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ワールドリファイン  作者: 春ノ嶺
平和を守りすべてを破壊するもの
15/106

2-2

「エレナ・ユースマリット、コールサイン『ヒナ』。主な任務は近~中距離狙撃とステルス行動、それから偵察。アメリカ出身のバラエティ級ドバカだ」


「いやドバカって情報はいらな…」


「無風状態で300メートル以内の静止目標なら命中弾を出すのに1秒足らず、敵勢力圏内を3キロ前進して某国独裁者の脳みそをぶち抜いた事もある。偵察狙撃としては世界トップクラスじゃねえかな。だが残念なことに九九が全部言えない」


火のついたタバコを片手にウィルがやれやれとジェスチャーした。その後ろではラファールが双眼鏡を覗き込みながら通信機をいじりつづけている、たぶん敵の通信を拾おうとしているんだろう


目標まであと200メートル、現在ビルの屋上で休憩している。なぜなら葛城邸内部に朝鮮兵の姿が確認されたからで、ネアが1人で偵察行動中


「つまり君が聞きたいのはこうだ、"なんで撃たれても血が出ないのか"」


「まぁ」


ロシアの湿原でアメリカ映画も真っ青の乱射戦をやっていた時だ。あの時ヒナは確実に被弾していた、だが金属音がしただけで何の異変もないときている。メルには止められたが、どうも頭から離れてくれない


「答えは簡単だ、生身の身体じゃないから」


「義手?」


「ああ、両手両足、それから左目、火事で全部持ってかれた。現地で作戦行動中だったからよく覚えてる、そりゃ酷いもんだったさ」


助けるのが数秒遅かったら生存者0になってたからな、そう付け足された。嫌な事を思い出させてしまったようで、ウィルは俯きながら煙を吐き出す


「アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)が試作した軍用のやつを装備してる、通常出力0.12馬力、瞬間最大出力1.8馬力、義眼は最大望遠12倍、サーマル、ナイトビジョン機能付き、本人ができない弾道計算も全部こいつが受け持ってる」


「なんでそんなものを」


「そりゃ俺の口からは言えないな、本人に聞いてくれ」


数回だけ吸ってまだ長いままのタバコを携帯灰皿に投入、ラファールの横に移動した。遠方しか見ていないラファールの代わりに周囲を見回し、誰もいない事を確認


「戦場にいる若者ってのは、一般社会に適合できなくなった奴らばっかなんだ、みんな何かしらトラウマ抱えてる。お前もそうだろ?ルカ・オルネイズ」


「……そっちは?」


「俺はこいつのお守り」


「は?」


何言ってんだこのアホとでも言いたそうにラファールがウィルを見て、ほぼ同時、妙にビジュアル系な男の着信音


「なっ…くそ変えとくの忘れた…!」


「早く出ろ腐女子」


「うるっさい!!」


着信音云々の前に戦場で音を出すのはどうかと思ったが気にせずラファールは応答、双眼鏡をウィルに渡し携帯電話を耳に当てながら離れていく。ウィルが代わりに監視を始めた


「きっと自衛隊に補給断られたんだ、こりゃ仕事増えるぞ」


朝鮮軍の相手で手一杯なのにPMCの補給要請など受けていられないという事か。とはいえ諦める訳にもいかず、この地域の戦闘を手助けしてその見返りに補給を要求するという形にならざるを得ない。例えば敵の砲撃を止めるとか


考えていると、今度は自分の携帯電話が震え出した。取り出して画面を見てみると、表示されていた名前は『ロイ』


「もしもし」


『貴様、社交性はあるか?』


「は?」


『女性経験はどうだ、彼女を作った事は』


「ちょっと待って、状況が飲み込めない」


いきなり何を言い出すのかこのクラッシュキャップは、出会い系でもやるのか


『いいかこの僕がわざわざ電話してやっているのだ、その点をふまえて次の問題にありがたく解答しろ。いいな』


「ものすごい上から目線なのが気になるけど、問題って?」


『あーその……葛城明梨アストラエアがひどく落ち込んでいるのだがどう声をかければいいかわからんのだ…』



ああこの人めっちゃ優しい、言われた瞬間そう思った



「幸運を」


『おい待て貴様!どれだけ僕が気まずいと思』


通話終了、携帯電話をしまう。ラファールの方も話はまとまったようで、置いていたM4を拾って集合を指示


「屋敷の近くに敵の榴弾砲があるから、ついでにそれを片付ける。自衛隊からのお達しよ、でないと補給が受けられない」


ほらな、ウィルが言った。場所はここから400メートル、屋敷からは100メートル程度だ。本当についで、という感じである。ラファールが通信機を再調整してネアと繋ぎ、その旨を報告する


『こっちは今目的地正面まで来てます、敵の数は…外に出てるのだけで10人以上、なお正宗さんが近くまで来てます。どうしましょう?』


「オッケー、合流後5分待って、それから外周を制圧して。見つからないようにね」


『はいりょーかい』


非常階段を使ってビルを降りる。敵がいないのは確認済みだが、念のため警戒しつつ


榴弾砲はここから幹線道路をまっすぐ行った所、しかしそんな馬鹿正直に突っ込む事はできない、道を外れて隠れながら移動する


「民間人に注意しろ、数時間で避難しきれる訳がねえ、絶対取り残されてる」


「そういうフラグ立てるような事言わないでくれない?これ以上仕事増やす気無いわよ」


「……フラグて何?手榴弾?」


「…………なんでもない」

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