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アメリカ中央情報局、通称CIA。世界で最も有名な諜報機関ではあるがその業務は情報収集のみに留まらず、流出した機密情報の抹消工作から敵対国指導者の暗殺まで、世間にはとても公表できない裏の仕事を幅広く担うテロリスト寸前の公的機関である。ロシアSVRもほぼ同じ業務を担うが規模、知名度共にまるで比較にならない、世界中にスパイとエージェントをばらまいて地球上で起こった事すべてを把握しているような連中なのだ
「つっても私はただの下っ端なので、私が提供できるのは支援工作とか物資補給とかそういう類のものです。だから『常時プレデター飛ばしとけ』とかそういう無理難題は言わないでくださいな」
缶ジュースのタブを引き起こしながらシオンが言った。CIAは米軍とは違う独立した組織ではあるが、だからといって違う補給線を使用しなければならない理由にはならない。協力関係が続く間だけ、中東に展開する米軍が武器弾薬を送ってくれる手筈だという。あくまでこっそりと、だが
「しっかし、世界の諜報機関ツートップが手を組むなんてのは想像できなかったな」
「それだけ事態は深刻っつーこってす、核爆弾が実在する裏が取れて、しかも敵に狙われてるとなりゃ、米露極秘会談なんて簡単に実現しちまいます。まぁー私個人としちゃこんなクソ忌々しいハニートラップ野郎と協力なんてできることなら遠慮願いたかったんですがねー」
「それには全面的に同意しますよ、ミスクーデターメーカー」
HAHAHAHAと両者が笑い、地雷を踏みつけたシグは引きつり気味の笑み。ひとしきり笑った後にとびきりのメンチ顔を交換、数秒で笑顔に戻った。今のは見なかった事にする
「しかし協力関係といってもそれを望まない人間が相当数いるのも事実、いつまでもつかは予想がつきません。それにこの案件、核自体の処分は別として、"最も手っ取り早い方法"で片付けようとする者もある程度いる」
「……ふん、当然の話だろうな。奴らとしては火種が消えればなんでもいい」
「世間体悪くない?」
「映画で悪役として出てくる組織筆頭格にそれを言うか
ロイが言いつつふんぞり返る、椅子の前脚が浮き上がった
「要するに言いたい事は、貴様らが派遣されてきた理由は僕らの支援などではないという事だろう?」
「わかっているならそうならないようにして頂きたいですね」
アレクセイがにやりと笑い、ヒナはわけわからんとばかりにメルを見て、そのメルは知らなくてよろしいとジェスチャー。仕事の件で話す事はもうない、その時点では何の行動も起きなかったが場の雰囲気が一気に変わる
「ウィルさんってどういう方なんです!?」
「あ、様付けはやめたのね」
血の匂い漂う会合から女子高生の雑談へ、頭がおかしいと思うかもしれないが、精神をコントロールできることは戦場に長く留まる人間にとっては必須項目である
「いつもミニミ担いでるけど戦闘参加するのは少ないよね、裏方って感じ」
「元空軍で陸戦は習ってませんからね、無理に前へ出たら邪魔になると考えてるんでしょう」
「飛行機械の操作はかなりの腕だぞ、初見のものでも無難に動かしてくる」
「クールだよな、ルカくんほどじゃねーけど」
「タバコ臭い」
と、各々が意見を漏らす。しかしシオンが欲しかった情報は無かったらしくうんうん唸ったのち具体的な解答を要求
「もうちょっと何か恋バナ的な話は…」
「無いね」
ガコン、とテーブルに頭突きが入った
「なんだかんだ言って結局は隊長狙い?」
「保護者にしか見えんがな」
浮ついた話は一切無し、国に女を残してきたなどという美談も聞かない
ここまで聞くとただの草食系男子もしくは一途なロマンチスト
「そういう話になると思ってですね、あらかじめ入手しておきましたよ。ズボンのポケットに入ってるものは流石に抜き取れなかったので疾さんのですが」
そうしたら、ネアが何か取り出した。タッチパネル式携帯電話、日本仕様のリンゴ製
「スマートフォン~」
「いや犯罪だろ」
「細かい事は言いなさんな、こいつのメール履歴で何かわかるはずです。さあメルさん、至急こいつのセキュリティをぶち破ってください」
「え」
「構いません、責任は取ります」
ならいいけど…と隅に置いてあるパソコンに向かうメルには聞こえない音量で私以外の誰かが…と呟いていたがもう止まらない、コードでパソコンと携帯電話が接続され、メルの懐から出てきたUSBメモリも追加。直後、ものすごい勢いでキーボードが鳴り始めた
「…何あのインテリ少女」
「頭のリミッター機能が少々緩んでるためにあらゆる分野で平均の遥か上を叩き出すイカれロリです、ハッキングを勧めたのは私ですが。市販のPDA程度なら30秒足らずで丸裸になりますよ」
「30秒は無理だよ、この子のスペックじゃ処理に時間かかっちゃって…」
ガタガタ音を鳴らしながらそう返答し、時折マウス操作を交えながら何か真っ黒な画面と格闘を続け
「そういえば」
それを見ながらヒナが呟いた
「あいつ、ここの前はどこで何してたの?」
という質問をされたネアは数秒黙って、うーんと唸った後僅かな笑み。それから顔を寄せて
「中国の山奥で私が拾ってきました、それ以外は言えません」
「何でよ」
「不幸になります、特にあなたが。ここにいる目的を考えると確実に……」
ガッターーン!!
「あわわわわわわわわわわ……」
すごい音がしたと思ったらメルが椅子から転げ落ちていた。どうもハッキングに成功したらしいのだが、中を見るなり腰を抜かした様子
「どれ」
「見ちゃ駄目ぇぇぇぇ!!」
ロック解除された携帯電話をネアが掴もうとするも、それを掠め取ってヒナへ放り投げる。画面が消えているので恐らく再度ロック済み
「え?え!?」
「元に戻してきて!この小説が発禁になる前に!!」
よくわからないが気迫だけはあったため、ヒナは味方に対して潜入任務を敢行する




