第2話 家である 1日目
聞き慣れない鳥の声。私を包み込むように抱きしめてくるベッド。
「ふぁー…ふぁ?」
ここどこだ?あー、思い出した。
「ここが結婚生活を送る家か…」
思ったよりも普通の家だ。
こんこん。誰かがノックする。
「姫叶さん、いますか?叶汰です。おはようございます」
普段は聞きなれない声に若干戸惑う。そっか本当に結婚したんだな。そうしみじみと思う。まぁ私が言い出しっぺだけどね。
「おはよー叶汰くん。今行くよー」
髪ぼさぼさだけどまぁいっか。夫婦だし。
扉を開けるとそこはイケメンであった。なんてね
「お二人とも、おはようございます。よく眠れましたでしょうか?」
リビングにいくと死神のミケがいた。
「えと…不法侵入?」
「何言ってるんですか⁉違いますよ!コホン、この家のことを説明に来たんです。」
「結構立派な家ですよね。広いし、きれいだし、二階付きの一戸建てなんて」
「それは良かったです。」
「てっきり死神だから城とかかと思ってたよ。」
「さすがにそこまで死神の世界も古くありませんよ。まぁ城がいいのでしたらできますけど…」
「いや、これくらいがちょうどいいよ。さぁ早く案内して」
「かしこまりました。」
姫叶さんってこんな元気な子だったんだ。なんか楽しくなりそう。
「さて、どこから案内しましょうか。まぁこういう時はリビングからですね。基本的に何かするときはここの部屋になりますね。今は一般的な住宅仕様となっていますが…まぁ現実世界じゃないので」
そういうとミケは高らかにパチッと指を鳴らした。昔、アークデーモンのイケメンキャラクターに憧れて私も練習したあれである。さすがというか不覚にもかっこいいと思ってしまった。
机の上に魔法陣が現れたかと思ったら…人形?
「紹介しましょう。みにミケです。まぁ難しい説明を省くと私の持っている能力の具現化ってとこです。みにミケの能力はあらゆる現象の具現化…簡単に言うと万物の創造とか願ったことが現実になるってことです」
「チートじゃねーか」
「そんなの何でもありじゃないですか」
「まぁ、こう見えても死神の世界ではNo.2ですからね。造作もありません。」
こいつ…なかなかやるではないか。第二席、デューク、セラフィム…いい響きだ。
「まぁこれを使えば、例えば…みにミケ朝ごはんを用意してとびっきり豪華のね」
「お前のためにやるんじゃねーからな」
また魔法陣が現れて、見事な和食が現れた。最低でも病院食の十倍は豪華なものである…ん?イケボツンデレだと…横を見ると叶汰くんはみにミケと和食に目をとられている。ふっふっふ私は見逃さないぜ~。
「ツンデレ?」
「あぁ…言ってませんでしたね。このみにミケ受け答えがツンデレなんですよ。かわいいでしょう」
「何故に、そんな属性を」
「まぁ、いろいろあったんです。」
そういうとミケは悲しい顔をした。直観的に深堀するのはやめようと思った。
「まぁひとまず冷めないうちに食べましょう。」
「ハラヘター」
「ですね」
そういうと私は席に着いた。
簡潔に言おう。うますぎる、よくわかんないけど死ぬほどおいしかった。死んでるけど。
「さて、ほかの部屋に案内しましょうか。」
そういうと、ミケはどうぞこちらへとホテルマンの仕草をした。
「ここがトイレです。とはいっても私どもはトイレしませんのであんまりよくわかんなかったので音姫?ウォシュレット?ってのも全部ついているものにしました。後のことはみにミケにでも言えば変えられるのでお願いします。」
「トイレしないって、さっき飲食してたじゃん。」
「うーん…あんまり私も詳しくは分からないのですが、私どもはご飯を食べなくても生きていけるんです。心臓もありませんし純粋な魂生命体っていうのですかね。人間は肉体に魂を入れ込んでるので肉体の維持が必要ですが、それがないってことですかね。だから人間界の食べ物は私どもからしたら嗜好品ってことになりますかね。人間でいう煙草みたいな。」
「なるほど」
「よし。次に行きましょう。次はちょっと楽しみにしてください。」
「?」
「?」
「あ...」
「あ...」
「お風呂です」
「いや、お風呂って…どこの家庭に露天風呂付源泉かけ流しのとこがあるんですか。それにこれヒノキ?サウナまでって」
「これが日本のお風呂では?」
こいつ、無能なんだか有能なんだか…
「まぁまぁ叶汰くん、勘違いでもこれはよいものではないか。それともあれか、私といっしょがいいか?」
「それは…えと…っ…」
「ふふ、よいではないか、よいではないか」
「姫叶さん、あまりいじめすぎないでくださいね」
「りょ~」
「さてと、最後の部屋に行きましょうか。」
そういうとミケは二階に上がり、私と叶汰くんの部屋以外にあったもう一つの部屋に向かった。叶汰くんは依然、顔を真っ赤にして俯いてる。ちょっとばかしやり過ぎたかな?
「さてここが最後の部屋のゲストルーム兼*********(ピー音だよ)です」
そこにはキングサイズのベットと間接照明があるだけの部屋だった。...察してください。
「あの、ミケさん。この世界は全年齢ってこと忘れないでね」
「ふぁぁ……」
最後のとどめだったのか、叶汰くんは不思議な声を出して倒れてしまった。耐性なさすぎでは?かわよ。
あの部屋はみにミケに二人の趣味部屋に変えてもらった。何考えてんだあの死神は。
「さて、デフォルトはこんな感じですね。気に入りましたか?」
「せっかく温泉で評価良かったのに最後の部屋で台無しだよっ」
「おかしいですねぇ、一応夫婦用の家や二人の脳内などが参考になっているのですが…」
これ以上の深堀はやめておこう。うん。
「さて私もそろそろ職場に戻ります。何かありましたら、みにミケに言えばできるのでお願いします。あ、一応プライバシーのため私たちは見られないので危ないことはしないでくださいね。お二人は魂だけなので死にはしませんし、けがも即時回復しますが、五感は普通にありますからね。ではまた」
そういってミケは前に現れたようにさっと消えていった。
「さてと、とりあえず叶汰くんを部屋まで運びますか。みにミケ頼める?」
「ちっ、かったりーな」
なんだこいつ。そういって叶汰くんは転送?されていった。
「さて、私も部屋の模様替えでもしようかな。」
「ん?寝てたのか僕は。いや気絶したのか」
お腹がすいて僕は目が覚めた。時間を見ると十八時になりそうになっていた。夕ご飯にしようか聞いてみるか。
「姫叶さん、そろそろ夕ご飯にしませんか?」
返事がない。僕は数分迷って開けることにした。
「これって」
そこは朝来た時より普通の女子の部屋みたいになっていた。
「ひめk…あ」
姫叶さんはデスクに突っ伏して眠っていた。手に色々な人の名前が書かれた色紙を持ち、泣いていたのか目元が赤らんでいた。僕はあまり友達がいなかったので未練はなかったが、おそらく別れを言えなかったことを思い出してしまったのだろう。
「僕が君を幸せにします」
とっさに出た言葉だった。まだ会って間もないけど彼女が運命の人だってことを自覚した。生きていたころに感じえなかったこの不思議な気持ちが恋なのか。僕は少し迷った後に涙を拭って、ブランケットをかけて部屋を後にした。




