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ぼく的なつのスゴシカタ

作者: 藍川秋

ある暑い夏の日。

その日ぼくはクーラーのきいた自分の部屋で高校野球児達の、『観ているだけで暑くなる熱い試合』をテレビで観たあと、冷凍庫にアイスが入っていないことに気付き買い出しに出掛けた。近くの雑木林で蝉が忙しく鳴いていて、陽射しが眩しく肌に嫌なジワジワとした感覚を覚えた。遠くには逃げ水なんかが見えちゃってアスファルトの上はもうバーベキューの鉄板状態。外に出たことを少し後悔していた頃にはもう家からコンビニまでの道のりの半分は来てしまっていた。

コンビニの中は冷房がぼくの部屋以上にガンガンきいていて軽い冷蔵庫状態。長居してしまうときっとアイスを食べる気が失せてしまうだろう。だからぼくは早急にアイスを選ぶためにボックスの前に立った。しかしぼくの足はボックスを通り越し、レジに向かっていた。

【ソフトクリームあります】


ぼくはコンビニを出て帰路に立つ。向こうの山のてっぺんには夏らしく夏らしい縦長で真っ白な入道雲。そしてぼくの右手にはあの入道雲によく似た真っ白なソフトクリームのバニラ味。しかしこの暑さだ。コーンの下からは溶けた液体状のソフトクリームが滴る。慌ててコーンの下を口に持ってくると結局啜って食べる形になってしまった。こんなことならやっぱりアイスを二、三個買うんだった。どうせ家に帰っても暇なだけだ。町の小さな図書館に足が向かう。なるべく民家や林の日陰を通り、最短距離で図書館に辿り着いた。コンビニよりはきいていない冷房。それでも適度に過ごしやすい空間だ。夏の特設ホラーコーナーと歴史・社会コーナーの棚の間を通り、文学コーナーの棚の裏にぼくのお気に入りの場所はある。モダンな古いカウチソファと小さなテーブル。ソファにはぼくが横になっても十分なスペースがあるし、冷房もきいて昼寝にはもってこいだ。夕方の帰省放送が童謡の歌と共に流れている音でぼくは目が覚めた。日を避ける為に下げられたブラインドの隙間から黄昏の色が差し込んだ。ぼくは眩しくて目を細め、僅かに開いたブラインドを完全に閉じた。

外に出ると昼間の暑さが嘘のような涼しさ。山のてっぺんにあった入道雲は歪に形を変えて夕方の色を受けて茜色に染まっていた。ぼくの真上には綺麗に鱗雲が並んでいるものだから明日は久しぶりに空がぐずるかも知れない。家に着くまでの道のりは来た時よりもゆったりとした時間が流れ、ひぐらしの鳴き声が遠く響いた。夕方の長く伸びた電柱の影を追えば、烏たちが電線に音譜帯のようにとまっていた。辺りはもう薄暗く、遠くにぼくの家の灯が見えた。今日の夕飯はなんだろう。ぼく的には冷やし中華がいい。ぼくは夕方聞いた童謡を鼻唄まじりに歌いながら歩調を早めた。

あ、朝に頼まれてた買い物忘れてた。

終わり

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