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残りの敵を掃除するべく2人が集落内部に突入しすぐさま住民が悲鳴を上げる、屋内に入れと言いたいのだが言葉が通じないのでどうしようもない。十数秒をかけてすべての場所を見て回り、やがてパンと1発だけ発砲、死体を引きずって帰ってきた
「そいつは1人で何やってたんだ?」
「ねーちゃん口説いてた」
背後でバンが急停止する音がし、まずルカとシグが車両を確保する。その後ロイがM95とネアのG36Cを持って出てきて運転席にそれを投げ、監視地点を探して上を仰ぐ。最後にラファールがM4片手に転げ出てきたがそれはひとまず置いておいて、エボXのトランクに積んでいたSLー9をヒナに投げ周辺警戒を指示、ロイと共に木登りを始めた
「それで、どちらさんにケンカ売られたんです?」
「売られたっつーか横取りしたんだけどな、そこらのゴロツキかなんかだと思うが」
「ゴロツキがテクニカルにエンブレムなんて描きますか?」
ネアがG36Cを持ち上げてピックアップトラックについていた紋章を指した。古文書に出てきそうなタッチの人間が青龍刀を振り回しているのを炎か何かで囲ったような。それを見ながらウィルはタバコを1本取り出し
「なんだやたらと絵がうまいな」
「注目するのはそこじゃないでしょう」
と、そのあたりでようやく状況を理解したらしい、ラファールが勢いよく駆け寄ってきた。おおこわいこわいとネアが一歩引いてウィルだけ怒りの隊長と対面
「ちょっとあんたは何いきなりこんなことやらかして!」
「文句は後でいくらでも聞いてやるから、まずはその寝癖を直せ」
「かっ…ぐ…!!」
頭のてっぺんに付いている金色の跳ね返りをタバコを持った手で何度かつつくとラファールさんは短く呻いて、ポーチから取り出した手鏡を食い入るように見始めた。時間を稼いでいるうちに携帯電話でアレクセイの番号にコールする
『はいこちら面倒事相談室』
「ああすいません、ちょっと変な集団とトラブル起こして困ってるんですが」
『おっと、乗ってくるとは意外でしたね』
「社交辞令程度はな。地元の犯罪組織と揉め事になりそうなんだが相手の情報が欲しい、青龍刀持ってる野郎のエンブレムだ」
『エンブレムから特定ですか……それは別の部署に問い合わせなければなりませんね、5分ほど時間をください』
「ああ、頼む」
一度電話を切る、その後あたりを見回して、村長か何かと思われる老人が近付いてくるのを発見。バンまで行って中を覗き込む
「姫、通訳を頼めますかね」
「姫って何よ姫って…」
近くで警戒していたルカの肩を叩いて明梨の護衛に付け、老人を指差して話を聞いてくるよう向かわせる。それを追いながらずっと持っていたタバコをようやくくわえて点火、白い煙が上がった
「新しい盗賊が来たと思われてる」
「この村まるごと買い取ってもお釣りがくるくらいこっちは金を持ってると返しとけ」
明梨には会話を続けさせ視線を背後へ。視界を遮るもののない荒野がずっと続いている、今のところ異物は認められない
「ルカくん、この手のちんちくりんを潰した経験は?」
「両手で数えきれない程度には」
「組織だった行動ができる奴であるなら見張りくらいは設けてただろう、今頃は増援を呼んでる最中だと思う」
「だろうね、彼らはある意味騎士道なんかよりも誇りを重んじてる」
最終的にネアが後ろから跳ね返りを矯正してラファールの寝癖が消える、さて怒るかとこっちを睨みつけ、一拍間を置いて携帯電話が着信音を鳴らした。横槍を入れられてラファールがまた呻く
「ナイスタイミング」
『何のタイミングかはわかりかねますがそれほどでも。エンブレムを照合しただけですので確証は無いですがそれらしいものは見つけました。甘肅会という秘密結社ですね、名前の通り甘粛省一帯を縄張りにする犯罪組織で、主な活動は麻薬売買と略奪行為、どこか大きな所と繋がっている訳ではありません。ただの下衆の集まりですよ』
「なら対処はしやすそうだ。この辺りの拠点の場所はわかるか?」
『中国大陸に何百といる小動物達をすべて調べ上げるほどSVRの予算は多くないですよ。まぁ、非常に腹わたが煮え繰り返る話ではありますが、どうしても知りたいというのであれば、犯罪組織に関してならSVRよりCIAの方が圧倒的に詳しいのでは?』
「あー、やっぱりそうなっちゃう?」
『はい。それでは良き恋愛経験を、失礼します』
あんの腹黒就活生め
通話の切れた携帯電話をしまって、明梨は未だ老人と会話中であるのを確認。視線を戻して、絶賛ぶすくれ中のラファールさんと相対
「で、状況は?」
時間を取ったおかげでクールダウンしたらしい、予想していた怒声は上がらなかった。簡単に顛末を話して、完全に排除する必要があるかどうかはまだ不明と補足
「近くに拠点があるなら潰しておくべきだと僕は思うよ、この手の人達は本っっっ当にしつこいし」
「あなたが言うと妙に説得力あるわね……」
「中東でぶらり旅すればわかる」
「うんごめん、間違いなく一生やらない」




