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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
Nemesis Adrasteia
37/106

5-1

町が燃えている


「何何何このバカ事態っていうか誰こんなバカしたバカは!!」


「バカバカうるせえ取り乱すなとにかく状況確認しろ」


大炎上を起こす町のモールをドカドカ走りながらラファールが米軍司令部と通信を繋げる。火の手の上がっていない所はない、これはもう廃墟決定だ


『こちら米海兵隊ゴールドアクチュアル、指揮系統が打撃を受けたため現時点より私が指揮を取る。我々は2225をもって防衛目標を喪失した、速やかに防衛ラインを放棄し民間人の救助に当たれ。海兵隊各部隊は東に向かい退路を確保しろ』


聞くまでもなく言ってきた。前進をやめ現在地点を確認、最後まで生き残っていた街灯が破裂する


「ゴールドアクチュアル、こちらVLIC所属スリーシックス。ヴィクター2ー6に生存者無し、どっちに行けばいい?」


『スリーシックス、ヴィクター地区に君達以外の友軍はいない、片端から見て回れ。駅前の広場に迎えのヘリを手配する、到着予定は15分後だ』


通信を聞いたウィルがジェスチャーで散開を提案して了承、モールの脇道に消えていく。こんな状況だ、炎上している家は諦めて燃えていない建物を探す


「ロイ、今すぐこのエクストリームかくれんぼに参加して。シグ、回収地点を確保」


『生存者がいるとは思えないんですが?』


「何もしない訳にはいかないでしょ、15分で切り上げて回収地点に集合……あっつぅ…!」


近くでガソリンスタンドが大爆発を起こした、あのあたりはまとめて諦めた方がいい。道端に水道の蛇口を見つけてM4アサルトライフルを数発発砲、立ち上がった噴水を頭からかぶる


『こちらシグ、上から見た分じゃ北半分は駄目だ、南にはまだ燃えてない建物がいくつかある』


「オッケ、そっちに行く」


そもそも何をどうしたらこんなに短時間でここまで燃え広がるのか、Bー52でナパーム弾をばら撒いたってこうはならない。町中にガソリンをまいた様子もなし


「ウィル、今どこにいる?」


『ちっせー病院を見つけて中に入ってみたが電気が止まって窒息死してんのを確認した所だ。医者は棚に潰されてる』


「他に候補は?」


『レストランがひとつある、ただこりゃ閉店寸前だな。一応調べてから回収地点に向かう』


南東は捜索完了、恐らく成果なし。火の海を縫って西へ、まっすぐこっちに向かってきたならロイがもういるはず


『マンションがあるが道が燃えていて近付けない。くそ、サーマルがクソの役にも立たんぞ』


「それは救難ヘリに任せなさい、他の燃えてない所」


『無いですよそんなもの』


この広範囲で生存者ゼロはシャレにならない、この魔法のような大炎上では他の区画も同じ結果だろうが、色々な意味でこれはまずい



『あー…今悲鳴が聞こえたような』


「急行!!」


『もうしてますよ!コンビニの正面にある赤い家屋!』


ボンボンと50BMGが物を吹っ飛ばす音、すぐに赤い家を見つけてドアのなくなった玄関から中に入った。勢いよく燃えている、長居したらこっちがまずい


「ロイ!」


「ああクソ!その腕引っ張って!」


到着するまで連射していたM82を倒壊した柱の下に突き立てて押し上げ、その下に見えている細い腕を指差した。考える前に掴んで引っ張ると、女の子が下から現れた


「えっ…ちょっとこれ生きてんの!?」


「数秒前まで無傷だったんですがね!」


M82を放棄、焼け焦げた少女をロイが担ぐ


これ以上は無駄と判断、回収地点へ


『こちらディスプル2、待ち切れないんで真上まできてやったぜ』


と思ったが15分はとっくにオーバーしていたらしい、ヘリのローターが周囲の火炎を消し去りながら降下してロープを2本落としてきた。掴んで、一気に引き上がる


「おいおいおいおいそりゃ何の冗談だ?」


「いいからまず生きてんのか確認して!」


中央に少女を寝かして、副操縦席に座っていた米兵のハイドレーションを強奪、中身の飲料水を撒き散らす


「ひ…つ…!」


声を漏らした


「生きてる!もっと急いで!」


「やってるさ、だがヘリってのはそう速く飛べないんだよ」


精いっぱい前のめりになって速度を出そうとするブラックホークから下を見る、火の海地獄が広がっていた


「それで結局、何をどうしたらこうなるんだ?」


「さっきまで交戦していたテロ組織から焼夷弾をまいたって宣言があったらしいぞ、ただどうやったかは不明なんだと」


ウィルとパイロットが会話している間に火傷の具合を確認、ほぼ全身だ、ここじゃどうしようもない


「みんな…は…」


「…あー……」


ロイを見る、首を横に振った


「ここで嘘言っても仕方ないでしょう」


「そりゃそうだけど…」


と、言っていたら察してしまったようだ、それきりしゃべらなくなってしまった。少し唸って、パイロットとの会話に参加する


「他に情報は?」


「戦闘じゃ勝ったが結果的には大敗だ、内部にスパイがいたらしい、小包は奪取された。それに未確定だが大統領も…」


「シャリーアとか言ったっけ?相手の名前」


「ああ、イスラム系の集団だ、来週にはまた中東で戦争が始まるだろう。…何にせよ悪かったな、緊急で雇ってこの結果じゃ」


「緊急だからこうなったんだろ?俺らより自分の心配しとけ」


「そうだな…」


ヘリは東へとひた走り


その途中



ギリ、と、歯を食いしばる音がした

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