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008




 オルハリコン・ゴーレムを倒して2日が経ち、アリシアとリューは再びセイビスの屋敷を訪れていた。




「許可?」

「うん、この町の、普通は入っちゃいけない所…例えば、時計台とか、そいう所に入る許可が欲しいんです」と、アリシアは言った。

「ふむ…。理由を聞いても?」と、セイビスは尤もな疑問を口にした。

「実は…」

 アリシアは自分の記憶が無いこと、どこかにある自分の覚えている風景を探していることをセイビスに話した。

「そういうことか…。それなら、別に構わない。本より、お前達にはオルハリコン・ゴーレムを倒した礼がある。気が済むまで見てこい」

「!ありがとう!!」

 アリシアは時計台のカギを受け取ると、礼を言ってすぐに外に駆け出て行った。

「?お前は行かないのか?」と、ソファーに座っているリューに声をかけた。

「まだ決着が付いてない」

 リューのそのセリフにセイビスはため息をついた。

「お前は確かに強い。しかし、今のままでは、私には一生勝つことはできない」

「…何だと?」

「気付いていない訳ではなかろう?」

「…っつ!!」

「私には未だもう一段上がある…。まぁ、ある程度戦いに身を置く者なら、だれでも気が付くだろうが」

「…」

「強くなれ、リュー・ハイム。誰よりも強くなり、私に勝って見せよ」

 そう言うと、セイビスは部屋を出て行った。





 部屋には、リューだけが残った。





 セイビスの館を出て、アイリスはまず、町の中心街へ向かった。もしも、自分がこの町を訪れているのなら、必ずこの中心街を通ることになるからだ。自分の記憶に引っかかる物はないか、目を皿にして見渡す。

「………。」

 アリシアの目の前には屋台があった。

「…じゅるり」

 はっ、と自分の目的を思い出すアリシア。屋台をチラチラ見つつ、思い出すことも無かったのでその場を後にした。北、東、南、西、と順番に回る。何も思い出すことなく、ついに最後の時計台のみとなった。

 回るのに時間がかかったので、日は沈みかけ、空は茜色に染まっていた。

「はぁ、ここで最後かぁ。何か思い出せるといいんだけど…」

 そう言って時計台のカギを差し込み、扉を開けようとすると、後ろから声をかけられた。

「そこは立ち入り禁止じゃよ、お嬢ちゃん」

 振り返るとそこには、白いひげを蓄えた老人が立っていた。





「なるほどのぅ。自分の記憶を探しに旅をしておるのか」

「うん。って言っても、まだこの町が最初なんだけどね」

 二人は時計台の階段を上がっていた。老人は時計台の整備士らしく、60年の間ずっとこの時計台の世話をしていたらしい。

 アイリスは自分のような子供がこの町にいなかったか聞いた。

「そうじゃのぅ。お嬢ちゃんのような髪と瞳の色をしておったら、さすがに覚えてそうじゃが…」

「そう…ですか」

 気落ちするアリシア。

「すまんかったの。力になれんくて」

「そんな!お爺さんは悪くない!」

アリシアの言葉に老人は笑みをこぼした。

「ありがとのぅ。おや、もうすぐ頂上じゃの」

 会話をしていたら、頂上に着いたようだった。鉄製の扉が、ギギィ、と音を立てて開く。

 



 そこには、町を東西南北、どの方向にも見れるテラスがあった。南には、アリシアとリューが通ったケリアの森が見えた。

「わぁ、キレイ!!」

 遠くまで見渡せる景色に、歓声を上げるアリシア。老人は喜ぶアリシアを見てニコニコ笑いながら時計台の整備をする。しばらく歓声を上げていたアリシアだが、ある景色を見て黙り込んだ。その様子が気になり、老人は声をかける。

「どうかしたのかの、お嬢ちゃん」

「うん…。何だか、あの景色に見覚えがあるような、ないような…」

 アリシアの指差すほうを見て、老人は驚いた。



 何故なら――――




 その方角は、東。凶暴な魔獣が蠢き、古代から獣人が住むと言われる山脈。

 ゲリオ山脈の方角だったからだ。





                  ――――次の日――――




「本当に着いて来るの?」

「あぁ、お前に着いて行くと面白いことになりそうだからな」

 朝、東の門の前には二人の姿があった。早朝のせいか、周りに人気はない。アリシアの言葉にリューはニヤリと、笑って言った。

「進路は、ゲリオ山脈を通ってルーベンでいいんだな?」

「うん。それじゃぁ、出発しようか!」

 二人は、ゲリオ山脈へと一歩踏み出した。



 この二人の出会いが、後々、大陸中を巻き込む大きな事件に発展することになるのを、






 二人はもちろん、だれも知ることはなかったのである――――――――。


 一章が終了しましたw



 次は第二章になります。



   『神獣の森』


こうご期待下さいw

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