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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
平和を守りすべてを破壊するもの
17/106

2-4

「手っ取り早いじゃないですか」


「それと命令無視は話が別だ」


階段の前では正宗が待っていた。黒眼黒髪、完全な日本人である、平和ボケとはこれ以上ないくらいかけ離れた場所にいるが。隠れる素振りも見せず突っ立ったまま、G36Kの弾倉を交換しながら階段の先を見上げている


「まぁそうでしょうがねぇ、危険要素を限界まで取り除いた戦い方をするのが基本では?」


「独断専行以上に危険なものは無いだろう、お前のような人外でも」


「ほんと失礼なこと言いますね」


話し合いながら、階段の先に向けてM320を発射した。ポンッという軽い音がして40ミリグレネード弾が飛び出し、2階の奥で爆発。それを合図に正宗が階段を駆け上がり始める、追ってネアも2階へ


「交代だ、一人も漏らすな」


1階で正面を担当した正宗が右の通路に消えた。ので、そのまままっすぐ突っ切って、奥の扉に銃撃を喰らわせる。すぐに扉が開いて反撃が飛んできたので横の部屋に入って回避、M320をリロードして、適当にぶっ放した


爆発、部屋から出て前進を再開。その辺りで通信が入ってきた


『ネア!』


「あ…えーとですね、守ったら負ける的な雰囲気だったっていうのが一応の言い訳ですがー」


『は!?何だって!?』


しまった、ヤブヘビだったか


『…あー、もういい。今屋敷の裏まで来たんだけど』


どアホ絶叫が来ると思ったがラファールは堪えた。黒焦げになった扉を越えて会議室みたいな部屋に入る、反対側からやって来た敵兵を出会い頭に撃ち抜いて、弾倉とグレネードを交換





『アメリカ海兵隊の死体があった、刃物でぶった切られてる。よくわかんないけど何かいるわよ、注意して』



ナニかいる



部屋は縦20メートルはある、ネアは階段側の端、間の巨大テーブルを挟んで、奥側の扉は真正面にある


「……ふ…」


そこに現れた、というか、気付いたら立っていた。混じり気のない透き通った銀色の短髪、身長160センチ丁度あたり、性別女性


「ふふ…」


ソレを見て、思わず口元が吊り上がる。装備しているのは日本刀と拳銃、刀は刃渡り80センチ程度のごく普通のもの、拳銃はデザートイーグル50AE、腰のホルスターに入っている


「ははっ…」


半袖のシャツと短パン、ずいぶんラフな格好だ。表情は眠そうな


いや違う、感情が死んでいる



「ハハハはハッ!!!!」



まずG36Cを投げ捨てる、あんなものは邪魔なだけだ。右手でコンバットソードを引き抜いて、左手で予備のナイフを逆手に持つ。床を蹴り飛ばしてテーブルの上を駆け、ソレまで一直線に突撃する


『ネア!?何か起きた!?』


通信は無視、テーブルの端から跳んでコンバットソードを全力で振り抜いた。予備動作無しで動き出した太刀に止められ派手に金属音が鳴る


2回、3回。同じ事を繰り返して、鍔迫り合いの状態で停止。ソレの左手がデザートイーグルに伸び、間髪入れずにナイフで押さえる。お互い、両手を交差させて押し合っている状態


「始めまして、PMC『VLIC』第666小隊所属、ネアと言う者です。お名前、何て言うんですか?お嬢さん」


「…………」


「ふふ…名前を言いたくないのか……もしかして、名乗る名前が無い?」


「…………」


「じゃあそうですね…質問を変えましょう。あなたは"2号"ですか?それとも"3号"?」


「ッ……」


ガキン!と刃が離れる


ソレは後退してはいない、こっちが押し戻されたのだ。テーブルにぶつかる前に停止、思い切り頭を下げてデザートイーグルの銃口から外れる。ボン!という拳銃らしからぬ発砲音


