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要するに、自分が入ってみたかったのだ
自らチケットを買ったはいいものの本当に人生初の遊園地だったらしく、表情には出さないが何が何だかわからなそうにしているルカをひとまずコーヒーカップに誘導。ファミリーやカップルがキャーキャー騒いでいるのを見て絶叫系と勘違いしたらしい、その叫びは絶叫ではなくアイドルのライブ会場で起こる黄色い声と同じなのだが、顔を強張らせながらルカは乗り込み、降りる頃にはなんだこんなもんかと更に誤解した顔になっていた。それを見たら少しばかり嗜虐心を刺激されてしまい、丁度良く目の前にフリーフォールとジェットコースターがあったのも相まって、墜落なら慣れてるから大丈夫だろうと説明をせず座らせる
30分後
「遊園地…恐ろしい所だ……」
「ごめん…ごめんね……」
地表に達した後どうなるかを知っているからこそだかなんだか、どうやら慣れるどころかトラウマとなっていたようだ、ベンチに座り地面とにらめっこし出したルカにソフトクリームを持たせ落ち着かせる
「こういうの興味あったんだ?」
「どうだろう…縁が無かったのは確かだけど…」
そりゃあ金持ちも金持ちだ、いかに先進国イギリスとはいえルカの父には敵も多かった。誘拐されたくなければこういう大衆的な場所は避ける、これ鉄則である
「ここ、っていうかこの土地自体に思い入れがあって」
「土地?」
ロンドンの外側の方、すぐ近くには金持ちが住んでそうな高級住宅地、その奥には更に金持ちが住んでそうな邸宅、宮殿が並ぶ。遊園地は面積約46万平方メートル、東京ドーム10個程度で
「ここに家があったんだ」
畳に換算すると1万4千畳を僅かに下回る
「取り壊されたっていうのは聞いてたけどまさかこんな事になってるとは」
「…………待って」
「まぁ面影は残ってるかな、あそこの花壇とか」
「待って!」
ウィルやらメルやらにさんざっぱらネタにされた自らの邸宅を思い出してみる、4階建ての館に2階建ての別館が添えられており、周囲を広い庭園が囲っている。ただし広いといっても常識的な広さであり、テレビで紹介されたって『わー広いなー』で済んでしまう程度
「どこからどこまで!?」
「端から端まで」
絶句である
「仕事場でもあったから、警備員含めて200人は住んでたけど。建物はひとつも残ってないね」
「あ…えっと…敷地内に司令部が?」
「そう」
司令部、つまり株価を監視する巨大モニターがあったり電話機が整然と並んでいる場所だ。24時間動き続けるこれが敷地内にあるという事は、24時間営業のカフェテリアやショッピングマートも敷地内に建てる必要がある訳で
この男、外に出てくる必要はあったのだろうか
「誰だったのかわからないけど、考える事をやめるなって言われたんだ。家に引きこもって淡々と生きるのも嫌だったし」
「ふうん……うん?」
考えるのをやめるな
ついさっき似たようなのを聞いたような
「君はどうだった?この1ヶ月で色々考えたと思うけど」
「あ…うん。戦争に関係するもの全てが悪じゃないっていうのはわかった」
どんな状況で起こった戦争だろうと根源には経済的理由があって正義もへったくれもない殺し合いが行われていると思っていた、その通りだったものもかつてあったろう。だが実際に現場レベルで見てみると、到底一言で片付けられるものではなかった
皆が戦争したがっている訳ではない、しなくて済むならその方がいいとも思っている。しかし万が一の場合、力が無ければ何も守れない。嫌なのは平和ではない、武器も兵器も投げ出して丸腰になった後が怖いのだ。だから安心感を得る為に軍を作る、力で自分を守ろうとする
「ちゃんとした理由があって、欲しいものはみんな同じで、それも正しい考え方だって理解できた。でも…ごめん」
それでも、それが争わなければ維持できないものなら
「その”平和”は、私が欲しがってるものとは違うんだ……」
「……わかるよ、すごくね」
ずっと手に持っていたソフトクリームを片付けて、ルカはベンチから立ち上がった。最後に園内をざっと見渡して、出口へと体を向ける
「帰ろう、また最初から考え直せばいい」
「うん…」
追って立ち上がる
そうだ、諦める事はない、何度だって次があるのだから
そうすればいつかは、求めたものに届くだろう




