009
ランドベルグから4日間ほど東に歩き続けると、『神獣の森』にたどり着く。アリシアとリューも、4日の道程を経て、『神獣の森』の入口に着いていた。
森の中は、密集している樹木で光が遮られ、薄暗い。リューは肩にぶら下げていたリュックからランタンを取り出した。
「ここから先は獣人族の領土の一つだからな。国に属しているが、一種、治外法権が認められているところだ。あんま変なことすんなよ、捕まるからな」
「何?それはあたしが変なことするの前提な注意なわけ?」
「お前にしては察しがいいな」
ニヤリと笑うリュー。
「ムッキ~~!!ムカつく!」
(そこらへんが心配なんだよ…)
リューはため息をついて、森に入っていった。
森の中には危険がたくさんある。魔獣、毒虫、野獣、そして、盗賊。その危険の一つ、盗賊がアリシアとリューに襲いかかった。
「で、何でオレらに襲いかかったのかな?」
ただし、人によっては危険も危険ではなくなるのだが。
「いやぁ、ただの出来心というやつでして…」
「すんませんでした、ダンナ」
「ほぉ、ただの出来心ねぇ」
顎に手を当て、揶揄する。
「でも、さっき『仲間の仇!』とか言ってなかったけ?」
「「ギクッ」」
「狙うのもオレじゃなくてアリシアばっかだったような」
「「ギクギクッ」」
「あー!思い出した!」
ずっと考え込んでいたアリシアは、突然声を出した。
「あれでしょ、ケリアの森で捕まえた盗賊!」
「なるほど、残党か。まぁここまで追ってきた根性は認めるけど、帰りはどうすんの?」
「「は?」」
「いや、ここまでは運が良かったけど、魔獣とかに会ったらどうすんの?アンタたちの腕じゃどうにもならんだろ」
リューに指摘されて青ざめる盗賊達。
「オマエら、何す(し)てんだ」
その時、声が二人の耳朶を打った。
そこにいたのは一人の少年だった。こげ茶色の髪をバンドで纏め、裸に獣の皮で出来たジャケットを着ていた。
「オマエら盗賊か?そんなことして、恥ずかしくないんか!」
少年はアリシアとリューを指差して怒鳴る。
「いや、あたしたちは…」
「言い訳すんなぁ!!」
少年は手に持つ武器を横殴りに振り回した。
「ふせろ!」
リューはアリシアの頭をつかみ、強引にふせさせる。
後ろにあった樹が、メキメキッと、嫌な音を出しながら、
ズシィィン…!!と、地面を揺らして倒れた。
「棍棒か…」
リューは少年が握っている武器を見て呟いた。
その棍棒は、普通の棍棒と少し違っていた。全長は2メートルくらいだろうか。柄の部分が長く、先端は斧が四方に向いていて、叩く、と言うよりは叩き切るのに重きを置いた作りをしていた。
「あー!い、一族が大切にしている樹を…。キ、キサマよくもやってくれたなぁ!!」
「今やったのはお前だろうが!!」
「うるせぇ!悪党、成敗!」
リューの声は耳に入ってきていないようで、少年は棍棒を振りかぶった。
「あー、もう!アリシア、下がってろ!」
アリシアに指示し、指に挟んだナイフを投擲する。そして、リューはそのまま少年に突っ込んでいった。
少年はナイフを棍棒で迎撃し、横に振るう。リューはその攻撃を飛ぶことで回避した。
(コイツの武器はリーチはあるが戻りが遅い。懐に潜り込めばこっちが有利だ)
リューは懐に入ろうとするが、少年も分かっているようで、懐に入り込ませないように、器用に棍棒を操る。
(このままじゃ決着はつかねぇな…。仕方ない)
リューは血染めの淑女を、右腕だけ発動させた。右腕に、青白い電光が舐め、表面を鉄の硬度に変える。そのまま、振り下ろされた棍棒を受け止めた。
ガキィィ!!と、金属同士がぶつかる音が鳴り響く。目の前の現象に驚いた少年は目を見開いて動きを止めてしまった。
ここぞとばかりにリューは懐に入り、鉄の拳を叩き込む。メシィッ!!と、腹に突き刺さり、少年は、
「ぐはっ…!」
と、声を立てながらも、リューから距離を取った。
「クソッ…、なんだそれ。スゲー固いぞ…。でも、オレの武器の方がもっとスゲェぞ」
と、少年は持っている棍棒の柄の石突きを地面に叩き付ける。すると、棍棒の先端、刃の部分がガション!とずれ、上半分が合わさる。一瞬で棍棒は槍に変形した。
「これからがオレの本気だし」
少年は穂先をリューに突きつけた。
新キャラ登場です。
しかし自分は戦闘描写が下手だな…。