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 久しぶりの投稿です。


 最近忙しくて忙しくて…。


 夏は予定がぎっしり詰まっているので、更新速度は遅くなりそうです…。




 「棍棒(メイス)が変形した…?」


 リューは目の前の光景に目を見張った。武器が変形するなど、聞いたことがなかったし、錬金術が使われた様子もない。どうやら、武器自体に特殊なギミックがあったようで、リューは気を引き締めた。


(棍棒と槍、二種類の攻撃方法があるのか…。つまり、攻撃の予測がしにくくなった、ということになる。コイツは厄介だな…)


 少年は槍の穂先を下に向け、リューの様子をうかがう。まるで、獲物を見つけた獣のような雰囲気に、リューは唾を飲み込んだ。

 と、その一瞬を少年は見逃さず、全身をバネにして、渾身の突きを放つ。リューは爆発したかのような勢いの突きをどうにか横に躱し、ナイフを投げようとした。が、


 ガシャン!!


 と、音を立てて穂先がスライドし、棍棒に戻る。突きの形から、横殴りの殴打に変化した攻撃に、リューは一瞬、反応に遅れた。


 ズッドォォォン!!!


 と、棍棒の横薙ぎに、リューは吹き飛び、ぶつかった木がミシミシッと、音を立ててへし折れる。土煙がもうもうと立ち込め、少年の視界が塞がれた。


「ちょっとやりすぎたかな…。樹もまた折っちゃたし…。ま、悪党のせいにしとくか」


 と、呟くと、


「勝手に人のせいにすんな、クソガキ」


 と、返事があった。


「!?」


 土煙の中から、ボバッ!!とナイフの雨が繰り出される。


「クソッ…!!」


 少年は棍棒を振るうが、数本防げず、肌から幾筋かの血がツツッと流れた。


「さっきのを喰らって、まだ立てるのか…!?」


「かー、ちくしょう。今のは効いたぜ…。右腕で庇わなかったら、流石にヤバかったぜ」


 そう、リューは右腕を錬金術で鉄の固さまで強化していたので、致命的なダメージは負わなかったのだ。先程の攻撃が左側からだったら、完全に勝負は終わっていた。


「さて、さっきは油断したけど、もう慣れた。今度は喰らわねぇぞ」


 一言宣言し、ナイフを指の間に挟んで前傾で構える。対する少年は、棍棒を肩に担ぐように持ち、グッと力を込める。二人とも、次の一撃で決着を付ける考えだった。

 静寂。二人は一歩踏み出すタイミングを待ち続ける。と、一枚の葉っぱが、ヒラり、と二人のちょうど中間に落ちてきた。木の葉が、地面に落ちる。その瞬間、二人は同時に踏み込む。数歩で攻撃圏内に入り、お互い渾身の一撃を叩き込む。リューは右腕の指にナイフを挟んだ、鉄の拳を放ち、、少年は棍棒を力強く振り下ろす。


 その場で見ることしか出来なかったアリシアは、二人の激突がどんな結果であれ、どちらも重傷を負うのは予想していた。いざという時は、二人の攻撃を止めることも考えていた。が、激突も、止めることも、そのどちらも起こらなかった。



「そこまでだ」



 一人の青年が、二人の間にいた。それぞれの手で、二人の渾身の一撃を止めている。リューも少年も、もちろんアリシアも、いつのまに現れたのか、まったく分からなかった。


「あ、兄貴…」


 少年が青年に声を漏らす。


「な、何で止めた!コイツは、悪党なんだぞ!」


「ちゃんと確かめたのか?」


「コイツ、盗賊!旅人襲っているの見た!」


「そこのお嬢さんは?」


「は?」


「見たところ、襲われたようには見えないけど」


「………」


 青年の言葉に、一筋、汗が流れる。少年はリューに声をかけた。


「な、なぁ」


「何だ」


「オマエ、盗賊?」


「そこで泡吹いてる奴らがな。オレ達は襲われた側だ」


「………」


 少年はそーっと青年の方を窺う。青年は笑っていた。…目は笑っていなかったが。


「何か、言うことは?」


「…」


「な・に・か・い・う・こ・と・は?」


 手に持つ棍棒を投げ捨て、ババッと土下座する。


「すいませんでした!!」


「俺に言うことじゃないだろ?そこのお二人に言うことじゃないのか?」


 青年の言葉に、一瞬でリューとアリシアの方へ向き、再び、



「すいませんでした!!」


 と、土下座で謝る。先程までとは打って変わった態度に、流石にリューも毒気を抜かれたようで、


「まぁ、最初から見てなかったら間違うよ、うん」


 と、フォローを入れ始める。まぁ、少年のあまりもの怯えっぷりに少しばかり気の毒にもなろう。

 が、青年の追及はまだ終わっていなかった。


「で、この森の御神木を何本もポキポキ折ってくれたのは誰なのかな?」


 ビクゥ!!っと、その言葉で少年の肩が跳ね上がる。


「だ・れ・な・の・か・な?」


 リューとアリシアは蹲る少年に指を向ける。


「あわわわわわ」


 すでに少年の顔は真っ青を通り越して真っ白だった。青年はにっこりと、しかし目はちっとも笑っていない目を向け、


「何か言い残すことは?」


「た、助けギャアアアアアアアアアアアアアアああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


 と、少年の悲鳴が森の中にこだました。






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