プロローグ
「なんで神様はまだ私を生かしているのかな」
病院の窓から見える青空を見ながらため息をつく。
いわゆる難病と呼ばれるのになって早四年。余命宣告の日はとうの昔に過ぎた。悲しいかな私は何も謳歌できずに死ぬみたいだ。私が何をしたんだ。昔は何度もそんなことを言っていた。が、もはやなぜ生きているのだと思うようになってしまった。私の担当の医者も毎度不思議がっている。「なぜ?」いや知らんがな。
あーあ、こうも病院生活が長いとやることも思いつかない。暇だ。遺書はもう書いたし、ゲームとか本は中途半端に終わるのが嫌だからしないようにしている。勉強?論外論外。まぁ要するに死ぬ準備は終わっているのだ。でも神様はまだ生きろという。神様は余程放置プレイが好きなのだな。そんなこんなでまた夜が来る。そういえば最近、死の予兆なのか今月入ってから昔のことを回想する夢をよく見る。毎度毎度つまらない人生だなと思う。そんなことを考えていると今日もまたその夢を見る。
私がこの病になったのは十四歳、中学二年生のときだった。あの日はやけに頭痛がひどい日だった。雨が降っていたから低気圧が原因かなと思って痛み止めを飲んで学校に行き登校中にぶっ倒れた。数多くの精密検査を受け、出た結果は原因不明。前例は一件の奇病と呼ばれるものだった。私は有無を言わさず入院となった。
初めの頃は学校の先生とか仲が良かった人とかがお見舞いに来てくれた。しかし一ヶ月も経たずに私は都会の方の病院に移ることになり離れ離れになってしまった。移ったあとはたまに担任の先生から手紙が届くようになった。最近の学校の様子とかが楽しそうに書かれていた。学校一番の不良が県内一の進学校に行ったとか文学部の一人が芥川賞を受賞したとか。うちの中学すげーな。
あとは担任が私の友達と結婚したとか。高校を卒業したら先生と結婚するとよく言っていたがほんとに叶えてしまうとは…
そうして今日も目を覚ます。どうやら今日も生きよとのことだ。はぁぁぁと大きなため息をつく。今日も空が青い。
「まーた、朝からめちゃでかため息をついて」
私の担当看護師の佐藤さんが朝ごはんを持ってきた。
「そりゃーつくしかないですよ。余命半年未満と言われているこの病気で四年も生きるとはねー」
「ほんと不思議よねー」
「そういえばお隣に新しく患者さんが来るみたいよ」
「へー、そーなんすかー」
「つまらなそうね」
「そっすねー」
「男の子よ」
「ふーん」
「イケメンらしいよ」
「へー」
「ときめかないのね」
「今更ねー」
こうは言ったが小学生の頃の私なら見に行くことだろう。残念ながら中学の担任を超えるイケメンを私は見た事がない。故にときめかない。罪な男だ。
それから何日か経った頃、中庭を散歩しているときに話題の彼と会った。挨拶くらいはするのが礼儀か。
「初めまして。隣の病室の新野 姫叶です。よろしくお願いします」
「あっ…どうも。小野 叶汰です。よろしくお願いします。」ふむ確かにイケメンだ。担任ほどでは無いが。挨拶もしてくれたし悪い人では無さそうだ。その後、特に話すこともなく別れまた夜が来た。今日はいい夢見れたらいいな。




