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血と鉄と敵

「これがオレの錬金術であり、オレの得物――――『血染めの淑女(ブラッディ・マリー)だ』

 真紅に染まった服から、力が湧いてくるのがわかる。オレだけの力であり、自身を表す証明。オレは手にしたナイフをセイビスに向ける。

 そして、そのまま奴に向かって全力で駆け抜けた。セイビスは、オレが突っ込んできたことに驚いた表情を見せながらも迎撃する。

 ガキィン!!

 『赤兎馬』とナイフが衝突する。一瞬火花が飛び散って、ナイフはすぐにヒビが入り、粉々になってしまうが、オレは気にしない。

 そのまま突っ込む!


 セイビスはそのまま『赤兎馬』を振り下ろした。やはり、コイツは見込み違いだったかと。しかし、その瞬間。明確にリューが笑ったのが目に映った。






 血飛沫が、宙に舞った。





 アリシアはその光景に目が奪われていた。何故なら―――――



 傷を負っているのがセイビスで。




 リューが平然として立っていたからだ。


「まさか私に傷を負わせるとは」

 セイビスはポツリと声を漏らした。

「何だよ、そんなに意外か?」

 オレは苦笑を漏らしながら距離をとった。

「正直な」

 セイビスの口ぶりからして完全に予想外だったのだろう。まぁ、手ぶらで血まみれになりながら突っ込んで来たら誰でも相手が自棄になったかと思うだろう。自分でもそう思う。

「面白い。もっとお前と戦いたくなった」

「そうか、オレもだ」

ニヤリと笑ってオレとセイビスは再び交差した。





 ガッ、ギン、ジャリ、ゴン!!





 何合も刃を交える。刃がぶつかる度にオレ達の傷も増えていく。

 ぶつかり、いなし、交差する。お互いの体の空いたスペースに刃をねじ込ませる。

 オレは縦に振り下ろされる斬撃を、回転することで避け、回転の勢いを利用し、胴回し回転蹴りを放つ。

 セイビスは『赤兎馬』の側面で受け止め、薙ぎ払いの斬撃。

 オレはそれを裾から取り出した両手のナイフを交差して受け止める。

 オレは受け止めきれなかった斬撃で、セイビスはどこで受けたか分からない攻撃で血を流す。

 お互いが離れた時に、セイビスが口を開いた。

「なるほど、今までの不可視の攻撃、そして本当のお前の錬金術は――その服装自体。錬金具か」

「チッ、ばれたか」

「しかし、それは本当に錬金具か?反応光がしない錬金術など、聞いたことがない」




 錬金具――――。


 錬金術は本来、実に面倒な工程を必要とする。それをショートカットするためにアルケニウムが発明されたのだが、錬金具はその発展型だ。

 特定の道具にアルケニウムを仕込むことによって、より円滑に錬金術を発動させることができる。アリシアの手甲や、盗賊の長が使っていたナイフがいい例だ。

 しかし、このどちらもが錬金術が発動した時、必ず反応光がしていた。そう、セイビスが言うとうり、絶対(、、)に起こることなのだ。


「オレの錬金術は、鉄系。鉄を利用する」

「どこに鉄がある?お前は取り出す素振りもなっかたし、身に着けている様子もない」

「あるだろ、そこら中に。ほら、今現在、オレたちの体にも付いているだろ?」

「――――!?血か(、、)!!」

「その通り」

 その通り。血。血には鉄分が混じっている。オレの血染めの淑女は血中の鉄分を錬成することでナイフを作ることができる。

「私の傷もほとんどはナイフでは無く、服に触れたから(、、、、、、)ついた、という訳か。しかし、それだとますますおかしい。反応光はいつ起こっていた?」

「忘れたのか?あったじゃねぇか、一度だけ、反応光が」

「!あのときか!!」

 さらに種明かしをすると、あと少しで『赤兎馬』の刃がリューに届かんとした時。反応光の後、服の色が変わった時だ。

「こいつはじゃじゃ馬でな。血が一定量まで溜まらないと錬金術が発動しない。その代り、一度発動したらいつでも錬金術が使える。反応光無しでな」

「成る程、合点がいった。なかなかも一品だな」

 話は終わり、と『赤兎馬』を正眼の位置に構える。オレも前傾の姿勢で集中する。お互い、少なからず出血している。これが最後の交錯だと理解していた。



 その瞬間は、唐突に訪れた。突如、地面が揺れ、地面が盛り上がる。ボコボコッと地面が裂け、そこから身長5メートルはあろうかという岩肌を持つ巨人が現れた。





『ゴギャアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!!!!!』




 咆哮を上げ、二人に向かって襲いかかる。






「コイツは…!」

「知ってんのか?」

「ああ、コイツは、私がまだ旅人で、この町の町長のなることになった、魔獣の大群の中、唯一仕留められなかった奴で、コイツは、ゴーレムの中でも一際固い外殻を持つ、『オルハリコン・ゴーレム』だ」




 セイビスは魔獣を睨みながら、告げた。





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