表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
It Restart
4/106

1-4

まず正門のロックを解除して車ごと中に入る、次に車庫内の扉を鍵を使って開錠、そうしたら牢屋みたいな柵が現れた。横の端末に右手をかざして生体情報を読み取り、ようやく中に入る。まずあったのは消火器、消火栓、火災報知器。少し廊下が続いて、事務所のような紙束だらけの部屋


「やあ皆さん、今日も蟻のように働いてご苦労なこっでってぃぅ!!!!」


待ち構えていたクラッシュキャップの少年にヒナがSL-9を叩き付ける。そのまま流れるようにラックへ銃を預け部屋の奥へ直行


「ただいまとおかえりみたいなもんだ、気にすんな」


言いながらウィルもPx4を壁にかけた。そしてぶっ倒れているクラッシュキャップの首を掴んで持ち上げ


「ロイ。雑務処理と遠距離狙撃担当、あとヘリの操縦もできるな。マヌケな事以外は優秀な奴だ」


それだけ言って捨てた、再び床に転がるクラッシュキャップ


茶、いや栗色の短髪、ウィルやシグよりも一回り小さい、顔の特徴的にロシア人だろうか。クラッシュキャップは鈎十字の入った旧ドイツ軍のもの


「えー……紹介してないのはあと2人か。別の仕事で出払ってたからいるかわかんねえが探してくら」


ウィルが奥へ消えていく、その後「お腹すいた」と言い残してラファールも退散。死ぬほど自由な社風のようだ、この手の職種できっちりされてもそれはそれで困るが、新人に何の説明もせずほったらかすというのはどうなのか


「テキトーに座ってていいと思うよ。あ、ドクペ飲む?」


「いやドクペは……」


残ったメルが椅子を持ってきてくれた、なおさっきまでロイさんが座っていたものである。それから部屋の端にある冷蔵庫を開けて中身を物色、しゃがまずに腰だけ曲げるもんでぶかぶかセーターがあわわわわ、と思ったら短パンはいてた


「宿舎は10畳風呂トイレ付き、食糧消耗品その他もろもろ、一括で買い出してるから冷蔵庫に入ってるもんは早い者勝ちだ。武器庫とシューティングレンジは地下、後でメインアームを渡さないとな」


シグがロイを引き上げて椅子に座らせ、起こそうと頭を叩き始めた。それを見ながらルカも腰掛ける、ほぼ同時に炭酸飲料のペットボトルが机に置かれた


「コーラはうちの一番人気なのです」


言いつつ自分はドクターペッパー、キャップを開けて半分ほど一気に飲んでしまった。中年男性みたいに「ぷっはー!」と息を吐き出す様はさも幸せそうである


せっかく貰ったのでコーラに少々口をつける、甘い


「駄目だな、今日は当たり所が悪かったみたいだ」


いまだ目を覚まさないロイのクラッシュキャップを持ち上げてすぐに戻す。起こすのを諦めてシグも着席、メルにコーラを要求した、が、品切れだという


「……間接、とか大丈夫な方か?」




何 の 話 で ?




「シグさんそんな話ばっかしてたらはた疾さんが食いついてきちゃいますよー?」


聞いた事の無い声がした、真後ろから。直後、両肩に手が乗せられる


「えへ」


頭を上に向けると、まず見えたのは夕日のようなオレンジ



「はじめまして…ですよね?」


「……たぶん」



とりあえず女性、首周りの広いセーターを着ている。手を離して正面に回ってきたのを見ると、ミニスカートとニーソックス、買い物してきたのかレジ袋が2つ、中身は大量のペットボトル。そして何より目立つのは太股まで伸びる長い髪だ、混じり気ひとつ無いオレンジ色、染めている風もない


「総合的な正面戦闘を担当してます、ネアとお呼びください。趣味はゲーム全般、好きな食べ物は牛肉、逆に嫌いなのはエスニック系の臭いやつでー……」



いや、もういい



「ま、ドアを蹴破って敵を撃ちまくるような仕事の時はご一緒させてもらいますんで、よろしくお願いしますね」


「こちらこそ」


「できれば仕事以外でもよろしくお願いできればなーと」


「それはどんな意味でしょう?」


差し出された手を握る。それで満足したのかネアは冷蔵庫に歩み寄り中にペットボトルを入れ始めた、シグが再びコーラを要求して、黒い炭酸水が宙を舞う。すべて入れ終えて、皆と同じく奥へ消えていく



「あいつは怒らせない方がいい」


ペットボトルをキャッチ、中身を一口飲んで、ネアがいなくなったのを見計らってからシグが囁いた


「もう1人の男、正宗ってんだけど、あの2人で部隊戦闘力の半分握ってると思っていいな。尋常じゃない、敵じゃなくてよかったと心底思う」


一気にペットボトルを空にする、キャップを閉め直していまだ目覚めぬロイの頬を一発、起きない


「いつだったか、反政府ゲリラの中隊にキャンプを襲撃された時だ。あいつが見張りだったんだが、俺が起きてくる頃には撃退完了してたってのがあった」


「1個小隊全滅させるのに5分はかけないよねぇー」


というのがシグとメルの意見、ちなみに中隊は約100人、小隊は10人から20人で編成される。基本、個人で立ち向かう相手ではない


「でも困ったらネアちゃん呼べばなんとかしてくれるから楽だよ」


困らないよう行動するのが戦闘の基本だと思うが。しかし緊急時の即応部隊を用意して他の部隊に好き勝手やらせるのは国家でもよく見られる、米軍のレンジャーなとがその類いだ。逃げ道があるのは兵士にとってもやりやすい


「とりあえず死なないようにやろう、仕事はその次でいいからさ。でもまぁ、私より1秒でも長生きしてくれれば何も言う事はないかな」


「…善処します」


「うん、じゃあ晩ごはん食べよ」


言って、本格的にロイを起こしにかかる。まず揺らす、次に揺らす、更に揺らす。目を覚ますまで揺らして揺らして揺らして揺らして揺らして揺らして揺らして揺らして


「んが……ぎゃあああ!?」


椅子から落ちた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