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「あー、北から戦闘機が来るぞ。あれは中国のフランカ……いや殲撃11…15型か」
「もうフランカーでいいだろ」
操縦席に座るロイがエンジンをかけ、ローターがゆっくり回り始める。その後助手席に立て掛けていたM95対物狙撃銃を取り後ろのシグへ、そこから更にヒナへと渡された
「はいただいま戻りましたよー」
機内に駆け込んできたネア、ウィル、正宗を奥に詰め込み、ドア付近でM95を構える。ボルトを一度前後させて12.7mm弾を装填、銃口を北へ
「で、どうだったんです?」
「俺の口から言うのは勘弁してくれ」
ウィルが中央あたりの座席にどかんと座り、最後部の明梨を一瞬流し見た。それで急に不安になったようで、見るからにそわそわし始める。ほぼ同時、ジェット機のエンジン音
「残りの2人は?もうあんまり時間が無い」
「すぐ来るぞ、少なくともあと1分位内には」
すぐに現れた、それも全力疾走で
「上昇して!早く!」
「え、今上がるのはちょっと…」
「もうすぐ屋敷が吹っ飛ぶ!弾幕張りながら南に撤退して!」
吹っ飛ぶ、と聞いて、不安が一気に確信に変わったのか、明梨が泣きそうな声でルカを見
「ごめん、これしか持ってこれなかった」
腕時計ひとつ、明梨に手渡され、同時にヘリが上昇を開始
「ちょ…ちょっと待って…それってあの、つまり…」
「んー……ごめん」
ジェット音が一気に近付いてきた
「撃ちまくれ!!」
右舷のミニガンにシグが取り付き、補給したての弾丸をぶちまけ始める。現れた中国製パチモンフランカーはヘリごときにミサイルを撃つ気もしなかったのか、接近して機銃を撃ちかけてきた。機体が勢いよく横滑りしだす
「いっぱぁーつ!!」
ヒナのM95が爆音と爆炎をぶちまけつつ12.7mm弾を発射。真横を横切る最中だったフランカーが弾かれるように跳ね、主翼根元から煙を噴き出した
射撃競技やった方がいいんじゃないか、この子
「反転したぞ!諦めてない!」
今ので頭にきたのかフランカーが2回目の攻撃へ。今度はミサイル、警報が絶叫する
「パチもん如きぃッ!!」
フレア発射、緊急回避。酷いGがかかって飛ばされかけるも、警報がやんだのを確認してM95のボルトを前後させ給弾するヒナ。機銃掃射も横に見送って、学習しないフランカーが真横を通り過ぎ
「もいっちょー!!」
コクピットに着弾、錐揉みしながら落ちていった
「上昇!上昇!」
機体が一気に持ち上がる
「ッ…!」
「あっ、見ない方が」
明梨がドア付近に駆け寄った。屋敷はもう遠く、下方に小さく見えるのみ
が、衝撃波はここまで飛んできた
「あ……!」
まず閃光、一拍遅れて轟音。今までずっと住んでいた家が吹っ飛んだのはどんな気分だったろうか、それも、父親と一緒となれば
「やっやだ…!なんで!パパ!!」
「危ない!落ちるって!」
身を乗り出す明梨をルカが押さえ、それでも下へ手を伸ばす。届かないのは知っているだろうに
ルカが思い切り引っ張ってようやく機内へ
「すまない、ってお父さんから。君には生きて貰わないと困る、でないと夜安心して寝れなくなるんだ」
「でも…だって…パパが……」
次第にフェードアウト、やがて動かなくなった
「…なんでこんな世界になっちゃったのか」
それを見た後部座席、目を逸らしながらラファールが呟き
返すようにウィル
「どういう過程でこうなったかは知らないが、まぁ。確かなのは、最初からわかりきってたって事だ」
ヘリは南へ
人と武器と、悲劇を乗せて飛んでいく




