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第40話 推し御一行

「エリヌス」

「……んー……?」

「エ、リ、ヌ、ス!」


 何度も呼びかけられ、私はようやく目を開ける。

 …………。


「おはよっ、エリヌス」

「なっ、え、だ、ダフネさ……ダフネ殿!?」


 思考停止どころか大爆発しそうな衝撃が全身を走り、一気に目が覚める。

 ダフネ様が、私に添い寝してる……!?

 へ!??!?!?!?!?!?!?!??


「オリーブに頼まれて起こしに来たぞ。随分ぐっすりと寝ていたな」


 オリーブの奴……!!

 グッジョブ!!


「え、ええ。昨日まで、仕事が忙しかったので」

「そうだったのか? なら、無理せずにまだ休んでていいぞ?」

「いえ、大丈夫です。十分、休まりました」


 それに、寝起き早々、推しのご尊顔を拝めたからな。

 疲れやらストレスやら、何もかもが吹き飛んでしまった。


「ダフネ様の方は、ご家族とのお話は終わったのですか?」

「ああ。妹と弟がとても喜んでくれた。やはり、あのくらいの年代は、冒険譚が好きなようだな。僕もそうだった。その代わり、母が随分心配してた……。相変わらず、母は心配性で困る」


 そう話すダフネ様の表情は、なんとも言えない幸福感に包まれていた。


「ある程度話も終わったし、もうそろそろ夕食の準備が必要だというのでな。それで、母たちは帰っていった」

「そうですか。お見送りできなかったのが申し訳ないですね……。というか、我が家で食べていただいても構わなかったのですがね」

「オリーブもそう言っていたが、明日もご馳走になるのに、今日までは……、と言っていたぞ」


 そんなに謙遜しなくても、私たちはいつでもウェルカムなんだがな。

 まあ、相手が断っているのに、無理言って食べさせる道理もない。


「分かりました。それでは、下に行きましょうか。そろそろ夕食も準備できるでしょう」

「そうだな!! ……いや、待ってくれ。外に行きたい」

「? どうかなさいました?」


「仲間たちが、追いついたようだ」





 私とダフネ様でそれぞれ門の柱に寄りかかり、数分ほど待っていた。

 その間、他愛もない世間話をしていただけだが、それだけでも楽しかった。

 やがて──


「お?」

「ん? ……ああ、来たみたいですね」


 遠くの方から蹄の音が聞こえ始めた。

 音は段々と大きくなり、やがて、我が家の前で止まった。


「おお、待ってい……!?」


「ダフネー!!」


 へ!?

 馬車から出てきた足に、ダフネ様が蹴り飛ばされた。


「ヴァクシー!! 出会い頭に蹴ってくるな!!」

「うるさい!! あんたが俺たちを置いてったのが悪いんだろうが!!」

「そうですよ、ダフネ」

「ま、マルバまで……!?」

「まあまあ。皆、落ち着いて……」

「ブーちゃん……!!」

「……やっぱり、一回締め上げましょうか」

「ご、ごめんて!!」


 …………。


「……コホン」


 軽く咳ばらいをすると、その場の空気が一瞬にして凍り付いた。


「元気なのはいい事ですが、ここは私の家(・・・)の玄関先です。とりあえず、中に入りませんか?」

「「「「は、はい……」」」」

「御者さん。請求は、後で我が家まで」


 そう言って、あらかじめ用意しておいた手形を懐から出し、御者に渡した。

 そして、全員を一瞥してから、私を先頭に屋敷へと入っていった。





「エリヌス様」

「ああ。これで、全員集合だ。ようこそ、我が家へ」


 そう言ってダフネ様一行の方へ向き直ると、ダフネ様以外の全員が私の方へ土下座をしていた。


「さ、先程は、ご無礼を働いてしまい、申し訳ございません……」


 この人は……ああ、賢者の人か。


 女賢者・マルバ。

 類稀なる聖魔法の才能を持ち、成人とまで言われる。

 懐のかなり広く、基本、どんなことがあっても怒らない。

 その代わり、怒るとかなり怖い。

 あと、胸がデカい。

 そのおかげで、あっちではかなりの人気を誇っていた。

 恥ずかしい服を着させて、怒っているかどうか微妙な表情を描く。

 その絵が、また絶妙に可愛いのだ。


「構いませんよ、あの程度。今は、全員が無事に到着したことに感謝しましょう」

「そうだぞ、みんな」

「「「ダフネは黙ってろ!!」」」


 仲が良いんだか、悪いんだか……


「さ、もうそろそろ、夕食の準備もできます。一回、食堂へ向かいましょうか」

「「「「はい!!」」」」


 オリーブに目配せをして確認する。

 どうやら、もうできているようだ。

 さてさて……。


 主人公(推し)御一行の話をたっぷりと聞かせていただきましょうかね!!

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