋の中を覗き込み、メルが満面の笑みで何かを掲げているのを発見
「ヒナちゃん、これ」
「……ダンボール」
「そうダンボール」
茶色い箱をふたつ持って出てきたメルは丘の淵にそれを置き。まさか、と思ったがいきなり蹴りを入れて分解を始めた。余分な部分は切り取って、長方形のダンボールシートがふたつ完成
「さあ滑ろう!」
などとのたまった
「てっきりかぶるものかと」
「どっちにしろアホの所業だわ……」
同じくMG36をルカの横に置いてダンボールの上に鎮座してしまったメルに溜息を送り、足をばたばたさせている横に座る
「え、やるの?」
「いや、だって、楽しそうだし」
「…………」
何も言わなくなったルカを視界から外してメルに合図、滑り出すべくちょっと前に進んで
直後にその行為を激しく後悔した
「いいいいやっはあああああああああ!!!!」
「ぎゃああああああああああ!!!!」
正直もう少し制御できると思っていた、だが実際は完全無欠の暴れ馬であった。しかし地形が滑るのに最適だったらしく、レールでも敷かれているかのように建物へと突撃していく。十数秒で建物まで到達、飛び降りて壁に張り付く
『楽しかった?』
「楽しくない!全っ然楽しくない!!」
『オーケー、じゃあ仕事に戻ろう』
騒ぎが起きない事から今の土手遊びが誰にも見られていないと判断し、レッグホルスターからMP7を引き抜いた。まずサプレッサーを装着して、ストックを引き伸ばしセイフティ解除。M93Rを準備したメルを連れて入口を探す
『アルファ、反対側から監視位置についた。目立った動きはないけど、なんか苛立ってるわね』
『そりゃテクニカルを何台も潰されればね』
窓を発見、開くかどうか試そうとしたがそもそもガラスが無かった。メルがのそりと入っていくのを見届けてから窓枠に手をかけて前転するように侵入
「お邪魔しまーす」
ここは廊下らしい、左にはキッチンがあるが右はドアがしまっていてわからない。メルは左に進み、特に異論もないのでそれについていく。キッチンは巨大な肉塊がいくつか天井からぶら下がっており、それに群がるハエが不快音を立てていた。後特筆するなればさすが男だらけの職場というべき汚さ
「これ食べんの?てか何で片付けないの?」
『月に1回くらいあんたら2人が家の台所でやってた錬金術の後もそんな感じでしょうよ』
失礼な
『地上階は人が多い、階段を探して2階から捜索して』
「了解」
悪臭漂うキッチンを通り抜けて廊下を進む。階段はすぐに見つけたが、サボりが1人窓から顔を出してタバコを吸っていた。メルが這うように近づいていく
「ハロー」
振り向いた男の喉にコンバットナイフが勢いよく突き刺さる、溺れたように呻いた後、押し出されて窓から出ていった
「クリア、上に行こ」
ギシギシ鳴る階段をゆっくり登って2階に到着、廊下に誰もいない事を確認した。部屋が6つ、すべてドアがしまっている
「窓から中は見れない?」
『こっちからは何も。ルカ?』
『めぼしいものは見えないね』
なら突入して確認するしかない、さてどれからにするかと思考を巡らせ
が、結論が出る前に後ろからメルにつつかれた
「屋根裏部屋があるっぽいよ」




