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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
そのセイギは誰が為に?
24/106

3-6

「各員、状況報告」


『メル。案内標識のある分岐点で待機中、敵発見回数5、3人を排除』


『ヒナ。森の出口から幹線道路を監視中、敵発見回数12、1人を排除』


「まだ進めそう?」


『道路の真ん中で検問やってる、発砲許可してくれるなら今すぐ前進するけど』


「オッケ、排除して」


少し先に森の出口が見えてくる、暗闇の中ライトもナイトビジョンも無しに獣道を突き進む荒業もようやく終わりかと安堵し、直後にサプレッサー付きの発砲音が微かに聞こえてきた。数秒で収まり、通信機からクリアと声が上がる


「夜明け前には列車に忍び込む段取りじゃなかったかー?」


「しょうがないよ、無理に急いだら傷だらけだ」


森から抜け出て明るくなりつつある空を見、それから前方を確認。装甲車両が道に鎮座しているが人影は無し、手前の交差点で伏せていたメルが立ち上がり車両に近付いて完全なクリアを確認


あったのは都市だった。ここまで森と森と村と森しか見ていなかったためか少々目を疑ってしまい、だがすぐに思い直す。今は21世紀だ、戦前ではない


「とにかく明けきる前に中に入るわよ。ロイとネアはここで待機、ルカ、ウィル、軽装。ヒナとメルは予定通りに」


スリングでぶら下げていたG36Cをロイへ手渡し、代わりにPx4のマガジンを余分に携行する。結局の所、朝鮮半島に墜落してから1発も撃っていない、部隊全体でも100に満たないだろう。いったいどうなっているのか、全員US.SOCOM出身だとでも言うつもりはないだろう


「何年前だか忘れたが、あいつの初陣はイラクで好き勝手やってるテロリストの排除だったな。米軍が暴れてる間に裏から忍び込んでサクッとやっちまう予定だったんだが、結果は失敗、んで1人帰ってこなかった」


こちらの思考を読むようにウィルが言い、自身もミニミを置いて身軽になった。ヒナとメルは別の方向に進み、正宗とシグが装甲車まで前進


「それからこっち、我が隊の死者数はゼロだ。こいつは自慢だが、生き残る事に関してはアメリカの特殊部隊なんかにゃ負けねえ」


「なるほど」


後悔による成長、人命がかかっているならなおさら。どうすれば死ななくて済むか考えた結果、戦場で1発も撃たないという状態に達したのだろう


「そいつとどういう関係だったかは言わなくてもわかって欲しい所だが、まぁ、そんなとこだな。生存性最優先の理由」


言い終えて、ウィルが森から出た


明るくなってしまったなら人目を気にしなくてはならない。歩きながら考えた作戦としては、まず少数人で平壌に入り、カバンか何かを入手した後最集結、武器を隠し持ちつつ列車に忍び込む。難点は大半の武器を分解しなけらばならないのと銀行と店が開くまで待たなければならない事


「悪いが今回も通訳を頼む、護衛はしっかりやるからよ」


「あ…うん…」


ウィル、ルカに続いて明梨も森から出、ラファールが着ていたパーカーを脱いで渡した。フードで顔を隠しつつ出発、装甲車を脇目に都市部へ向かう


とにかく中に入って、時間潰しの意味合いも込めて休憩しなければ、暗中行軍はさすがに疲れた、ごく普通の市民生活を送っていた明梨はそれ以上だろう


「大丈夫?」


「ん…大丈夫」


俯いたまま明梨が答える。駄目そうだ、主に精神面で。民衆に溶け込めそうだが良くない状態だ、休憩がてら何か気分転換になりそうなものを


「平壌名物といえば」


「…………ある事はあるだろうよ」


腐っても首都、昨日の農村みたいな惨状では決してないだろう、餓死者凍死者が出ているのは真実だが。なお平壌で注目するべきものは食なら冷麺、観光なら凱旋門など。ただし普通の海外旅行と違い別途手続きが必要


進んでいくにつれ背の高い建物が増えていく、途中ランニングをするじいさんとすれ違い、奇異の目で見られるも何事もなく通過。公園を見つけてベンチに腰掛けた


ひとまずここで待機


「さっきの続きだけど、ウィルはどうしてこの仕事を?」


「その質問好きだねえ」


時間もあるし隠す必要もないから喋ってもいいが、と、いつの間に取り出したのかタバコをくわえて火をつけた。銘柄はドイツで最もポピュラーなもの


「他の奴らみたいに壮絶な過去がある訳じゃねえよ、友人の彼女を戦場にほったらかして逃げ帰るって情けないマネができなかっただけだ」


朝焼けに煙が舞い上がる、完全に夜は明けた、住民が起き出すにはもうしばらくかかるだろうが


新聞配達が到来、やはり注目されるも特に問題無し。今のところは早起きし過ぎた外国人観光客で通っていた


「ひいじいさんが第一次大戦で活躍した戦闘機乗りでな、学校出てすぐにドイツ空軍に入った。そこで上司に恵まれてりゃ今頃はタイフーン戦闘機でも乗り回してたかもしれんが…まぁいい、友人に勧められてPMC社員になった、VLICフランス支部第499小隊。その中にいたのが日本とフランスのハーフ、天宮疾風、コールサイン"ラファール"。"Rafal"はフランス語で疾風って意味」


「フランス支部?なんでいきなりそんな所に」


「その友人がフランス人だったから。どこに所属するかはかなり自由だよ、うちだって日本支部なのに日本籍は2人しかいないし、君もイギリスに飛ばされてないだろ。求めるのは兵士が能力を発揮できる環境」


「まぁ」


「だがそこにいたのは1ヶ月だ、初陣でヘマして俺は友人を、あいつは恋人を失った。フランスにいる理由はなくなった、ラファールさんは日本に異動して隊を新設、我らが666小隊の誕生だ」


「それでついて来たと」


「ああそうだよ、それだけだ」


フィルター寸前まで吸い切ったタバコを携帯灰皿に投入、時刻を確認して立ち上がった。軽く体操、それからあくびをひとつ


「何の為に、戦い続けるの…?」


「戦う事で人を救えると信じてたアホの意志を失わせないため」


明梨が呟くように言い、ウィルは即答


「すべての兵士があなたたちみたいだったら…戦争なんてなくなるんでしょうね…」


「そりゃ無理だ、残念ながらな」


最後に伸びをして、公園出口へ歩き出す。周りはもう明るい、出歩いていても問題無し


「店の位置確認するぞ、長居はできないんだからな」

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