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第13話 騎士団長

 例の威力実験を行った翌日、私はオリーブに頼まれ、王国騎士団の練習場に来ていた。


「ヒソヒソ。あれが……」

「例の……貴族を……」


 …………。

 どうやら、もう噂が広まってしまったようだ。

 まあ、エリヌス様のイメージを崩さないなら、むしろ良いことだ。

 ……どうせなら、誰か『狂犬伯爵』と呼んでくれないだろうか。

 父の爵位は侯爵だから、厳密にいえば、私が伯爵となることは無いのだが。


 ……あれ?

 じゃあ、なんでエリヌス様は作中で『狂犬伯爵』と?

 えっと、思い出せ……。

 確か、エリヌス様が家族について語っていたシーンが……。


「あ、エリヌス様!!」


 必死に動かしていた思考は、オリーブの声であっけなく遮られてしまった。


「……オリーブか」

「どうかされましたか? 不機嫌なご様子ですが……」

「いや、何でもない」

「ならいいのですが……」

「それで、今日は何の用だ?」


 無駄な心配をかけさせぬよう、話を逸らす。


「あっ、そうでした。実は、例のダフネの件で」

「……詳しく話せ」





「……なるほど。遂にか」

「はい!! わたくしからの紹介なら、と」

「そうか。良かったな」


 そう言って、オリーブに笑いかける。

 いや、マジでグッジョブすぎるぞ、オリーブ。


 なんと、ダフネ様も騎士団で訓練されることが認められたのだ!!


 パーティー以降、ダフネ様の様子を見れなかったから不安だったが、これでまずは一安心だ。

 城下の街に住んでいるそうだが、私は私で忙しかったから、家まで行く機会がなかった。

 一応、身辺調査も兼ねて、オリーブにちょいちょい様子を見に活かせていたのだが、どうやらそれが功を奏したようだ。


 そして、この件で強さを蓄えれば、ダフネ様が勇者に選ばれること間違いなし!!

 私は強くなったダフネ様を眺め、その活躍を目に焼き付ける!!

 完璧だ!!


「それにしても、そんなにオリーブは気に入られたのか」

「いえいえ、そんな、気に入られただなんて……」


 そういいつつも、オリーブの顔はにやけている。


「まあ、部下が認められるのは嬉しいことだ。よし、オリーブ。すぐに騎士団のところまで案内しろ」

「はい。かしこまりました」





 訓練場は、高いレンガ壁に四方を囲まれた場所だった。

 広くはあるのだが、私にはどうも、謎の閉塞感を覚えてしまう。


 ……というか、こんな高い壁を登ってたのか、ダフネ様は。

 凄すぎるだろ。


「おお。貴殿がエリヌス殿か」

「騎士団長殿ですか。パーティー以来ですね」


 相変わらずデカいな。

 そんな身も蓋もない事を思った。


 そこそこ身長の高い私より、遥かに大きな体。

 そして、それを覆うようについている筋肉の鎧。

 巨躯、と言うほかなかった。


「そうですな。いやはや、あのパーティーには感謝せねば」

「というと?」

「エリヌス殿と出会えた、それ以上に嬉しいことがありますかな!?」


 他の貴族とは違い、含みも何もない、本心からの言葉のようだ。


「エリヌス殿の部下は素晴らしいですぞ。打てば響くし、なによりも筋が良い。筋肉もいい」

「そうなのか、オリーブ」

「いえいえ、それほどじゃありませんよ!!」

「オリーブ殿、謙遜もしすぎては無礼ですぞ。……エリヌス殿。ここだけの話ですが、我が騎士団の団員は、副団長と私を除き、全員、手合わせで敗れました」


 つっよ!!


「凄いじゃないか」

「あ、ありがとうございます、エリヌス様」


 随分と照れた様子のオリーブを横目に、私は話を本題へ移した。


「それで、団長殿。今日は……」

「ええ。オリーブ殿の紹介で、ダフネ殿の剣を見ます。以前お会いした時も、筋が良いとは感じていましたから」

「あの時は、とんだご無礼を……」

「いえいえ、若人は、あれくらい元気でなければ。それに、あの手。随分と筋肉が詰まっておりましたぞ」


 そういえば、ダフネ様と握手してたな。

 腕がちぎれんばかりの勢いで振られて、流石のダフネ様も、握手以降は生意気なことを言わなくなっていたが。


「剣を振っているようにも感じませんでしたが、何か特殊なことを?」

「さあ……。正直言って、私も彼女の剣を見たことがありませんから」


 てか、まだ会ったばかりだしな。


「そうなのですか。オリーブ殿は?」

「実は、わたくしも……」

「おや。では、初お披露目という訳ですな!! これは楽しみだ!!」


 そう言って快活に笑う団長を見て、私は胸を撫で下ろした。

 素上知れずのダフネ様を真剣に鍛えてくれるか、多少なりとも心配だったのだが、彼なら大丈夫だろう。


「それでは、エリヌス殿。訓練場へ向かいましょう。ダフネ殿も、もう来てらっしゃいますよ」

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