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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
偽り栄えたその末路
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28/106

4-1

その時に限って言うならば、人間はただ1人もいなかったように思える


血、死体、血、血、薬莢、血。そう大きくない集落だ、どう考えても全滅だろう。それらすべてを一瞥し、関係ないものとして先に進み始めた。ぴちゃりと地面から音が出る



目当てのモノは井戸の近くにいた、大きいパーカーのフードをかぶって、その上から頭を抱え、地面に跪いている。その傍らに落ちているのはAK47のコピー品、ドラムマガジン装備


「やだ…!私は…!こんなことやりたかった訳じゃ…!!」


声が微かに聞こえる距離で停止、その様をひとしきり眺める。自ら地獄に落ちた少女、題名を付けるならそれ


「…なさ……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!!」


状況確認、戦闘能力推定、予想所要時間…5秒


もう1歩、右足を前に踏み出す


「っ…あああああぁぁぁぁぁ!!!!」


足が地面についてからAKを拾って発砲するまで半秒、回避行動を取りつつ全速を出した所で1秒経過、もう1秒をかけてCQC距離まで接近した。AKからの弾丸がオレンジの髪を数本ちぎっていき、腰からコンバットソードを引き出す。それでAKをぶん殴って吹っ飛ばし切り返して腹部を殴打、累計3秒


「ぁ…!」


ズッ、という鈍い音。すぐに引き抜くと右肩に花が咲いた。赤い液体を引く剣を刺突体勢まで戻して、エネルギーが逃げないようソレの頭をひっ掴む。4秒


悲鳴のような何かを聞き流し、剣の進路を胸部で決定。一切の疑問も逡巡もなくソレに向かって






































「いまさらだけど、VLICって何の略?」


「バイオレンス ライフ インターナショナル カンパニー、国際会社『暴力生活』だ」


「…明梨ちゃんには言わない方がいいね」


平壌から鉄道に忍び込んで数時間、国境を超えたあたりで車掌を札束でぶん殴って客席に移りまた数時間。中華人民共和国首都まで一気に移動する事に成功した。現在正午過ぎ、車両整備場


「このままじゃ遅刻ね」


「いや、向こうからお迎えにきたみたいだぜ」


ウィルが前方を指差して、全員がその先に注目する。整備場入口に黒いバンが停まった所だった、すぐに男性が1人出てきてこつちに手を振りだす


「ラッセくんだ」


体格はルカと同じくらい、黒の短髪に黄色がかった肌は見るからにアジア系で、ジーンズと長袖シャツというラフな格好。VLIC中国支部職員、戦闘要員ではなく幹部クラスだ、日本にもちょくちょく顔を出していた


「まずはお疲れ様。ごめんね、GPSではずっと追ってたんだけど手出しできなくて」


「別にいいわよ、朝鮮相手じゃ何もできないのはわかってたし」


手を差し出されたので軽く握ってすぐ離した。とにかくこんな所で長居はできない、いつの間にか2台となっていたバンに向かう


「ようこそ中国へ。といっても今は外国人狩りが流行中だ、観光はまた今度にした方がいい」


「また?1年に何度流行するのよ」


「別に珍しくはないよラファール君、国民性から来るものだからね」


曇りガラスのバンに男が入り、次いでラファール、ウィル、どうするか迷っていたルカに手招きして明梨を連れてこさせた。残りは全員もう片方へ、何が始まったのか車体が揺れている。リムジンのように向かい合わせになった席の一番奥に明梨を詰め込んで、順にルカ、ウィル、ラファール


「はじめまして葛城明梨さん、俺の事はラッセと。大まかな話は聞いてる、悪いけどもうしばらく付き合わせてもらうよ」


「あ…いえ…こちらこそ、ご迷惑を……」


ドアの近くに座った男に明梨がまったく元気のない返事をし、その場の全員が微妙な顔をする。とにかく出してくれとラッセが運転手に指示してバンが動き出した


「うーん…じゃあまずこの戦争について話をしようか、余計こんがらがるだけかもしれないけど」


車は大通りに入って直進、すぐに路肩で大破する乗用車が見えてきた。日本製だといっても乗っていたのは中国人だろうに


「わかってるだろうけど、この状況にはいつなってもおかしくなかったんだ。領土問題に中国のバブル崩壊、日干しが続く朝鮮、付け加えて日本の政治不安定っぷりを見れば誰だって戦争を予感する」


「戦況はどうなんだ?」


「日本各地で戦闘が発生してるけど、山越えに手間取ったり戦車の重量で橋が落ちたり進軍は呆れるほど遅い。アメリカからの援軍到着前に首都制圧ってのはまずないだろう、来月には中国も戦場になるんじゃないかな」


ほら気にする必要なかったろ、とウィルがルカを見る。軽くあしらって話の続きを促した


「ではなぜ予感できていたのに止められなかったのか。細かい理由は無数にあるけど、一番大きかったのは"利益が認められないから"」


それについては総書記も同じ事を言っていた。餌だけ与えておしまい、マトモに投資しても対価が帰ってこない以上、誰だって被害は最小限に抑えようとするだろう、資本主義とはそういうものだ。それにこの不景気、感情があったとしても動かす金は無い


「助けたいから戦争した、助けたくないから戦争しない、これは俺個人の意見だけど間違ってはいないと思ってる。経済的な話でもそうだ、世界は少なからず戦争を欲していた。これはただの小競り合いじゃ終わらないよ、みんな戦争特需というアメに群がってきてる、10年後には第三次世界大戦なんて呼ばれてるかもしれない」


「…………」


「…まぁとにかく悩むといい、みんなそうやって成長していくんだ。時間もまだまだあるしね」


沈黙する明梨にラッセが言い、車がどこまで進んだのか確認、運転手に急ぐよう指示した。次いで通信機でもう1台にもその旨を


『了解…!うわっと危な……!おい頼むから暴れないでくれ!!』


ラッセ苦笑い、ラファール溜息。後続はとても楽しそうだ


「とにかくゆっくりはしてられない、支部でVIPを待たせてる」


「誰?」


「協力者だよ、イギリスまでのね」

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