「パワーは合格」


印象の悪い笑みを浮かべているのは自分でもわかっている、だが止まらない。空いた距離を詰め直してコンバットソードを斬り上げ、日本刀と衝突。左手のナイフは胸まで引き寄せて、裏拳のようにガラ空きの腹部を狙う。刺さる前に柄で弾き落とされた


まだ終わらない、叩かれたエネルギーを利用して回転、今度は横から。それも防がれる、が、余裕が無くなった


『おい、何をやってる、逃げられてるぞ』


うるさい少し黙ってろ


「ッ…!」


デザートイーグルをナイフでぶん殴る、50口径が橙色の髪を何本か持って行き、銃自体は吹っ飛ばされて部屋から出ていった。手ぶらになった左手を日本刀に添えすぐさま反撃、あさっての方向に、だが


脇をすり抜けて背後へ、がら空きの背中へコンバットソードを突きつける


「はハッ!」


完全に後ろを取って、全力で突き刺したはずだった。結果は空振り、掠ってすらいない


「……30秒経過」


反撃は軽ーく避けて、両手の刃物を交互に振っていく。1、2、3、4、5回刃が衝突して、同じ数だけソレが後退。6回目は拒否された、後ろに跳んで大きく回避。着地の瞬間に左手のナイフをぶん投げるも、弾かれて戻ってくる



距離が離れて双方が停止。一連の動きで立ち位置が逆転していた、自分は部屋の中央近く、ソレは黒焦げの扉へ



「…………」


「ふ…任務完了、って顔ですね」


顔から感情は感じられないが、何を考えているかは理解できた。


「まぁいいでしょう、今回はこのくらいという事で。どうせまた会うでしょうし」


どうぞお逃げになってください、そうジェスチャーを送る。ソレは無表情のまま日本刀を鞘に収め、ネアに背中を向けた


「…………ミミ」


「…ふふん。ではまたどこかで、ミミさん」



走って行く。すぐに見えなくなった



それを確認してから刃物をしまい、G36Cを。それから、死体を漁って敵の通信機


『…全部隊移動完了、EAー4、撤退しろ。繰り返す、EAー4撤退しろ』


少しいじると、そんな声が聞こえてきた。ふん、と鼻を鳴らす


「…4号目でようやくアレか…無駄の極みだな……」



と、今度は自分の通信機が声を上げ
















『ふぇぇ…途中までは順調だったんですょぅ><でもぉ、ぃきなりマジイミフなあげぽよ女のコが出てきてぇ><』


「もういいからその話し方をやめろ腹が立つ…!」


『いやほんとすいません、こうなる前に突破できたはずなんですよ』


裏口側の階段を駆け上がりながらラファールが通信機に向かって言う。明梨からの情報によれば父の私室は4階、最上階だ。敵の姿は一切無く、嫌な予感しかしないがとにかく行くしかない


「ロイ、目的地についた、ブラックホークを直接ここへ」


『アルファのはどうします?』


「自衛隊にでもくれてやりなさい」


ヘリ1機投げ捨てた、太っ腹である


階段から廊下に出て、一応敵がいない事を確認 。私室まで一気に突っ走る。ウィルと一緒にドアの左右に張り付いて一息、目を合わせて準備完了を確認した


「よし行け」


ラファールがドアを蹴り破る、同時に内部へ突入して敵を探す。やはり撤退済みだ


が、部屋の中央に一人、男が俯いて椅子に座っていた


「……名前なんだっけ?」


「…………葛城父」


「オーケー。お父さんー?生きてますかー?」


ウィルが顔を持ち上げて意識を確認、それから脈を調べる。両方ともあったらしく、苦しそうに呻き声を上げた


「君達は…」


「あんたが雇ったPMCだ、娘さんを助けた後ここまで来た。ここまでは連れてこれなかったから早急に……なんだこれ」


座っている椅子の後ろには頑丈そうな鎖が巻きつけてあった。葛城父をそれで椅子に拘束して、更に椅子自体も動かないようにしてある、最終的な固定は古めかしい南京錠で、これを解除しない限り外れそうにはない


