第3話 今は無き未来の君へ/2人は夫婦を知らない 2日目
”SS”この二文字に君は何を思い浮かべるだろうか?サブストーリー?ショートショート?ストライクショット?まぁ数多くの言葉があるだろう。その中でもとりわけ、サブストーリーやショートストーリーについて語ろうと思う。多くの作品でこのSSの扱いはifストーリーであることが多いだろう。誰にだって可能性はある。昔から、こうだったら、ああだったらなんて思ったことのある人も少なくはないだろう。もちろんこの二人にもifストーリーは存在する。ミケにだってある。今回は姫叶のifストーリーと二人のサブストーリーを紹介しようと思う。決して作者の妄想癖とかSS僕も書きたいというものではないことを明言しておこう。それでは第三話どうぞっ!
[1]「そういえばなんですけど」
ミケが来るなり何やら奇妙なものを取り出した。
「水晶玉?」
「まぁ近くもなく遠くもないんですけど。私たち死神は四年間二人の病気を止めていたじゃないですか。実は姫叶さんだけなんですけど、もし本来の時間軸、つまり病気もしていなかった場合に人生の転換と言いますか、人生で一番大きい出来事が起こっていたみたいで。規則上本人に見せないといけなくて」
「要約すると私のifルートをクリアしないとってことだね。了解」
「えっと…うん?」
「まぁ簡単に言えば、私がもしも普通の女子だった場合になんかでかいイベントがあってそれを見なきゃってことだよ叶汰くん」
「なんとなくはわかりましたが、それって僕も見ていいものですか?」
「二人は夫婦ですので特に問題はありません」
「特にやることも決まってなかったし、一緒に見よ!」
「では始めますよ」そういうと水晶玉は億千のつぶてとなった。
それは言葉にすることが難しく、近しいもので言えば不思議や異質というものが近いのか、とにかく何にも言い表せない少年に私は出会った。名を夢谷 風叶と言った。
「あの、大丈夫ですか?」少年は言った。
それはそうだ。立派な高校生が公園で泣いていたら心配になるだろう。
「大丈夫だよ」そう言おうとしてもえずいてうまく言葉が出ない。
少年はそんな私に対して、軽蔑するでもなく慰めの言葉もなく、ただ私の頭を必死に撫でていた。今はただそれが心地よかった。結構な時間が経ったのち、私は少年のおかげで、だいぶ落ち着いた。
「ごめんね、風叶くん。恥ずかしいとこ見せちゃったね」
「いえ、父や母に困っている人は助けろって言われているので」
「かっこいいね。お礼がてら何か飲み物買ってくるよ。何か欲しいのある?」
「いえ、特には。じゃあ理由、聞いてもいいですか」
「理由か、あんまり子供にいう話じゃないけどいいの?」
「大丈夫です。誰にも言いません」
「そうしてくれると助かる」
そういって私は自身の苦しみを少年に吐き出した。
「二週間前くらいかな。家に帰ってる時にふと視線を感じて、後ろを見たら黒いパーカーを着た人がいて、その時は近くに住んでいる人かなって。私の家、大学が近くにあるから大学生の人も多く住んでて、その人かなって思ってたんだけど、一週間くらい同じ感じが続いて、ちょっと帰宅ルート変えたりしてたんだけど昨日家に帰ると宛先不明で私の名前だけが書かれた茶封筒が入ってて中見たらAI生成された私の変な写真が大量に入ってて。それでこの画像をネットに流されたくなかったら明後日指定された場所に来い。って書いてあって。人に話したらどうなるかわかるなって。誰にも相談できなくて、明日が怖いの。」
とにかく伝えようとしてしどろもどろになりながらも少年に伝えた。
「えっと、この公園にいても大丈夫なんですか?」
「あ、うん。明日は仕事だけどこの試練が終わったら僕の人生は変わるって」
「つまりタイムリミットはもう無いと」
「もっと普通の生活がしたかったな」
「できますよ」
「えっ?」
「難しい話ではないですよ。ただその気色悪い男を捕まえればいいだけの話です。僕に考えがあります」
そういって彼は作戦を言った。その作戦はおおよそ子供ができる芸当ではないものの私はその作戦に賭けるしかなかった。
翌日、私は指定された小さなカフェに行った。いや元カフェと言った方が正しいかもしれない。つい先日まで営業していたが営業の移転とか何とかで今はテーブルとイスだけが残る場所となっていた。そこには、あの忌まわしき男がいた。
「やっと来てくれたのですね。私の運命の人。」
声一つで悪寒が走る感覚は初めてだ。
「ストーカーのくせに」
震えた声で必死に反論した。
「ストーカー?まぁそうですね。あなたに近づくためにはそれしかありませんでしたからね」
「なんで…私なの…よ」
