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第94話 天敵

 たなびく雲が前から後ろへ、前から後ろへと高速で駆け抜けていく。


「やっぱり、空の旅はいいですね、エリヌス様!! 上から見える景色が、なんというか、爽快感がありますし!!」

「そう、だな。……そうだな。爽快感がある」


 自分の心中とは真逆のことを口先だけでしゃべる。


「…………」

「……エリヌス様? どうなさいましたか?」

「……何でもない」


 何でもない。

 そう、何でもないんだ。

 ……何でもない、はずなんだ。





 エリヌス様は、最強だった。

 あの小説の中で、エリヌス様と渡り合えたものはダフネ様を除き、誰一人としていなかった。


 最強。

 そして、最凶。


 それこそがエリヌス様であった。

 強さと技術、そして狡猾さを併せ持つエリヌス様は、正しく悪のカリスマなのだ。


 その狡猾さゆえ、エリヌス様は目的達成のため(・・・・・・・)に魔王軍とも手を組んでいた。

 あくまでも、利用していただけだから、最後には平然と裏切っていたが。


 そして、魔王軍と手を組んでいた時、見張り兼補佐役として、ある魔物がエリヌス様の側近にいた。

 計略に長け、高度な魔法センスと意地の悪さの光るあいつ──


 ──エキノプスを。


 あいつのせいで、何度ダフネ様が窮地に陥ったことか。

 ……まあ、逆にあいつの策がからぶって、ダフネ様が有利になることもあったのだが。

 その時はその時で、エリヌス様に被害が来ていたが。


 つまるところ、エキノプスという魔物は、ダフネ様推しかつエリヌス様推しの私にとって天敵(・・)なのだ!!





「──エキノプス……」


 ぼそっと呟き、下唇の皮を嚙む。


 まさか、この段階であいつの名前を聞くことになるとは思わなかった。

 作中展開からして、もう少し後かと……。


 ……いやまあ、まだ偶然だという可能性も否定できないのだが。

 ただ名前が一緒名だけ、という可能性は十分にある。


 だが、あの一瞬だけ感じた魔力。

 ……怪しさも十分にある。


「……オフィオポゴン殿」

「はい、どうかなさいましたか?」

「貴殿のところの執事長──エキノプス殿は、魔法を扱ったりしますか?」

「魔法、ですか? いえ、そんな話は……」

「……そうですか」

「あのー、エリヌス様。本当にどうなさったんですか……?」

「何でもない。気にするな、オリーブ」


 ただの偶然、そうに決まっている。

 だが、警戒しておいて損はない。


 私自身、そろそろ実の振り方を考えねばだな。


「エリヌス伯爵。オリーブ殿。雷雲が近くに発生していますので、少々迂回しますね」

「ええ、頼みます」


 はるか遠方に見える黒い雲。

 それを一瞬だけ視界に置き、すぐに私は固い鱗の上に腰を下ろした。

一応、今話でこの第二章二部は終わりです。

はい、なんと三部構成になってるんですね……。

三部目で、ようやく章のタイトルを回収……できたら……いいな……。

頑張りますので、応援よろしくお願いします!!

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