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「工場に協力してもらってフロントを全面改装、その上で86のFA20エンジンを叩き込む、これしかない!」
「は?」
「しょうがないでしょう!セリカもエリーゼもタマが残ってないんすよ!」
「そうじゃない!」
前回乗った時に比べ格段に乗り心地の悪くなったシオンのセリカはエンジン音とは別にキーンという高音を発しており、何らかの無茶をしたのは間違いない。実際にオーナー自身がエンジン換装を本気で検討しているあたり先が長くはないのだろう。やけにぎこちない運転で交差点を左に曲がり、観覧車が視界に入る。その直後シオンがアクセル操作ミス、強烈な加速Gを受け後頭部をシートへ叩きつけた
「いだい!!」
「おっと失礼、やっぱボルトオンは駄目だ」
「……車はいいから、さっきの話」
遊園地敷地の端っこに差し掛かる。柵が新しい、最近できた施設のようだ
「アメリカ万歳以外が許されない立場のもんにそんなこと聞きますか」
「それでいいから」
「なるほど。ではお話をひとつ」
ネズミの国と同じくらいあるのではないか、入口はまだ見えない
「アメリカ発の戦争が平和を阻害してるって言われますよね」
「うん」
「まったくその通り」
側面のガラスに頭を叩きつける、ガンッといい音が鳴った
「アメリカ万歳が何だって…?」
「まぁまぁ続きを聞きなさいな」
ガラスが若干汚れた、ハンカチで拭き取る。しかし車内が狭い、狭いからこそ速いのだろうが
「政府のお偉方が何考えてんのかなんて知ったこっちゃありませんが、私達現場の兵士は、そこに苦しんでる人がいるから戦争に行くんです。秩序がどうとか警察がなんだとかそんなのはどうでもいい、今すぐ助けに行かないと道端のアリんこみたいに殺し散らかされる人達を放っておけないからこそ私達は平和を阻害し続ける。戦争根絶を達成する為にそんな理不尽を見逃せというのなら、我々は今すぐにでも世界に牙を剥く、そんな平和に意味は無いと声を張り上げる」
外周をずっと回ってようやく入口を見つける、更にシオンは別の何かも見つけたようで僅かに笑い声を上げた。ウインカー点灯、路肩に停める姿勢を見せる
「なんて、B級映画の主人公みたいな言い回しですけど私がここにいる理由はそれです。元々は虐げられる側の人間でしたから、人を助ける行為をそれしか知らない」
争い事を無くした程度じゃ認めない、と
要はそう言いたいらしい
「虐げって、軍に救助されたの?紛争地帯にいたとか?」
「拾われたっていうのが正しいですかね。ミズーリ州のセントルイスに住んでたんですが
……まぁ普通に就職できてたらそうしてたんですけど」
ミズーリとはアメリカの州だ、つまりシオンは正真正銘のアメリカ人で紛争などとは無関係。失業率はかなり悪い数値にあるが後進国ほどではない、就職しようと思えばどうにでもなったろう
だがそれは真っ当な家に住んでいる者の話で
セントルイスにはアメリカ屈指のスラム街があるという事実
「雑草食って生き繋いでるゴミくずなんて、どこも雇いたがらないんですよね」
自嘲気味に笑いながら、”何かぼーっと遊園地を眺めて立ち尽くす男性”の横に、シオンはセリカを停車させた




