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「君の場合、日本の左翼団体が何を持って平和と定義するかによるだろ、全人類の過半数が戦争からも飢餓からも関係のない生活を送ってればいいってんなら既に平和は達成されてる」
「そんな多数決的なものじゃない」
「だろうな、そもそも平和の中にある日本人が平和って口にした時は”すべての兵器が消え去った世界”ってやつを指す」
名前のわからないセダン車はウィルの運転で病院に向かっていく。イギリス製なのかと思ったが、純粋なイギリス車はジャガー以外絶滅したらしい
「わからんね。日本人は憲法9条を広めればいいと考えてるが、俺らみたいな外人から見りゃ警察予備隊設立の時点で完全に破綻してるし、最初に作らせたアメリカ人も『なんで改正しないんだ』って感じだ」
「でも、今みたいな平和モドキを核の傘で守っていくのもおかしいと思わない?これが今できる最善手だって言っても、結局は核兵器を持ってるかどうかで分けられてる訳で、先進国がぬくぬくと暮らす為の代償はいつも後進国が払ってる」
「それは認めるが」
話をしながらウィルはハンドルを左に回す。視界も回って、道の先に病院が現れた
「君の理想を実現させる場合、世界の枠組み自体を変える必要がある。いわゆる秩序と呼ばれるもんだが、これがとにかく変わりたがらない」
「知ってる」
「兵器を無くすにしても国境を無くすにしても想像すらできない奴もいる。それに、兵器を扱う兵士は国を守るために戦争に行くんだ、大半は自分の存在意義を否定されたと思うだろう」
そうじゃないのに……と呟きながら頭を抱える。うんうん唸ること数秒、車は目的地に到着した
「まぁ俺が言えるのはここまでだ、どっちかってーと戦って人助けするのを良しとする人間だからな。他の奴にも聞いてみな、これだけ変人が揃ってんだ、面白い事言うのもいるだろ」
「ん……ありがと」
停車した車から降りる、病院の目の前。単独行動は久しぶりで、もはや違和感すら覚える
ドアを閉める直前
「……ありがとう、か…」
微かにそんな呟きが聞こえた




