016 後編
みなさん、こんにちは。(夜に見ている人はこんばんは)
ここ最近用事が山積していてまったく投稿することができませんでした…。
楽しみにいていた方々、本当にごめんなさい!!
地獄から帰ってきたよ~!!
と、いうことで。
今回からペースはやや戻ると思います。というか、戻します。
あ、それはそうと、この小説のPVが1000を超えました!
本当にありがとうございます!!
少ないとかしょぼいとか言わないで!!
それと、もし良ければ感想とか頂けたら幸いです。
前書きが長ーよ!と、思われるかもしれませんが、大丈夫!
それでは、どうぞ!
天井を(入ってきた三人にとっては地面を)突き破ってきた三人。
リュー、ムゥ、そして爪族のリーダー。その三人をエスラは睨みつけ、言った。
「まさかその二人がまだ生きているとはね…。あんたが助けたのかい、ラトーさん?」
ラトーはエスラの疑問に頷いて答えた。
「ああ、その通りだ…。牙族の誘拐は内部の者が関わっているのではないかと薄々思っていたが、まさか君だとは思わなかったよ、エスラ君。いったい、何が君をそうさせた?」
ラトーのその問いに、エスラは冷笑を返した。
「何が?ははっ、決まってるじゃないか。何で俺たち獣人族は、人間なんかに隷属している?俺たちは人間より強く、誇りを持って生きてきた。なのに、森の外に出れば獣人族は人間より格下に見られる。そのことに、何故憤りを覚えない!!?俺たちは人間より優れた種族だ!!なのに奴隷のように扱われているのは何故だ!!?こんなの、間違っている。だから、間違いは正さなければならない。その邪魔をするなら…」
エスラが声を荒げるにつげ、徐々に声がくぐもったものに変わっていく。
メリメリッ
エスラの肉体が隆起し、人の形を失ってゆく。
「キサマラ全員皆殺しだぁァァあああアアあアぁぁぁ!!!!」
その姿を、獣えと変えた。
獣人族は、見た目は人間となんら変わらない。しかし、獣人族が〝獣人〟と言われるには、勿論理由がある。神話では森に住みついた人々は獣の姿になっていったという。
そう、獣人族はその名の通り、獣になれるのだ。
「こいつは…初めて見たな。獣人族が獣になるのは」
リューは目の前の光景を興味深そうに眺めた。
「何のんきに眺めてんのよ、バカー!」
アリシアの怒った声が部屋に響く。
「さあ、戦闘開始だ…!!」
ラトーが一歩踏み出し、「フンッ!!」と全身に力を込める。ビリビリッ!!と服の破ける音と、筋肉が盛り上がり、太い腕がさらに太くなる。
エスラは筋肉が増えるも均整のとれたスマートな姿。四つん這いの姿からは肉に餓えた巨大な狼を連想させる。
対して、ラトーはその巨大さ。もともと大柄な体躯をしていたが、今はそれ以上の大きさにまで変化し、腕は牛の首を簡単にポキリと折ってしまいそうなほどに太い。縞柄の剛毛は獰猛なトラのよう。
「グオアアアァァァァァぁぁぁぁ!!!!」
「ガルルアアアアァァァァぁぁぁ!!!!」
二人とも雄たけびを上げ、ズシイィィィィン!!と、両者のぶつかる重低音が鳴り響く。
その間にリューとムゥは縄で縛られているアリシアの元に駆けよる。
「大丈夫か?」
「ん、怪我は一応ない。そっちは?」
「ああ、牙族の村人全員に襲われそうになったが、ラトーのオッサンと牙族の人たちに助けてもらった。なんでも、ずっと俺たちを見張ってたらしい。余所者が来たら何かが起こるんじゃないかってな。案の定、起こっちまった訳だが」
肩をすくめてリューが言った。
「反応が遅れたのは、エスラの奴、自分の家の下に隠し通路を作ってやがったのさ。だから、ちょっとばかし来るのが遅れちまった」
「ぎりぎり助けてくれたから許す」
「そりゃどうも」
気軽に言葉を交わす二人をムゥは間に入れないでいた。自分の兄が首謀者だった事実に加えて、もう少しで相手が死ぬところだったのだ。何も話せなくて無理はない。しかし、
「ムゥのありがとう。助けに来てくれて」
「え?」
「そうだぜ。ムゥがいなけりゃここは分からなかった。臭いを辿ったのはお前だろ」
「え!?そんな方法できたの!?」
「しゃーねぇだろ、他に方法が無かったんだから」
ギャーギャーと騒ぐ二人にムゥは小さく、
「ありがとう」
と、聞こえないように呟いた。
一振りで人がズタズタになりそうな剛腕をラトーはエスラに振るう。ブンッ、と空気を裂く一撃はしかし、エスラに当たることはない。エスラはラトーの攻撃に臆することも無く的確に避けていく。
「フン。避けるだけじゃあ私は倒せんぞ」
「爪族随一と言われる戦士のアンタと相手じゃオレに勝ち目はない。だけど、アンタに勝たなくてもオレは勝つ方法があるのさ」
「何?」
「それが…これだ!!」
エスラは足払いをラトーに繰り出す。しかし、ラトーはそれをあらかじめ予想していたかのように難なく避ける。だが、エスラの狙いはそこには無かった。
そう、ラトーは一つの事を忘れていたのだ。
エスラの勝利条件は一つではないことに。一瞬の隙を突き、ラトーをやり過ごす。
「しまった…!!」
エスラはリューとムゥを殴り倒した。
「ぐはっ!」
「グッ!?」
「リュー、ムゥ!!」
エスラはアリシアを捕まえ、腕を傷つける。
「痛っ」
「予定が狂ったが仕方がない。すぐに儀式を始める…!!」
後ろにある檻に後ずさり、扉を開ける。
「この娘を神獣に捧げれば、神獣は目覚める…!!神獣が目覚めればお前らなど一瞬だ!」
アリシアを片手にぶら下げ、エスラは叫んぶ。
リューは倒れながらも必死に立ち上がろうとする。
「!!やめろ!!」
「もう遅い!!」
グシャッ。
肉が潰れる生々しい音が部屋に響いた。
目の前の光景に、リュー達は目を見開く。
「グ、フッ!!?」
エスラの腹から血塗られた牙が生える。
「ど、うし…てっ」
エスラは口から血を吐いて悶絶する。
そして。
「ふぁ~。よく寝た。しかし、マッズイ血だなぁオイ。噛み殺すぞ?」
プッとエスラを吐き出して。
神獣が復活した。