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「デブリーフィングレポート1〜、無駄に日本人ってのが強調されてる中国製〜。8割がこっちの告知無し発砲に対する抗議なので無視!」
だったら最初から話題に上げるなよという速度でウィルが紙束をゴミ箱にダンクする。発砲許可を出した後はいつ撃とうがこっちの自由というのが主な理由
「はいさっさと次に行こう。安心してくれレポート2はロイが作った」
「ギャング(笑)を殲滅して終わりじゃないの?後始末は依頼側がやるんだし」
「そうなんだがちょっと引っかかってな。アジトにあったパソコンのハードディスクが引っこ抜かれてる件で問い合わせがあった、どうも目的はあれだったみたいだ」
「なら最初からそう言えばいいのに…」
椅子の前半分を浮かせてバランス中のラファールがロイを見
「1人も逃がした覚えは無いんですがね、最初からああだったとしか」
「…まぁいいわ、どうせ内容とは関係無いし深く考えない事にしましょう。重要なのはどうやって西に進むかよ」
デブリーフィングはあっという間に終了、主任務遂行のブリーフィングに移行する。北朝鮮では森と森と村と森しかなかったがここからは森と岩と村と砂だ、行軍難易度は一気に上がる
「正宗、希望のルートとかは?」
「北にはあまり行きたくないな、砂漠越えは故障が頻発する」
ゴビ砂漠はどちらにしろ掠めなければならないのだが、立ち往生するのは御免被りたい。ちょっと砂場を走った程度で壊れる車でないとしても推奨されていないのは事実
「カザフスタンに行くのなら無舗装道路を含めた道に沿って西にずっと進むしかない、どれにしろタイヤの交換が必要だ」
「じゃあそれは調達しておくから、できるだけ北に寄せたルートを考えておいて」
言って携帯電話を掴む、シオンと接触するまであと1時間、かなり近くまで来ているはず
「……タイヤ以外に何か必要なものがある人は?」
「CIA工作員をパシリに使うのかよ、すごいな」
その場にいる全員の要望を聞き、コーラだとかウェットティッシュだとか任務遂行にまったく関係ないものすべてを必要品リストに追加、カンパニーにケンカを売る勢いでいない奴らを探しにかかる
「ヒナとメルは?」
「帰ってきてすぐ隣部屋に引きこもったぞ」
今いるこのボロい宿屋の部屋から廊下に出て、複数借りた部屋のうち右隣をノック。中でドタドタ音が鳴り始めほどなく慌てた様子でヒナが登場
「ななな何何何!?」
「おっと…シオンに買い物してもらおうと思ってるんだけど何か欲しいものある?」
「えっ…えーと…ドクペ!そうドクペを2つ!」
「あれ、そっち側の人間だったっけ?」
「いや別に好きではないんだけどたまにはいいかなーと思…」
「ヒナちゃーん、解析終わったよー」
「わああああああああああああああああああああ!!!!」
バタン!と、勢いよくドアが閉まった
「……何を解析してるの?」
「お前の携帯電話がハッキングされてたりしてな」
「冗談でもそういう事言わないでくれるかしら」
ウィルの冗談にそう返す。何人かが妙に遠い目をし始めたが無視してタッチパネルを操作
「後は…ルカと明梨」
「お散歩デート」
いい度胸だ
セリカに乗った工作員が現れた
不遇な目に遭った挙句撃ち殺された民間人とかちょっとぶいぶい言わせてたら撃ち殺されたなんちゃってヤクザとかを見て気分が滅入っていたのだろう、歩いて気分転換しようと出てきたものの空気は悪いわ反日デモやってるわで調子はまったく上がらず、何か白馬の王子様的なものを欲していた所ではあった。しかし実際に現れたのはトヨタ セリカSS-Ⅱ T231型を乗り回すCIAパラミリタリーオペレーションズオフィサーである。何をトチ狂ったのか後部座席にM4CQBーRアサルトライフルと新品のMG36が裸で投げ出されており、もしスモークガラスでなかったら即通報されているであろう有様だ
もう一度言う
セリカに乗った工作員が現れた
「ぅちぃーっす!」
「……ちーっす」
紛失したMG36とPx4のパーツをシオンに頼んだというのは聞いていたが、まさかこんな派手にやってくるとは思わなかった。まあ乗れよと助手席を畳んできたのでルカと明梨は白いセリカに乗り込み、ライフルをどかして後部座席に座る
「なんで私の周りにはこんな頭おかしい軍人しか集まってこないの…」
「まぁ頭おかしくないとやってられない職種ではある」
スポーツカーなので狭い事に変わりはないのだが、車重1600kgオーバーのランエボX防弾仕様と違いコンパクトにまとめられたライトスポーツモデルだ。まず後部座席専用のドアが無い、そして天井が呆れるほど低い
「お二人はずっと出歩いてたんですか?じゃあ私がパシらされてんのは知らないんですね」
エンジンをひと吹かしして勢いよく発進、当たり前のようにマニュアルである。座席の後ろを見てみれば、炭酸飲料と日用雑貨の入ったレジ袋
「いやもうすごいっすよ!ファミマだと思って入ってよく見たらファミリーマウントって書いてあるし!陳列されてるペットボトルなんかゴーラだとかスプリットだとかもう腹抱えて笑っちゃって!それでもドクペだけは確保したけどね!アメリカ人として!」
東京でよく聞くようなギャル笑いをしながらアクセルを踏み込んだ。小さいエンジンが軽い車体を思い切り引っ張り上げ、今まさに赤に変わろうとする信号を通過する
「日本は好き?」
「好きですね、特にあの変態っぷりが。去年はずっと日本にいましたし、住みづらいとこも確かにありましたけど」
日本製品はハズレが少ないし、と言いながら次の信号を左折、またギリギリ
「実を言うと、明梨さんのトラッキングも何度かやったんですよ」
「とら…?」
「早い話が尾行です。核の存在ってのはもうずっと前から情報があったんですが、日本ほど核にやかましい国もそう無いじゃないですか。それでじっくりこそこそやってたらイワンどもに先を越されたというか」
「じっくりやってなかったら?」
「今回のアメリカとロシアの立場が入れ替わってただけっすねー!」
明梨の顔が引きつったのを見てまたギャル笑いをするシオン。確かに、中国とか朝鮮などという嬉々として核をぶっ放しそうな連中に奪われるくらいなら多少無理してでも確保しようとするだろう。今回は距離の近いロシアが先に痺れを切らしたというだけで
「それにしてもクソめんどくせー構図ですよね、表向き2大国が結託して中国を抑えてるその裏でペンタゴンとクレムリンが殴り合ってんですよ?」
いつの間にそんな事を
「1人の少女が世界を動かしつつありますな」
ニヤニヤしながら三度黄信号を突き抜ける、どうやら信号に嫌われているらしい
「動かしたくなんてないんだけど…」
「ま、意思に関わらずってのは知ってますよ。詳細は聞いてねーですけど、捨てられない場所に隠してあるみたいですし、迷惑かかってるってのは事実ですけど」
ニヤけ面のままチラリとこちらを見て明梨の顔色を確認。思った通りの表情だったらしい、僅かに声を漏らして笑う
「ご心配なさらず、我々軍人は迷惑かけられるのが仕事ですから。ね」
確かに面倒事の最終的な後始末は軍人の仕事だが、ルカは軍人ではないので肩を竦めて首を傾げ
「そりゃPMCに比べりゃ私なんて社畜だよ給料上げろちくしょー」
そんな事言われても