「んだぁ?何を思ってこんなこと…」


ウィルが外そうと試みる。その間に何か違和感を覚え部屋を見回して、至る所に黒い箱型の物体が設置されているのを見つけた。それらすべてがコードで繋がり、部屋の一番奥へ集約されている。同じものを発見したラファールが駆け寄り


「げ…爆弾がある!あと5分!」


「はぁ!?」


これ全部が爆薬とするなら屋敷の半分は吹き飛ぶだろう、とにかく鎖を外そうとウィルが南京錠にミニミを向け発砲、ビクともしない


「うへ…こりゃマスターキーでも無理だ、ふざけたことやりやがる…!」


あと5分で葛城父を開放する術はない、そして5分後にはここは吹き飛ぶ


生きたまま残した理由はこれか


『私のせいですかね?』


「いや違うだろ、3分かそこらで準備できるもんじゃない」


やや焦ったような風にネアが言う、が、どっちにしたってこれはこうなっていただろうし、予定通り慎重な行動を取った場合、ここに辿り着く前にこの爆薬達は起爆を見たはずである。命令違反は事実なのだが、吉と出たのも事実


「おい…娘は無事なのか…!?」


「ああ無事だよ、あんたは無事じゃないがな」


南京錠を蹴り飛ばす。外すのは諦めて、今度は爆弾へ歩み寄った


「おいシグ、タイマーIC使用の時限爆弾をペンチだけで解体する方法を教えろ」


『はっはっはっは、なかなか面白い冗談だ』


すぐにこちらもお手上げ。ああクソとウィルが悪態をつく


「それはもういい…話を聞け」


「なんだよ、娘さんに遺言書のお届け依頼か?」


「その娘をイギリスまで頼む、親戚の家までだ。場所は、娘が知っている」


「…それは核が絡んでる?」


苛立っているウィルを下がらせてラファールが会話を引き継いだ。後ろ手に撤収指示を出し、通信機を操作しながらウィルが部屋から出ていく


「ああ」


「どこにある?」


「核は、娘そのものだ」


「…は?」


それを聞いただけではよくわからなかった。左側に属する平和主義者が核などと言われても、何の例えだとしか言いようがない


だが何の例えでもなかったようで、葛城父は更に話を続ける


「娘の体、心臓付近にある。設計図が入ったデータメモリだ、旧ソ連のツァーリボンバをも超える大型の熱核弾頭と、地球の裏側まで届く大陸弾道弾。昔支援していた企業が開発したものだ」


「なんでそんなモノをそんなとこに」


「本当ならすぐに破棄すべきだった。だが、いずれこの日本に必要になるのではないかと思ってしまったのだ、その圧倒的な抑止力が。だから、私と、妻と、生まれて間もなかった娘の体内に隠し、他のすべての記録を処分した、誰にも見つからないよう保管するために」



話の合間に、ベッドの横にある棚を開けるよう指示される。2段目を開けると、鍵が出てきた



「30秒以上心臓が止まった状態、つまり死ぬとデータが消滅するようになっている。妻はもういないし、私のものももうすぐ吹き飛ぶだろう。後は娘だけ」


「……状況はわかった、具体的にはどうすればいい?」


「メモリを埋めこんだ医師に会って、今度こそデータを処分してくれ。安全に取り外せるのは奴しかいない」


今度は部屋の端に行かされる。そこには金庫がひとつ


「暗証番号は59××だ、まるごと持っていけ。娘を頼む」


「それ、どういう意味かわかってる?」


「当然だ、早く行け!」


「……ルカ、中身を回収。それから…何か形見になりそうなもの」


数秒逡巡、だがすぐにそう指示が飛んだ。鍵と暗証番号を解除して金庫の中にあったものをすべてひっ掴む


それから葛城父に駆け寄り、付けていた腕時計を外す


「言伝か何かは」


「すまない、と、それだけ伝えてくれ」



時間だ、これ以上留まると全員死ぬ



「世界中から狙われることになるだろう。私の事はなんと言おうと構わん、だが娘だけは…!」


部屋から走り去る間際


「絶対に守ってくれ、でないと化けて出るぞ!」


洒落にならない脅しだった

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