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「あんたたちは公道最速伝説でも打ち立てるつもりなの?」
ドコドコ鳴っていた騒音が消えてエンジン停止、横に並んだエボとセリカを見てラファールが一言。運転席から出てきたシオンはいえいえと首を振り
「残念ながらこのセリカちゃん、中身はラリー仕様です。FFなんでJWRCクラスでしょうか」
「ごめん、何言ってるかわからない」
後部座席からルカと明梨が出てくるのを待って、トランクに突っ込んでいたレジ袋をラファールへ渡した。すぐ後ろにいたネアにパスして数秒、パクリ商品の数々を見て爆笑を始めるネア
「なあ、昨日の橋を爆破したのあったよな。あれやったの誰だ?」
そうしたらまずシグが質問してきた。グライアイを撤退させたあと中国軍を振り切る為に橋を落としたのだがその事で何か気になる事でも
「ああ、あれも私ですよ、他に人もいなかったんで」
「そうなのか?いやーやたらめったらド派手で俺好みな壊し方するからロックンロールな野郎だと思ってたんだ」
「はははは、月まで吹っ飛ばすぞ」
思いのほかどうでもよかった、指で指示して下がらせる
「タイヤは?」
「"砂漠走るタイヤ"じゃわかりませんて、径とか幅とかあるんすから」
シオンがエボの横でしゃがんでタイヤを確認、うはでっけーと感想を漏らしたのちすぐ立ち上がる
「要するにこのアスファルト以外にまるで適さないバリバリサーキット仕様なランエボさんをグラベル対応にしたいんでしょう?なら今日中は無理です」
ね、と隣で見ていた正宗に同意を求め
「サスペンションの調整は諦めていたのだが」
「そういう訳にもいかないでしょう、マリオみたいにジャンプしちゃいますよ。仲間に必要なもんを持ってこさせますんで、皆様は気にせずおくつろぎを」
それで話は決定してしまったらしい、ラファールと同型の携帯電話を高速連打し始めたシオンからみんな背を向けて離れていく。数十秒後にはルカと明梨以外いなくなり、メールを打ち終えたシオンを確認、ついでだから気になる事を聞いてしまおうと思う
「じゃあちょっと先に戻ってて」
「わかったけど、何か用事?」
「それは秘密です」
少し引かれたが明梨も屋内にひっこませる事に成功、ルカとシオンしかいなくなった。セリカに積んでいたジャッキをエボXの下に入れてクランクを回し始めたシオンの隣へ移動する
「ちょっと米軍の兵器開発計画で知りたい事があるんだけど、いいかな」
「んー?ダーパですか?」
「兵器開発っていったらそこしか無いと思うんだけど、公表されてないやつでさ」
「ああなるほど、それなら最重要国家機密レベルから恥ずかしくて公表できなかったネタ企画までわんさかあるんで、モノによっては私の権限でもアクセスできるかもしれねーですが」
再び携帯電話を取り出して、反対側のポケットからもうひとつ携帯電話を出して見せた、衛星電話だ。そのふたつを接続してCIAだかペンタゴンだかのサーバーへ繋ぐ
「プロジェクトサジタリウスっていう名前、少なくとも2年前までは動いてたらしい」
「へいへーい、今検索しますからねー」
タッチパネルを操作しつつもう片方の手でクランクを回し続け、エボXの前輪を浮き上がらせる。それからボンネットを開け新車同然である事を確認
「うっひゃあー…チューニング費だけでベンツ2台くらい買えたよ絶対」
「10万ドルと少しくらい?速いんだろうね」
「一の位を少しでまとめちゃう所に疑問を感じますけど、まぁ現状ではサーキットのみならね、もともとラリーカーなんで足さえ変えればどこでも速いんですが。ただ車重を考えるとタイヤはこまめにデリバリーした方が…」
と、検索が終了したらしい、シオンが携帯電話に注意を向ける。だが満足した結果は得られなかったようだ、露骨に顔をしかめた
「該当ゼロ、射手座計画なんて無いと言ってます」
収穫無し、予想はしていたので驚きはしないが
「ていうかもしかして、ヒナさん絡みです?」
「……知ってるの?」
「まーね、敵を知る前にまず味方ですよ、オルネイズさん」
調査済みか
「お小遣いください」
ごめん全部使った
「本題に戻ります。確かに彼女が関わった事件は実在します、それが射手座計画っていうのなら、データはネットから閲覧できない、スタンドアローン状態にあるパソコンの中」
「最重要ってやつだね」
「これが漏れるってのは考えにくいでしょう、それこそ大統領権限でも無いと」
言った方がいいだろうか
「実在の確認だけならいける?」
「…うーん……」
「ウィルの電話番号と引き換え」
「喜んで調べさせて頂きます」
机に投げ出された携帯電話が着信、ウィルが拾って部屋の外に出ていく。その際廊下にメルがいるのを見つけ、ロイは少し考えて近くにいたシグに話しかけてみる
「気になると思わんか?」
「そうだなー、いつまで経ってもC4爆薬の後継が現れないのは気掛かりではあるけど…」
「誰がいつ貴様の趣味の話をした、隣の部屋で行われてる事だ」
べしべしと壁を叩く。どかんと一発応答があった
「……あのアジトからネズミ一匹も逃がしたはずはない、パソコンからハードディスクを引っこ抜く時間もな」
「ああ、そりゃ確かに」
宣戦布告なんて殊勝なもんもしていないし、と付け加える。であれば考えられるのは、最初からああだったか、制圧した後に抜き取られたか
「そこそこあるんじゃないか?この壁の向こうにそのハードディスクがある可能性は」
またドンと壁を叩く、倍返しで衝撃が返ってきた
「いやいや、もしそうなら一緒にいたルカくんが報告……」
「…………」
「………………」
「……しないかもしれないな」
「そうだ、だからこそこの向こうが気になる」
ばんばんばんと連続で3回、応答はなし。その代わりに廊下で音がしてドアが勢いよく開く
「なんっださっきからアンタはバンバンバンバンと!!」
「鳴らしたくらいで怒るな貴様は最近のキレやすい若者か!!」
騒ぎ始めたロイとヒナ、その隣を通り抜けてウィルが部屋に戻ってきた。ひどく落ち込んだ様子で椅子に座り、携帯電話をテーブルに投げて
一言
「CIAって…怖いな……」




