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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
It Restart
3/106

1-3

一足先に準備室まで戻ってきて、まず明梨さんに睨まれた。まぁ予想通りだ、一番目についたのは自分だろうからな


とりあえずドアを閉める、それから少し明梨に近付いて、目測3メートル、このへんがベストだろう。警察と折り合いをつけている人達がやってくるまでどうにか耐えなければ


「やっぱり何もなかったじゃない」


はい来た


「あー、うん、そういう事にしとこうか」


「え?」


「日本は平和だねーーーー」



自分でも思う、ごまかし方が終わっている


口笛でも吹きたい気分になってきたが始まってからまだ数秒、ラファールは死体の処分方法を話し合っている最中だろう。あとどれほどこの空気に耐えなければならないのか、考えたら一緒に処分されたくなってきた


「ずいぶん若い集まりみたいだけど、どうなってるの?違法行為してない?」


「国の認証は受けてるし、義務教育が終わってれば何やっても問題ないはず」


「だとしてもさぁ…他にもあるじゃない、警察とか警備員とか」


そういう一カ所に縛られるような職種では駄目なのだ、自分の目的上求められるのは、世界中を仕事場として、一定の思想に囚われない、直接戦闘を含む様々な戦闘行為を行う事。傭兵も条件には適合するが、PMCと比べると選択の余地はなかった。別に職業に意味があるのではない、仕事を行う場所に意味がある



とは言えないので黙っておく



「……あなた、出身は?」


「ロンドン」


「えっ…イギリ……ずいぶん日本語が達者で……」


よく言われる、前言われたのはドイツだったが。これは別に覚えようと思った訳ではない、物心ついた時から外国人に囲まれて育ったから自然に身についたものである、まさかここまで役立つとは思わなかったが


「と、とにかく…そんな人間として最底辺なことやって、親が悲しまない?人殺しさせるために産んだ訳じゃないでしょう」


「悲しむかな」


「当たり前でしょ、まさか無断?」


「無断と言われれば」


「…いや…あんた……今すぐ帰って謝りなさい…」


「いやそれは無理だ」


は?という顔をされる。帰るのが嫌という事ではない、親が嫌いでもない。ただ、もう帰る場所がないだけ


「5年前のニューヨーク、自爆テロ」


諸々の整理が終わった時点で家ごと手放した。それから4年ほどは世界中を歩き回って、日本に流れ着いたのは数週間前。そのあたりで貯金の底が見え始め、ただぶらついてるだけでは仕方ないと思ってもいたため、どこかに所属する事にしたのだ



とどがつまり、謝る相手はもういない



「っ……ごめんなさい…」


「大丈夫。気にしてないし、そのごめんなさいも聞き慣れた」


明梨はしょんぼりした様子で俯いてしまった、あれだけあった威勢が急になくなる。圧迫されるような空気は嫌だがこれもこれでごめん被りたい、だが筋金入り平和主義者である彼女に対しては何を言っても地雷のような気がする


「……自爆テロ…?」


と、どうするか考えていたら、俯いていた顔を急に上げ


「ニューヨークの自爆テロって……あなたまさか…!」




バスン!




「お疲れしゃんしたー!」


明紫髪のセーター少女がドアをぶち開けてご登場なされた


ビルの屋上に陣取っていたスナイパー組の片割れ、確かメル。かなり小さい印象だったが近くで見るとなおさら小さい、ギリギリ150cmあるかどうかだ。それが現在ドアを開けた体勢のまま仁王立ちし満面の笑みを浮かべている


「ぇ……いや、いやいやちょっと待てちょっと待て!!これは完全に労働基準法違反でしょうよ!!」


何か言おうとしていた明梨だったがあまりの衝撃にキャンセル、ずかずかとメルに歩み寄りおよそ成人には見えないそれを指差した。なお労働基準法において就労が認可されるのは満15歳になった最初の3月31日以後である


「えー?労基法違反じゃないよギリギリだけどー」


「馬鹿な!!」


メルの頭をぽんぽん叩き身長を計測、自分と比べて圧倒的に小さい事を再確認しそれからしゃがみ込む


「ていうかなんでこんな恥ずかしいカッコ……あ、短パンはいてる」


めくるな


その光景を後からやってきたヒナが見て顔を引き攣らせ、横を通り抜けてルカの隣へやってくる。こちらも身長は低いがメルほどではなく、大人びた白いコートを羽織っていたため少なくとも労基法違反には見えなかったようだ、ひとまず明梨はスルーした


ちなみに、やはり目の色は赤と黒の二色


「何…アレ……」


「僕に聞かれましても」


「援助交際…?」


「同性です」


しばらく相棒がセクハラされる様子を観察、廊下の奥からウィルがやってくるのを確認してから椅子に腰掛けた。年齢の割に落ち着いている、メルと足して2で割れば丁度よくなるかもしれない



「どうも、片付けも終わりましたので我々は退散させて頂きます」


「あ……ええそうね、早急に帰って頂戴」


ウィルが明梨へ話しかける、それでようやくメルへのセクハラを中止し立ち上がった。口調は元に戻っている


「ではまた何かあれば。護衛、警備、暗殺、何でもやっていますので、戦闘に関する事ならすべてお任せください」


「任せるか!」


指で撤収のサインを出す。まずヒナが退出し、それに続いてメル。明梨に軽くお辞儀して自分も廊下へ出た、ウィルがドアを閉める


「近いうちに再会しそうだな、なんか臭う」


「理由は?」


「あの子が言う通り、日本でこの規模の警備を頼むってのは異常だ、年々悪化してはいるがな。んでその警備が無駄にならずに済んだ、なんでかは知らんが狙われてんだよ」


まぁお父様には稼がせて貰うかー、と言いつつ歩いていく。歩きながらタバコを取り出して火をつけ、仕事前と同じように煙を吹き上げる


「よっしゃ、家に帰るぞ」


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