「なぜ?あれまだ気づいてないのか?そういえばそんな事例があったような。まぁいいでしょう。気づいてないのなら説明した方がいいかもしれませんね。あなたは魂の融合化というのをご存じでしょうか。簡潔に言うと魂はもとは一つという説です。その昔、魂は一つであり男女の性別も存在していなかった。しかしある時、魂は二分し、世界は混乱の時代へとなっていった。その混乱から救われるためには片割れを探すしかない。それがあなたなのです。姫叶さんそう私とあなたは一心同体、いやツインレイと言えるでしょう。さぁ私のところに来なさい。何も怖がる必要などないのです。ただでさえ出会うことが難しく生涯をかけても会わない人はいるというのにあなたは幸運の何物でもないのです。さぁエデンはすぐそこです。さぁ」
そう言って男は手を前に伸ばして私に近づいてきた。
「へぇ面白い仮説ですね。まだ僕の知らない知識があったとはね。いや知らないのも無理はないですね。魂の融合?エデン?まぁ中二病の産物と言えば納得できますね。一つだけ教えましょうか。魂は分裂も融合もしないただ存在しうるだけです。それと、幸せがそれだけで来ると本気で思ってるんですか?笑わせないでください。一秒もかからずに証明して見せましょうか。彼女の顔を見てください。恐怖に支配されている顔をあなたは幸せと呼ぶのですか?教えてください。久遠 一さん」
「なんだクソガキ。誰だ。しかも名前まで。ちっ誰かに教えていたのか」
「いえ、彼女とは昨日少し話をしただけのただの通りすがりの人ですよ。それと名前だけじゃないですよ。よろしければあなたの住所、電話番号、家族構成、はたまた今までの人生経歴までこと細やかに教えてあげましょうか」
「貴様っ、どこでそんな情報を」
「ネットで調べただけですよ。ちょっとした特技なんですよ。いわゆるホワイトハッカーってやつなんですよ。存在しているもの全てが僕の掌のなかですよ。もちろんあなたが隠し玉としていた姫叶さんのAIイラストも消させていただきました。もうあなたには選択肢はありません。ここで死ぬか、おとなしく警察に投降するか。さぁどちらを選びますか?」
「舐めんなよ小僧」
そういって彼は窓ガラスを割り外へ飛び出した。
「あ。言い忘れていましたがそっちに警察いますので…ってもう聞こえませんね。作戦成功ですね。姫叶さん」
そういってこの少年は微笑み、ピースをしていた。
「本当にうまくいくなんて私も想像つかなかった。ありがとうふうか…くん」
そういって私に数週間の疲れや解放感、嬉しさなどが押し寄せ、意識を失った。
そうして私は事の顛末を病院で聞くことになった。犯行動機は私に語ったものとほぼ変わらなかった。またストーカー以外にも万引きなどの余罪もあるらしくしばらくは出ることはないとのことだ。
「それにしても、風叶くんがホワイトハッカーだとはね」
「あぁ、あれ嘘ですよ」
「えっ?」
「僕、ちょっとした能力があるんです。見たものの情報を得ることができるんです。どうしても彼を捕まえるために一芝居を打たなきゃいけなくてホワイトハッカーってことにしたんですけど」
「すご、マンガの中だけの世界だと思ってた」
「まぁ、この嫌いな能力が役立ってよかったです」
「嫌いなの?」
「知りたくもないことだってこの世にはたくさんありますからね。どんなに親しい人でもその対象です。この能力は全てを開示してしまうのです。だから僕は不登校になりました。単純な話です。会わなければ苦しみはありませんからね」
そういうと悲しそうな素振りを見せ笑っていた。
「でも、君は私を救ってくれた。それは紛れもない事実。お返しっていうのも変かもしれないけど、今度は私が君を救う番。もうしばらく私に付き合ってくれない?」
「いいんですか?」
そうして二人の関係はまだまだ続くことになった。その後の結末はまた別の話。
「……私ってこの未来をたどることになってたんだ。」
不思議な話だった。
「まぁ、この未来は無くなったので、久遠さんはしがないカメラマンに、風叶さんは能力もなく順風満帆に過ごしていますよ」
「風叶くんかっこよかったなー。いつか会えるといいな」
「まぁ、世界は広いようで狭いですし、会えることもあるかもしれませんね」
そうして今は無き未来の君に思いを馳せるのであった。実は遠くない未来で出会うというのはまだ誰も知らぬ未来。~fin~
[2]「あのさ、ちょっと思ったんだけど私たちってちゃんと夫婦やれてるのかな」
ふとした疑問を口にする。
「私は叶汰くんって呼んでるし、姫叶さんって呼ばれてるし。何だろうなー、夫婦ってよりも同居人って感じに近いのかな」
「そうですね。夫婦って何ですかね」
「愛し合う二人ってのも恋人で事足りますね。ずっとそばにいたいってのもなんかピンと来ませんね。」
「呼び方かな?ダーリンってのはどう?」
「なんか、マンガみたいですね。あと僕そんな年でもない感じですね。」
うーん、何だろう。
「そう考えると僕たちって夫婦よりも恋人に近いのですかね」
「ひとまず名前で呼び合うようにすれば少しは近づくかもね。叶汰」
「なんか気恥ずかしいですね。姫叶さん」
「さん抜き!!」
「姫叶」
「…何やってんだろうね私たち」
真っ赤な顔をした二人は夫婦を知ることができるのか。それは神さえも知らない謎となった。~fin~




