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第115話(サイド:エキノプス) 圧倒的

 嵐のような魔力の応酬が終わり、エキノプスは息を切らしながらその場に膝をついた。


「こ、これほどの相手とは……」


 どれだけ魔力を使っても底の見えない争い。


 ──濁流。


 彼がエリヌスに抱いたのは、そんなイメージだった。

 どれだけ強い魔力を流しても、どれだけ巧みに魔力を操っても、簡単に受け流され、押し流されてしまう。

 これほどの経験は、何百年もの年月を生きてきた彼にとっても、初めてのものだった。


「……してやられたな」


 なんとか息を整わせ、魔力の調子を普段通りに戻していく。

 それでもなお、彼の本調子には程遠いものだったのだが。


 だが、それ以上に、彼は自分の失態を呪っていた。


 エリヌスに回復魔法を使われたことは、完全な誤算だった。

 しかも、魔法への抵抗をしたせいで、彼の存在にエリヌスが近づいてしまった可能性も大いにある。

 だからといって、あのまま魔法を放置していれば、カンナという大駒を切り捨てることになっていた。


 魔法を使われたあの時点で、エキノプスは八方塞がりだった。


 その事実に気づき、彼はその身を震わせた。

 唯一の救いは、カンナにかかった洗脳魔法が完全には解け切らなかったこと。

 それでも、半分近く解除されてしまったのだが。


「……!! 目に、光が……!!」


 カンナの表情を見て、エキノプスは冷や汗を流した。

 微かにだが、瞳孔が動いた。

 元々の魔法への抵抗力を考えれば、このまま放置すれば、すぐにでも洗脳が解けるだろう。


「エリヌス!!」


 強い呪いを込めながら、エキノプスはカンナの頭を掴んだ。

 そして、残る魔力のほとんどを使い切ったところで、その手をようやく離した。

 カンナの表情は、また人形のようなものに戻っている。


「お嬢様!! いかがなさいましたか!!」


 再び息を切らしたエキノプスの視界に、一人の衛兵が映りこむ。


「失せろ」


 そう言って彼が指をあげた瞬間、衛兵は小さな断末魔をあげながら紫色の炎に包まれ、灰すら残らずに消えた。


 ここまで派手な戦闘(・・)をやれば、近くにいる衛兵の一人や二人に気づかれるのも当然ことだ。

 いくら弱っているとはいえ、人間一人を消すなど、エキノプスには訳のない話なのだが。


「どこまでも邪魔してくれるな、エリヌスよ」


 壁を支えにどうにか立ち上がり、エキノプスは心底恨めしそうに呟いた。


 エキノプスの想像を超える損害。

 それを、青天の霹靂が如く引き起こしていったエリヌス。

 その存在に軽い畏怖の念と強い好奇心を抱きながら、次なる策を──エリヌスを支配下に置くための策を、エキノプスは不気味に笑いながら考え始めていた。

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