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第62話 オリーブの剣

 その場で全員の治療を済ませた後、私たちは屋敷へと戻った。

 道中、私を除いた五人は、あそこが良かった悪かったと、反省会を続けていた。

 そんな中で、私自身は、少しの引っ掛かりを覚えていた。

 もちろん、その引っ掛かりの正体には気付いている。

 だが、その正体に触れてもいいのか、それが問題だ。

 そんな事を考えているうちに、とうとう私たちは屋敷に着いてしまった。





 屋敷に着いた後、私たちはそれぞれの部屋へ戻っていった。

 ダフネ様たちの方は、武器の手入れなどもあるそうだ。

 オリーブ自身もそうしようとしていたが、私が無理やり引き留め、部屋へと連れて行った。


「……どうかなさいましたか?」


 部屋の扉が閉まると同時に、オリーブがそう問いかけてきた。


「一つ……あー、いや、少し聞きたいことがある」

「なんですか?」


「お前のその剣、どこで手に入れた?」


 そう聞くと、オリーブの表情が僅かに固まった。

 額から出た汗が、頬を伝って行っている。


「答えたくないのなら、答えなくてもいい。だが、少し気になったのでな」

「……流石は黒魔術の名手、エリヌス様ですね」


 ……ここで黒魔術を持ち出してくる、という事は、それなりに重大な事だな。


「この剣は、元々わたくしの物ではございません」

「……どういうことだ?」


「……わたくしの、かつての冒険者仲間が使っていたものなんです」


 ああ、そういうことか、と心の中で納得をしてしまう。


「恐らく、剣を見て気付いたんですよね? この剣に籠っている魔力に」

「ああ」


 剣に籠っている魔力は、私に言わせてみれば、明らかに異質な存在だった。

 恨みや後悔ではない、でも、暗く、深い感情を感じる。


「エリヌス様。頼みがあります」

「なんだ?」


「この剣にこもっている魔力を、調べていただけませんか?」


 こちらから頼もうと思っていたことを、オリーブの方から頼まれてしまった。


「ああ、分かった。なら、少しだけ剣を貸してもらえるか?」

「はい」


 オリーブが鞘から剣を抜くと、その瞬間、剣の魔力が部屋全体を漂った。

 ……やはり異質だ。

 そう思いながら。剣を手に取り、刃の腹を指でなぞる。


「……剣自体は、普通の代物だな」

「はい。武器屋で買っただけなので、業物などではありません」

「……となると、魔力の正体はこの剣の前の持ち主か」

「……はい」


 ……肯定した、という事は、オリーブは多少、この魔力について知っているな。


「少しだけ、魔力を流し込んでみてもいいか?」

「はい」


 剣を握り、少しづつ魔力を流す。

 慎重に、慎重に、内部を探るために。

 そして、剣は私の思った通りの反応を示した。


「紋様が現れた、という事は、魔力が籠っているだけじゃないな。魔法が刻まれている」

「やはり、そうなんですね」


 ……言うべきか。

 少しだけ迷ったが、私は言葉を続けた。


「この紋様は、黒魔術を表わしている。粗削りなものだが、確実にそうだ」


「……そう、ですか……」

「オリーブ。この剣の持ち主は、何者だ?」


 この紋様は、どの黒魔術にも該当しない。

 だが、紋様自体に現れている幾つかのパターンが、これが黒魔術であることを意味している。


「……彼女は、魔法と剣、両方を扱える方でした。所謂、魔法剣士。その中でも、特に才能に満ち溢れた方でした」

「だろうな。この域まで達するには、相当な努力が必要だ」

「彼女自身、常に鍛錬と研究に勤しんでいましたから」


 恐らく、ゼロから新しい魔法を開発できるタイプの人材。

 ……本当に天才だったのだろう。


「……うん、紋様の解析は終わった」

「流石ですね」

「そして、前の持ち主の事も、少し分かった」


 その言葉に、オリーブがほんの少しだけ反応した。

 嬉しそうな、寂しそうな、なんとも言えない表情だ。


「この魔法は、使用者を呪う魔法だ。恐らく、持ち主が死の間際(・・・・)に刻んだのだろう?」

「……はい」

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